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11月8日の日本の昔話

証誠寺の狸囃子
イラスト Smile STATION

しょうじょう寺のタヌキばやし
千葉県の民話 → 千葉県の情報

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
【大人もよく眠れる 女性の声】日本昔話特集 心温まるお話 元NHKフリーアナ 読み聞かせ

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制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】

♪音声配信(html5)
音声 Smile STATION

 むかしむかし、山にかこまれた、しょうじょう寺という小さなお寺がありました。
 山にはタヌキがいっぱいいて、夜になると寺へやって来ては腹つづみを打ったり、暴れまわったりとイタズラのしほうだい。
 おかげでこの寺には和尚(おしょう)さんがいつかず、寺は荒れ放題です。

 身分の高い和尚さんが、この寺の事を聞いて、
「よろしい、わしが行ってしんぜよう」
と、しょうじょう寺へやって来ました。
「うむ、これは聞きしにまさるひどさじゃ」
 あまりにもひどい寺の荒れように、和尚さんはあきれ顔です。
♪なんまいだあ~
♪なんまいだあ~
 本堂から、ひさしぶりにお経が聞こえてきました。
 裏山のタヌキたちは顔を見合わせてニヤリと笑うと、さっそく新しい和尚さんを追い出す相談をはじめました。
「おい、ポン太とポン子、いつものやつやってみろ!」
「へ~い!」
 ドロンパッ!
 ポン太とポン子は、何やら姿を変えてしまいました。
「おう、見事じゃ。はよう行って、おどかしてこい」
「へ~い!」
 そして、
♪なんまいだあ~
♪なんまいだあ~
と、お経をあげる和尚さんの後ろに、そうっと近づいたポン太は、ぬっと顔を出しました。
「ギャアーーーー!」
 目の前に現れたのは、一つ目小僧です。
 そこへ、美しい娘も現れて、
「和尚さん、お茶をどうぞ」
と、言いながら、首をニョロニョロとのばしてきたではありませんか。
「た、た、たすけてくれ~っ」
 和尚さんは寺の石段を転がるようにかけおりて、逃げ出してしまいました。
 寺の庭に集まったタヌキたちは大笑いしながら、とくいになって腹つづみを打ちました。

 さて、次に現れたのは、力の強そうなごうけつ和尚でした。
 和尚さんが寺につくと、さっそくタヌキたちはおどかしにかかりました。
 ところが一つ目小僧に化けたポン太は頭をコツンとなぐられ、娘に化けたポン子が首をニョロニョロのばすと首をねじまげられるしまつです。
「うえーん、いたいよう!」
 二匹は、なきなき帰っていきました。
 タヌキの親分は、考えました。
「う~ん、あの和尚、何に化けてもこわがらん。・・・そうだ、一晩中腹つづみを打ち続けるんだ。そうすれば和尚のやつ、眠れなくなってまいっちまうぞ」

 その夜、タヌキたちはいっせいに腹つづみを打ちはじめました。
♪ポンポコポンのポン!
 ぐっすり眠っていた和尚は、さすがにその音で目を覚ましました。
 むっくり起きあがって戸を開けると、
「こらっ! 庭で遊んじゃいかん」
 タヌキたちはすばやく逃げ出して、木のかげにかくれてしまいました。
「こらっ、待て! こらっ、逃げるな! タヌキたちのやつ、ばかにしやがって」
 和尚は庭中、タヌキを追いかけまわしましたが、タヌキたちのすばやさにはとてもかないません。
 そのうち石につまずいて転んで、目をまわしてしまいました。
 こうして和尚は、またまたタヌキたちにやられてしまったのです。

 さて、その次に現れたのは、なんともきたない和尚さんでした。
 この和尚さんは、きたないこの寺をすっかり気に入ってしまいました。
「おう、しずかでいい寺じゃ」
 タヌキたちはさっそく、この新しい和尚さんを追い出す相談です。
 いつものように、まず一つ目小僧のポン太が出て行きましたが。
「おう、これはかわいい一つ目小僧じゃ。そら、ダンゴでも食わんか?」
 ポン太は和尚さんにダンゴをもらって、とことこ帰ってきました。
 今度は、ポン子姉さんです。
 ところが和尚さんは、大喜び。
「さあ、首の長いお姉さんも、一ぱいいこう」
と、ポン子にお酒を飲ませるしまつ。
 タヌキの親分は、怒りました。
「ようし、こうなったらあの手だ」
と、いうわけで、その夜、和尚さんが寝付いた頃。
♪ポンポコポンのポン!
 物音で目を覚ました和尚さんが戸を開けると、タヌキたちがせいぞろいして腹つづみを打っています。
「こりゃ、おもしろい。わしも仲間に入れてくれ」
 ずいぶんとかわった和尚さんで、庭におりてくるとタヌキたちと一緒に腹つづみを打ちはじめました。
♪ポンポコポンのポン!
♪ポンポコポンのポン!
 どうも、タヌキたちの音とは違うようです。
「なんだなんだ、その音は。わっはっはっは」
 タヌキたちに笑われて、和尚さんはいっしょうけんめいたたきました。
「よせよせ、腹がこわれてしまうぞ」
 タヌキの親分がとめるのも聞かず、和尚さんはたたきつづけます。
 そのうち、お腹をたたき続けた和尚さんは、とうとうフラフラになって倒れてしまいました。
「それ、言わんこっちゃない。このままじゃ、かぜをひいてしまうぞ。和尚さんを、寺の中へ運んでやれ」
 和尚さんを追い出そうとしたタヌキたちでしたが、和尚さんを親切にかいほうしました。

 次の日の朝。
「はて、わしはいつここへもどったんじゃろう? まあ、それはどうでもいいわ。もう少し、腹つづみがうまくならんといかんな」
と、いうわけで、和尚さんは朝早くから腹つづみの練習をはじめました。
「強くたたけばいいってもんじゃないな。コツじゃ、コツ。そいつを覚えねば」
 和尚さんは昼飯もそこそこに、また腹つづみのけいこです。
 やがておてんとさまが西にかたむく頃、和尚さんのお腹はかなりいい音が出るようになっていました。

 さて、今夜は満月です。
 和尚さんもタヌキたちも早くから寺の庭にせいぞろいして、みんなで楽しく腹つづみです。
♪ポンポコポン、ポンポコポン。
♪ポンポコポン、ポンポコポン。
♪ポンポコポンの、スッポンポン。
 和尚さんのお腹の音がずいぶんよくなったので、タヌキたちも負けてはいられません。
「和尚さんに、負けるな、負けるな」
と、ひっしでお腹をたたいているうちに、タヌキの親分のお腹はどんどんふくれていきました。
 それでも、たたき続けます。
 そしてついに。
 バーン!
 とうとうお腹がはれつして、タヌキの親分はひっくり返ってしまいました。
「こりゃ、大変じゃあ! 薬、薬」
 和尚さんは大急ぎで薬を持って来て、タヌキのお腹にぬってやりました。
「どうだ、具合は?」
 心配そうにたずねる和尚さんに、タヌキの親分はニッコリして言いました。
「和尚さんのおかげで、もう治った。さて、続きをやるぞ。それっ、あいててて!」
 タヌキの親分は腕をふりあげましたが、まだむりのようです。
「次の満月まで、しんぼうしなさい。みんな、今夜は親分のお腹が早く治るよういのって、元気よくやろう」
 こうしてタヌキたちとゆかいな和尚さんは、朝まで元気良く腹つづみを打ち続けました。
 そしてしょうじょう寺というこのお寺では、今も満月の夜にはタヌキたちが庭に集まって、腹つづみをうつという話です。

おしまい

証城寺(しょじょうじ)の狸(たぬき)ばやし

 作詞 野口雨情
 作曲 中山晋平


♪ しょ しょ しょうじょうじ 
♪ しょうじょうじの 庭は
♪ つ つ 月夜だ
♪ みんなでて こいこいこい
♪ おいらの 友だちゃ
♪ ポンポコポンの ポン


♪ 負けるな 負けるな
♪ 和尚さんに 負けるな
♪ こい こいこい こいこいこい
♪ みんなでて こいこいこい


♪ しょ しょ しょうじょうじ
♪ しょうじょうじの はぎは
♪ つ つ 月夜に 花ざかり
♪ おいらも うかれて
♪ ポンポコポンの ポン

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