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6月10日の日本の昔話
テングの隠れみの
天狗个隱身衣
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
頭擺頭擺,有一個安著彥一个細人仔,非常聰明。
小さい頃から頭が良くて、ずいぶんととんちがきくのですが、大が付くほどの酒好きです。
從細,頭腦當好,又非常伶俐,但係當好酒、越多越好。
何しろ彦一の夢は、毎日たらふく酒を飲むことです。
仰會彥一个夢係逐日有食毋忒恁多个酒。
「酒が飲みてえな。何か、うまい知恵はないだろうか?」
「還想食酒哪。有麼个好智慧無?」
考えているうちに、ふと、それをかぶると姿が消えるという、テングの隠れみのの事を思い出しました。
當在該想个時節,忽然間想起,著等佢身影斯會毋見忒个天狗隱身衣个故事。
テングは村はずれの丘に、時々やって来るといいます。
聽講天狗成時會來村郊山排。
「よし、テングの隠れみのを手に入れて、酒をたらふく飲んでやろう」
「係哪,來去拿領天狗个隱身衣,啉酒啉到飽。」
彦一はさっそく、ごはんを炊くときに使う火吹き竹(ひふきだけ)を持って、丘に来ました。
彥一黏時帶等煮飯用个火筒去山排。
「やあ、こいつはええながめだ。大阪や京都が、手に取るように見える。見えるぞ」
「哦,這東西還好哦!大阪抑係京都當近樣、看到當清楚,看得著哦。」
そう言いながら、火吹き竹を望遠鏡(ぼうえんきょう)のようにのぞいていると、松の木のそばから声がしました。
緊恁樣講,緊拿起火筒當做像望遠鏡樣,四處瞭望時節,聽到松樹就近有聲音傳過來。
「彦一、彦一。のぞいているのは、かまどの下の火を吹きおこす、ただの火吹き竹じゃろうが」
「彥一,彥一,這下在該瞭望用个毋係灶頭下歕風个火筒嘎。」
声はしますが、目には見えません。
斯聽著聲,無看著東西。
テングが、近くにいるのです。
天狗行兼來了哦。
「いいや、これは火吹き竹に似た、干里鏡(せんりきょう)じゃ。
「正毋係,這樣仔當像火筒,係望遠鏡。
遠くの物が近くに見える、宝じゃ。
遠个東西會變當近看當清楚。
・・・おお、京の都の美しい姫がやってきなさったぞ。牛に引かせた車に、乗っておるわ」
...哦,一個京都个靚細妹仔,坐等牛車過來了。」
「京の都の姫だと?彦一、ちょっとで良いから、わしにものぞかせてくれんか?」
「京都个靚細妹仔?彥一,一下仔就好,借𠊎看做得無?」
テングは、彦一のそばに来たようすです。
天狗像形行到彥一脣頭。
「だめだめ。この千里鏡は、家の宝物。持って逃げられては、大変じゃ」
「做毋得,做毋得,這望遠鏡係吾屋下个寶。分你拿走就無結煞。」
そのとたん、目の前に大きなテングが姿を現しました。
斯在該下,一隻大天狗出現在面前。
「大丈夫、逃げたりはせん。
「無問題,𠊎毋會瀉走。
だけどそんなに心配なら、そのあいだ、わしの隠れみのをあずけておこう」
毋過,若係你擔心,這段時間𠊎个天狗个隱身衣做得搭在你該位。」
「うーん、それじゃ、ちょっとだけだぞ」
「m11,這恁樣較差毋多。」
彦一はすばやく隠れみのを身につけると、さっと姿を消しました。
彥一煞煞摎天狗个隱身衣著起來,黏時毋見忒。
テングは火吹き竹を目にあててみましたが、中はまっ暗で何もうつりません。
天狗摎火筒放在目珠前來看,但係裡肚暗疏疏,麼个乜無看著。
「彦一め、だましたな!」
「彥一,𠊎分你落著了!」
と、気がついたときには、彦一の姿は影も形もありませんでした。
等佢注意著時節,彥一走到無魂無影。
隠れみのに身を包んだ彦一は、さっそく居酒屋(いざかや→お酒を出す料理屋)にやって来ると、お客の横に腰をかけて徳利(とっくり→お酒の入れ物)のままグビグビとお酒を飲み始めました。
著等天狗个隱身衣个彥一來到一間居酒屋(賣酒摎料理个餐廳),坐在人客脣頭,拿等酒壺gud2 gud2滾開始啉。
それを見たお客は、ビックリして目を白黒させます。
看著該个人客嗄著驚,目珠貶白。
「とっ、徳利が、ひとりでに浮き上がったぞ!」
「酒,酒壺,自動浮起來!」
さて、たらふく飲んだ彦一は、ふらつく足で家に帰りました。
啉到醉摸摸个彥一,踜踜蹭蹭行轉去。
「うぃー。これは、便利な物を手に入れたわ。・・・ひっく」
「wui~,這拿著利便个東西,...hiiku」
隠れみのさえあれば、いつでもどこでも好きな酒を飲む事ができます。
係有隱身衣就做得隨時、隨地啉著自家愛个酒。
次の朝。
第二朝晨。
今日も、ただ酒を飲みに行こうと飛び起きた彦一は、大事にしまいこんだ隠れみのがどこにもない事に気がつきました。
今晡日乜,斯為著啉酒正會恁早䟘床个彥一,發現恁重要个隱身衣會走哪去呢?
「おーい、おっかあ。つづら(→衣服を入れるカゴ)の中にしまい込んだ、みのを知らんか?」
「噯,細人仔厥姆!放在衫櫥裡肚个隱身衣你知在哪無? 」
「ああ、あの汚いみのなら、かまどで燃やしたよ」
「啊,若係該身屙糟隱身衣,𠊎放落灶空肚燒忒囉。」
「な、なんだと!」
「麼,你講麼个!」
のぞきこんでみると、みのはすっかり燃えつきています。
探頭去看个時節,隱身衣燒到淨淨了。
「あーぁ、なんて事だ。毎日、酒が飲めると思ったのに・・・」
「啊,仰會恁樣,逐日,𠊎想做得去啉酒....」
彦一はぶつくさいいながら灰をかき集めてみると、灰のついた手の指が見えなくなりました。
彥一緊噥噥噥噥緊收集火灰,分火灰膏著个手指嗄看毋著了。
「ははーん。どうやら隠れみのの効き目は、灰になってもあるらしい」
「ha ha~n。仰會,隱身衣个效力連厥灰都有。」
体にぬってみると、灰をぬったところが透明になります。
摎佢膏在膴身,膏著个位所變透明。
「よし、これで大丈夫だ。さっそく酒を飲みに行こう」
「還好,無問題。遽遽來去啉酒。」
町へ出かけた彦一は、さっそくお客のそばにすわると徳利の酒を横取りしました。
去到街路个彥一,坐在人客脣頭黏時抓一壺酒。
それを見たお客は、
看到个人客,
「わっ!」と、悲鳴をあげました。
「哇!」發痴驚噦:
「み、みっ、見ろ。めっ、目玉が、わしの酒を飲んでいる!」
「看、看、你看!目、目珠啉吾酒!」
隠れみのの灰を全身にぬったつもりでしたが、目玉にだけはぬっていなかったのです。
本旦按算完身用火灰膏,目珠嗄無膏著。
「化け物め、これをくらえ!」
「怪物,這分你食!」
お客はそばにあった水を、彦一にかけました。
人客拿起脣頭个水,潑彥一。
バシャン!
pia11!
すると、どうでしょう。
過後發生麼个事情呢?
体にぬった灰がみるみる落ちて、裸の彦一が姿を現したのです。
膏在身上个火灰溜淨淨,出現完身光光个彥一。
「あっ!てめえは、彦一だな!こいつめ、ぶんなぐってやる!」
「啊!你係彥一!這個小人,無修理做毋得!」
「わっ、悪かった、許してくれー!」
「哇,知錯了,請原諒𠊎!」
彦一はそういって、素っ裸のまま逃げ帰ったという事です。
聽講,彥一完身光光瀉轉屋下。
おしまい
煞咧
おまけ
ささずんと昔話講座 第07話【天狗の隠れ蓑】
読者の「NS.MOOOON」さんの投稿作品。
日本昔話を、ゆっくりの解説でずんちゃんとささらちゃんが学んでいくシリーズ。
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