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        2010年 4月28日の新作昔話 
          
          
         
とんち勝負 
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて 
       むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。 
           
         ある日の事、とんち名人として有名な彦一と言う人が、きっちょむさんにとんち勝負を挑んできたのです。 
         そこで村の和尚さんが立ち会いになり、山の一本道でとんち勝負が始まったのです。 
        「それではこれより、とんち勝負を始めるとする」 
        「へい。それで、何をすればいいのですか?」 
         きっちょむさんの質問に、和尚さんが答えました。 
        「うむ、わしが百を数える間に、なにか世の中になくてはならぬ物をこしらえて見ろ。それがこの勝負の題材じゃ。では、はじめっ!」 
         和尚さんのかけ声で、二人は山の中に入って行きました。 
        「・・・九十八、九十九、百!」 
         そして和尚さんが百と数え終わると同時に、二人はそれぞれ何かを持って帰ってきました。 
         まずは彦一が、持ってきた物を得意そうに出しました。 
        「きっちょむさん、これはどうだ!」 
         それは、にわか作りにしてはよく出来た、一体のかかしでした。 
         それを見た和尚さんが、感心して言いました。 
        「うーむ、なるほど。確かにこれは、世の中になくてはならぬ物だ。しかも、これなら簡単に作ることが出来る。彦一よ、見事に題材通りの物を持ってきたな」 
         しかし、きっちょむさんは、きょとんとして言いました。 
        「さすがにあなたは知恵者だ。だが、これ一体だけか?」 
        「当たり前だ! 百を数えるこんなわずかな間に、そうたくさん作れるものか!」 
        「そうか、ではわしの勝ちだな」 
         きっちょむさんはそう言って、道ばたの草むらから刈り取ったしばを見せると、一本、二本と数え始めました。 
        「・・・十八、十九、二十。どうだい、おれは二十本も用意したぞ」 
         それを聞いて、彦一が変な顔をします。 
        「きっちょむさん、確かに数はそちらか上だが、でもそちらは、ただしばを刈っただけではないか?」 
         すると、きっちょむさんはにっこりして、 
        「これは、とんち比べの勝負だ。勝(刈)った方が勝ちに決まっているじゃないか」 
        と、答えました。 
       それを聞いた彦一と和尚さんは、二の句が告げませんでした。 
      おしまい 
         
          
         
        
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