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11月9日の日本の昔話

はな垂れこぞう

鼻たれ小僧

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
海老の折り紙えび  小僧の折り紙こぞう(おとこのこ)

♪音声配信(html5)
音声 ぬけさくのいちねん草紙

 むかしむかし、たきぎを売って暮らしているおじいさんがいました。

 ある日の事、おじいさんはたくさんのたきぎを背負って町に行くと、
「たきぎ。たきぎ。たきぎは、いらんかのう」
と、一日中大声をあげて売り歩きましたが、たきぎは少しも売れませんでした。
 おじいさんは疲れはてて、橋の上に座りこみました。
 もう家まで、たきぎを持って帰る力もありません。
「売れない物なら、せめて川の神さまに差し上げよう」
 おじいさんはたきぎを一束ずつつかんで、川へ落としました。
「川の神さま。つまらぬ物ですが、受け取ってくだされ」
 そして全てのたきぎを川へ投げ込んだおじいさんは、とぼとぼ家に帰ろうとしました。
 するとその時、川の中から小さな子どもを抱いた美しい女の人が現れたのです。
「わたしは、川の神さまの使いです。川の神さまは、たきぎをいただいて大変お喜びです。お礼に、この子を差し上げましょう」
 それを聞いておじいさんは、あわてて手を振りました。
「いや、貧乏なわしに、子どもを育てる事なんて」
「大丈夫です。この子は鼻たれ小僧と言って、欲しい物を頼めば何でも出してくれます」
「本当ですか?」
「そのかわり、毎日エビを食べさせてください。いいですか、毎日ですよ」
 女の人はそう言って、鼻たれ小僧を置いて消えました。

 おじいさんは鼻たれ小僧を家へ連れて帰ると、神だなの横に置いて大切に育てました。
 女の人が言った事は、うそではありませんでした。
「鼻たれ小僧よ、お米がほしい」
と、言えば、鼻たれ小僧は鼻をかむ時のように『チンチーン』と音をたてて、あっという間にお米を出してくれるのです。
「鼻たれ小僧よ、お金がほしい」
「チンチーン」
「鼻たれ小僧よ、新しい家がほしい」
「チンチーン」
「鼻たれ小僧よ、大きな蔵(くら)がほしい」
「チンチーン」
 おじいさんが頼めば何でも出してくれるので、やがておじいさんは村一番の大金持ちになりました。
 大金持ちなので、山へたきぎを取りに行く必要はありません。
 ただ毎日、町へ行って鼻たれ小僧に食ベさせるエビを買うだけです。
 でもそのうちに、おじいさんはエビを買うのがめんどうになってきました。

 ある日、おじいさんは鼻たれ小僧に言いました。
「もう頼む事がなくなったから、川の神さまの所へ帰っておくれ」
 すると、どうでしょう。
 ズーズーと、鼻をすするような音がしたかと思うと、立派な家も蔵も何もかもが消えてしまったのです。
 あとには、むかしのままのみすぼらしい家が残りました。
「じゃあ、さよなら」
 鼻たれ小僧はそう言うと、川の方へ歩いていきました。
「まっ、待っておくれ、鼻たれ小僧」
 おじいさんはあわてて後を追いかけましたが、もうどこにも鼻たれ小僧の姿はありませんでした。

おしまい

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