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2008年 11月23日の新作昔話

四郎と猫

四郎と猫
鹿児島県の民話鹿児島県情報

 むかしむかし、とてもとんちの上手な、四郎という男がいました。
 ある朝、朝ご飯を食べようと、お膳の上にご飯を用意したのですが、貧乏でお金がないので、おかずを用意することが出来ません。
「ああっ、おかずのないご飯というのも、さみしいものだ。なにか良い手はないだろうか。・・・おおっ、そろそろ金持ちのだんなが散歩で通る時間だ。よしよし」
と、何を思いついたのか、四郎は一枚の空のお皿と、近所に住んでいる野良猫を一匹連れてくると、金持ちのだんなが散歩にやってくるのを待ちました。
 そして金持ちのだんなが通りかかったその時、四郎は連れてきた野良猫を大声で叱り始めたのです。
「この猫め! よくも大切な魚を盗みよって! お前の様な泥棒猫は、こうしてくれるわ!」
 その声にびっくりした金持ちのだんなは、四郎の家の戸を叩きました。
「四郎どん、どうしたんじゃ! その猫が、何かしたんか?」
 すると四郎は、金持ちのだんなに空の皿と猫を見せて、
「どうしたもこうしたも、こん猫が、わしの大切な魚を食うただ! 泥棒猫め、こうしてくれるわ!」
と、四郎はまっ赤な顔で猫を殴りつけようとするので、猫がかわいそうになった金持ちのだんなは、
「待て待て、そんなに猫をしかってはかわいそうじゃ。すぐもどるから、ちょっと待っておれよ」
と、さっそく市場まで魚を買いに行って、その魚を四郎の空の皿にのせてやりました。
「四郎どん。どうか、これで猫を許してやってくれ」
 それを聞いた四郎は、
「まあ、だんながそう言うのなら」
と、猫を逃がしてやりました。
 それから家に戻った四郎は、家の裏口からさっきの猫を呼び入れると、半分に切った魚を猫に渡して言いました。
「よしよし、お前のおかげでおかずが手に入った。これは礼じゃ」

おしまい

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