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6月29日の日本の昔話
かじかびょうぶ
河鹿𧊅屏風
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、古くから栄えたお金持ちの家がありました。
頭擺頭擺,有一間自古就當有錢、當旺个家族。
この家は代々、多くの田や山を持っています。
這屋人世代相傳,代代都有當多个田摎山。
ところが今の主人の菊三郎(きくさぶろう)は生まれつきのなまけ者で、全く働かずに遊んでばかりです。
毋過,這代主人菊三郎出差世係一個懶ㄕ鬼,全毋做事總知搞定定。
そのうちに家のお金も少なくなり、たくさんあった田をどんどん売りつくして、最後に残ったのは山だけです。
屋下錢緊來緊少,田都賣淨淨了,伸到山。
そしてその山も売る日がやって来て、菊三郎は下調べに自分の山に入っていきました。
賣山个日仔到囉,菊三郎去山頂預先調查。
谷川をどこまでも登っていって、きれいな流れになるあたりいったいが菊三郎の山です。
菊三郎蹶過逐隻坑壢,鮮鮮个流水附近全係菊三郎个山。
山には谷をはさんで、天にも届くような立派な杉の木が何千本としげっています。
坑壢兩片山,千千萬萬頭透天恁高、生著當靚个杉仔。
足下の谷川の水は冷たくすきとおっていて、なんとも美しい山でした。
在你腳下个山坑水盡涼,仰恁靚个山。
それにこの谷川には、かじか(→カエルの一種。谷川の岩間にすみ、色は暗褐色でオスは美声で鳴きます)がたくさん住んでいて、とてもいい声で鳴きます。
另外,還有有當多河鹿𧊅 (𧊅仔个一種,生活在山坑底石頭縫,豬肝色,公个會發出好聽个叫聲),叫聲非常好聽。
それで人々はこのあたりを『かじか沢』と、よんでいました。
所以大家摎這搭仔安到『金澤』。
菊三郎は持ち山のどのあたりを売ろうかと考えながら歩き回っているうちに、すっかりくたびれてしまいました。
菊三郎在四圍行遶,尋看愛賣哪搭仔較好時節,悿到蹶毋動了。
「どれ。ちっと、一眠りしようか」
「噯,睡一下哪?」
菊三郎は、かじか沢にある大きな一枚岩の上に寝ころびました。
菊三郎橫在『金澤』个大石抨。
耳をすますと、かじかの美しい鳴き声が谷の底からわきあがるように聞こえてきます。
若係恬恬用心聽,會聽著對山坑壢底傳來好聽个河鹿𧊅歌聲。
(おや?気のせいか、今日のかじかは悲しげに鳴いとるのう)
(唉哦,會係𠊎愁忒多無?今晡日仰會叫到恁衰過呢。)
そんな事を考えているうちに、菊三郎はウトウトと眠ってしまいました。
菊三郎在該恁樣想个時節嗄睡忒。
「だんなさま、だんなさま」
「主人,主人。」
どこからか、菊三郎を呼ぶ声が聞こえてきます。
毋知哪位,聽到人喊菊三郎个聲。
「だんなさま、・・・菊三郎さま」
「主人...菊三郎先生。」
「うん?誰だ、名前を呼ぶのは?」
「m24?係麼人,在該喊𠊎个名仔?」
菊三郎が起き上がると、すぐ目の前に奇妙な顔をしたおじいさんが座っていました。
菊三郎䟘起來後,一個看起來當奇怪个老阿伯坐在佢面頭前。
おじいさんはカエルみたいな顔で、着物のすそからはしずくがポタポタとたれています。
老阿伯看起來像𧊅仔,著个衫,衫尾水搭搭跌。
おじいさんは、菊三郎に頭を下げて言いました。
老阿伯向菊三郎低下頭行禮,講:
「菊三郎さま。お願いがあります。どうかこのかじか沢だけは、売らんでくださりませ。お頼み申します」
「菊三郎先生,𠊎有一隻要求,斯請你毋好賣『金澤』這位所,拜託你。」
「お前さんは?」
「你係?」
「はい、申し遅れました。
「係,𠊎吂自我介紹,
わたしはこのあたりいったいに住む、かじかの頭領(とうりょう→親分)でございます。
𠊎戴這就近,係河鹿𧊅个頭仔。
だんなさまが、このかじか沢をお売りなさると聞いたので、あわててやってきました。
聽講主人愛摎這『金澤』賣人,所以緊觸觸走來。
なにとぞ、このかじか沢をお売りにならんよう、お頼み申し上げます」
無論仰般,想請你毋好賣『金澤』這位所,拜託你。
頭領はにじりよって、菊三郎の手をとって頭を下げました。
頭仔跪落去慢慢移動,手揢等菊三郎个手,低下頭行禮。
その手は、沢の水のようにひんやりとしていました。
該隻手像『金澤』个水樣冷雪雪。
そこで菊三郎は、ハッと目が覚ましました。
菊三郎忽然間醒起來。
「今のは、夢だったのか」
「頭下係發夢無?」
でも、かじかの頭領の手がふれた菊三郎の手は、水でびっしょりとぬれています。
但係,菊三郎分河鹿𧊅頭仔个手摸著該隻手還水汀汀。
あまりの不思議さに、菊三郎はそのまま家に帰りました。
抝蠻奇怪,菊三郎斯恁樣轉屋下去。
家に帰った菊三郎は、何とかしてかじか沢は売らずにすむように考えました。
菊三郎轉到屋下,想盡辦法仰般正毋使賣『金澤』這所在。
それで家にあった古いかけ軸や道具をかき集めて売りに出し、どうにかかじか沢を売らずにすませました。
所以,尋出屋下所有个舊掛軸摎傢伙,摎佢賣忒,仰般就毋賣『金澤』。
その為に家に残っている物は、何の値打ちもないような絵の描いていない白いびょうぶだけです。
唯一伸在屋肚个係無價值、吂有畫个白色屏風。
その晩のこと、菊三郎は夢の中でたくさんのかじかの声を聞きました。
該暗晡,菊三郎在夢肚聽到當多河鹿𧊅仔个叫聲。
この前に山で聞いたときとは違って、かじかの声はとても楽しそうでした。
摎頭過在山頂聽著个聲音無共樣,這擺唱歌个聲聽起來特別歡喜。
目が覚めると、もうあたりは明るくなっています。
醒个時節,天大光了。
菊三郎が、ふとんの中でのびをすると、
菊三郎在被竇肚伸一下腰後,喊:
「ありゃっ?」
「該係?」
と、のばした手に冷たい物がさわりました。
伸出去个手摸著毋知麼个冷泧泧个東西。
見てみると、まくらもとがビッショリとぬれています。
看一下正知,枕頭下濕搭搭。
そればかりか水にぬれた小さな足あとが、縁側の方から続いているではありませんか。
毋只該兜水舞濕个細腳跡,像形對屋簷下該片析過來樣嘎?
菊三郎は、その足あとの先を見ておどろきました。
菊三郎看著腳跡煞嚇著。
「あっ!」
「阿姆哀!」
何と目の前のびょうぶには、いつの間にか墨の色もあざやかに、たくさんのかじかが描かれているではありませんか。
眼前這屏風仰會毋知幾時,畫到恁靚、恁多个墨水色𧊅仔呢?
「これは、見事だ」
「這,還好哪。」
そのびょうぶのかじかはどんな名人が描いたのか本物そっくりで、今にも鳴き出しそうです。
這屏風頂畫个𧊅仔,毋知哪個名人畫个像形生个東西樣,到這下還會叫。
さて、菊三郎のかじかびょうぶは、あっという間に評判になって、遠い町からも見物が来るようになりました。
菊三郎个河鹿𧊅仔屏風个名聲,盡遽就流傳開來,也有在遙遠个城市來尋寶。
中には千両箱をいくつも重ねて、
其中,乜有人拿等也有堆打堆个百寶箱,講:
「ぜひとも、ゆずってください」
と、いう人も現れました。
「無論仰般,請你讓分𠊎。」
でも菊三郎は、このびょうぶを手放す気にはなりませんでした。
但係,菊三郎無放手个意思。
そしてなまけ者だった菊三郎が、まるで人が変わったように働きだしたのです。
菊三郎,這個懶ㄕ人,開始做事,像完個人變忒了,煞猛做事。
おかげで田田も増えて、菊三郎の家は以前に負けないほど立派になりました。
因為這隻原因,田園增加,菊三郎个屋變毋會輸頭過恁派頭。
そればかりか、貧しい人には金や米を分けてやり、困っている人を見ると自分のことのように力を貸してやるのです。
另外,救濟窮苦人金錢摎米,堵著有需要个人,就會盡力幫忙。
こうして菊三郎は幸せに暮らして、もう八十歳をこえる老人になりました。
菊三郎過著幸福个生活,食到八十零歲。
さすがの菊三郎も年には勝てず、この頃は寝たきりの毎日です。
像菊三郎也係拗毋贏歲數,這下逐日斯睡在眠床頂。
そんなある日、この国の殿さまの使いの家老(かろう)が大勢の家来をしたがえて、やってきました。
有一日,這隻國國主派厥家臣帶一大群傭人來。
菊三郎のまくらもとに千両箱をいくつも積み重ねて、あのかじかびょうぶを売れというのです。
在菊三郎个枕頭下放當多千兩箱,想愛買該隻屏風。
菊三郎は、キッパリと断りました。
菊三郎拒絕。
「あれは大事なびょうぶです。殿さまであろうと、手放すわけにはいきません」
「該係當重要个屏風,不管你係麼个國主,都毋讓分佢。」
すると、それを聞いた家老は腹を立てて、
後來聽著个家臣開始火著了,講:
「えい、この無礼者(ぶれいもの)め!殿のおぼしめしを、なんとこころえるか。それっ!」
「e24,這魯夫牯!你仰會毋了解國主个想法?該!」
と、寝ている菊三郎をふみこえて、家来たちと一緒にびょうぶを奪ってしまったのです。
斯跺過菊三郎个膴身,摎傭人共下去搶屏風。
寝たきりの菊三郎には、どうすることも出来ません。
と、そのとき、
睡在眠床頂个菊三郎,無法度反抗。
該量時
ザワザワザワザワ
zawa zawa zawa zawa
家老や家来たちの足もとを、何百というかじかがはってゆくではありませんか。
毋係有幾下百隻河鹿𧊅仔走出來家臣摎傭人个腳下背嘎?
なんとそれは家老のかかえているかじかびょうぶから、はいだしてくるのでした。
仰會想愛對家臣揇等个屏風頂走出來。
そして見るまにかじかびょうぶは、ただの白いびょうぶに変わってしまいました。
一下仔,屏風變成白色个屏風。
「そうじゃ、それでよいのじゃ。みんな、かじか沢へ帰るがよい」
「恁樣哦,又乜好。全部河鹿𧊅仔,轉到『金澤』去。」
菊三郎はそうつぶやきながら、ニッコリ笑って死んでしまいました。
菊三郎緊噥噥噥噥緊笑咪咪過身了。
おしまい
煞咧
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