福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 2月の日本昔話 >二月の桜
2月27日の日本の昔話
イラストレーター 「雪の雫」 運営サイト 灯路 イラストダウンロード サイズ2880px×2160px
二月の桜
二月个櫻花
・日本語 ・日本語&英語 ・英語 ・日本語&中国語 ・日本語&客家語
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、桜谷というところに、おじいさんが孫の若者と一緒に住んでいました。
頭擺頭擺,有一個安著櫻谷个所在,有一個老阿伯摎厥後生个孫仔共下戴在該位。
この桜谷には、むかしから大きな桜の木があります。
櫻谷自古以來就種有當大頭櫻花樹。
おじいさんは子どもの頃から桜の木と友だちで、春が来て満開の花を咲かせると、おじいさんは畑仕事もしないで桜をうっとりとながめていました。
老阿伯從細摎櫻花樹係好朋友,春天花開著淰淰个時節,老阿伯就無去山項做事,斯在該看櫻花看著戇忒。
そして花びらが散ると、おじいさんはその花びらを一枚一枚集めて木の下に埋めました。
落花四散个時節,摎花一蕊一蕊拈歸堆在樹頭下埋。
「桜や。今年も楽しませてくれて、ありがとうよ」
「櫻花啊,今年又帶分𠊎快樂,還承蒙你哦!」
さて、そのおじいさんもやがて年を取り、とうとう動けなくなりました。
過無幾多年,老阿伯老了,漸漸行毋停動。
二月のある寒い日、おじいさんは北風の音を聞きながら、ぽつんと若者に言いました。
二月个某一日當冷,老阿伯一片聽該呼呼滾吹个北風,一片摎後生人講:
「わしは今まで生きてきて、本当に幸せじゃった。だが、死ぬ前にもう一度、あの桜の花を見たいものじゃ」
「𠊎做得食恁老實在盡幸福,毋過,若係死以前分𠊎看加一擺櫻花毋知幾好仔?!」
「そんな事を言ったって、今は二月だ。いくら何でも・・・」
「講該種話,這下正二月定定,係毋係會忒...」
若者はそう言いかけて、口をつぐみました。
後生人應佢講,續等就恬恬毋講了。
おじいさんが目をつむり、涙をこぼしているのです。
老阿伯目眨眨仔,流出目汁來。
きっと、桜の花の姿を思い浮かべているのでしょう。
一定想起櫻花風景敢。
「おじいさん、待っていろよ」
「阿公,等一下!」
若者はじっとしていられずに、外へ飛び出しました。
後生人舂等出去。
そして冷い北風の中を走って、桜の木の下に行きました。
毋管當冷个北風,佢走到櫻花樹下。
今日は特別に寒い日で、桜の木も凍える様に細い枝先を震わせています。
今晡日特別冷,連櫻花樹都冷到細樹椏仔就吃吃惇。
若者は桜に手を合わせると、頼みました。
後生人雙手合十求櫻花樹:
「桜の木よ。どうか、お願いです。花を咲かせて下さい。おじいさんが死にそうなんです。おじいさんが生きている間に、もう一度花を見せてやりたいんです」
「櫻花樹啊!仰般,求你啦。請你開花。𠊎公像形會死忒了。在生个時節想分佢看加擺櫻花。」
若者は何度も何度も祈り続けて、夜が来ても木の下を動こうとはしませんでした。
後生人一遍過一遍求,到暗還係在樹頭下無停動。
やがて夜が明けて、朝が来ました。
無幾久,天大光,朝晨到了。
桜の木の下で祈り続けていた若者は、あまりの寒さで気を失っていましたが、急に暖かさを感じて目を覚ましました。
在櫻花樹下求無停个後生人,因為當冷,無氣無脉,黏時感覺到燒暖嗄醒起來。
「どうして、こんなに暖かいんだ?それに、甘い花の香りがするぞ」
「仰會恁燒暖呢?還有該花个花味。」
若者はゆっくりと顔をあげて、桜の木を見あげました。
後生人慢慢臥起頭來看櫻花樹。
「あっ!」
「啊!」
何と不思議な事に、桜の木には枝いっぱいに花が咲いていたのです。
想毋解,櫻花樹開到淰淰个花。
二月のこんなに寒い日に、しかもたった一晩で咲いたのです。
恁冷个二月天,一暗晡斯開花了。
「ありがとうございます!」
「承蒙你!」
若者は桜の木に礼を言うと、おじいさんの待つ家へ走って帰りました。
後生人緊摎櫻花樹承蒙緊行等轉去厥公屋下。
「おじいさん!おじいさん!私がおんぶするから、一緒に来て下さい」
「阿公!阿公!𠊎來背你共下來去。」
「何じゃ?どうしたんじゃ?」
「仰般?做麼个東西?」
「いいから、出かけますよ」
「好,出來去!」
若者はおじいさんを背負うと、桜谷へと向かいました。
後生人背等厥公行去櫻谷,
やがて、桜の木がだんだん近づいて来ると、
無幾久,漸漸接近櫻花樹。
「おおっ・・・」
「唉哦....」
おじいさんは驚いて言葉も出せずに、ただ涙をぽろぽろとこぼしました。
厥公嚇到話都講毋出來,緊流目汁。
「よかったですね。おじいさん」
「還靚哦!阿公。」
桜の花は朝日を浴びて、キラキラと光り輝いています。
櫻花晟著朝晨頭个日頭絲,金晶枠亮。
「これほど見事な桜の花を、わしは今まで見た事がない。わしは、本当に幸せ者じゃ」
「𠊎這生人吂識看過這恁好看个櫻花。實在還有福氣哦!」
そうつぶやくおじいさんに、若者も涙をこぼしながら頷きました。
阿公在該噥噥噥噥,後生人乜緊流目汁緊頷頭,
それから間もなく、おじいさんは亡くなりましたが、
過毋幾久老阿公斯過身了。
それからも桜谷のこの桜の木は、毎年二月十六日になると見事な花を咲かせたそうです。
聽講自該擺過後櫻谷个櫻花樹,逐年二月十六日就會開當靚个花。
おしまい
煞了
|