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12月18日の百物語

人の精気を吸うがま

人の精気を吸うガマ

日本語 ・日本語&中国語

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】

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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読

 むかしむかし、あるところに、古い屋敷に住んでいるおじいさんがいました。
 とても元気なおじいさんでしたが、ある日から急に元気がなくなり、どんどんやせていったのです。
 医者にも診てもらっても、高い薬も飲んでみても良くならず、ついには寝込んでしまいました。

 そんなある日、おじいさんは具合が少しだけ良くなったので、久しぶりに布団から出て庭をぼんやりとながめました。
 すると近くの木の枝にとまっていたスズメが、急に吸い込まれる様に縁の下に飛び込んだのです。
「はて、何かエサでも見つけたかな?」
 おじいさんは不思議に思って縁の下をのぞき込んでみましたが、どこへ消えたのかスズメはいません。
 おじいさんが首を傾げていると、庭石の上にノラネコが登って毛づくろいを始めました。
 ところがネコはふいに庭石から転げ落ちて、そのまま吸い込まれる様に縁の下に消えてしまったのです。
 そればかりではありません。
 木をはっていた毛虫も地面へ落ちて、吸い込まれる様に縁の下へ消えてしまいました。
「これは、どうしたというのだ?」
 おじいさんは気味が悪くなり、お手伝いの男を呼んで縁の下を調べてくれる様に頼みました。
 お手伝いの男が縁側の板を外して縁の下へ潜り込むと、縁の下には大きなガマガエルがいて、お手伝いの男を見るなり、フッと息を吹きかけたのです。
 とたんにお手伝いの男の胸が苦しくなり、お手伝いの男はその場に倒れながらも助けを求めました。
「だっ、誰かーっ!」
 お手伝いの男の叫び声を聞いて、おじいさんがすぐに家の者を呼ぶと、お手伝いの男を縁の下から引っ張り出させました。
「どうした? しっかりしろ」
「ガ、ガ、ガマ、・・ガマが」
 お手伝いの男はそう言うと、気を失いました。
 おじいさんはびっくりして、家の者に近所の人たちを呼んでこさせました。
「縁側を壊しても構わないから、下に何があるか調べてくれ」
 そこで近所の人たちが縁側の板を次々とめくっていくと、何と縁の下から海ガメほどもある大きなガマガエルが、ゆっくりとはい出してきたのです。
 その無気味な姿に、誰も声が出ません。
 大ガマガエルはそのまま庭を横切り、裏の竹やぶに消えました。

 しばらくしてみんなが縁の下を調べると、ネコの骨やスズメの羽などが散らばっていました。
「さては、今までの不思議な出来事は、すべてガマの仕業であったか。・・・もしかして自分の病気も、あの大ガマのせいでは」
 そこでおじいさんは、物知りの和尚さんに大ガマガエルの事をたずねてみました。
 すると和尚さんは、おじいさんにこんな事を教えてくれました。
「何十年も生きた大ガマは、妖怪となって人間の精気(せいき→元気)を吸うそうだ。
 縁の下に大ガマがいては、病気になっても不思議ではない。
 しかし大ガマがいなくなったのだから、すぐに病気も治るだろう」

 和尚さんの言う通りおじいさんの病気はすぐに治って、元の元気な体になりました。

おしまい

朗読文章の旧バージョン

  むかしむかし、あるところに、古い家に住んでいる老人がいました。
 べつになにが原因とわからないままに元気がなくなり、どんどんやせていきます。
 そこで医者にもみてもらい、高い薬も飲んでみましたが、いっこうによくならず、ついには寝こんでしまったのです。
 ある日、ひさしぶりのよい天気なので、床(とこ→この場合はふとん)を出て縁側(えんがわ)に腰をかけ、ボンヤリと庭をながめていました。
 すると、近くの木の枝にとまっていたスズメが、きゅうにそばへ飛んできたかと思うと、縁の下に飛びこみました。
「はて、なにを見つけたのかな?」
と、ふしぎに思い、縁の下をのぞきこんでみましたが、どこへ消えたのか、それっきりスズメは出てきません。
 そこへノラ猫がやってきて、庭石にのぼり、毛づくろいを始めました。
 ところが、ネコはふいにころがりだし、そのままなにかに引きずられるように、こっちへ近づいてきたかと思うと、やはり縁の下に消えました。
 そればかりではありません。
 目の前の木をはっていた毛虫が、とつぜん下へ落ち、地面を引きずられるようにして縁の下へ消えたのです。
「いったい、どうしたというのだ?」
 老人は、だんだん気味が悪くなり、ふたたび床へ入って横になりましたが、どうしても胸のドキドキがおさまりません。
 そこで手伝いの男を呼んで、縁の下を調べてくれるようにたのみました。
 男が縁側の板をはずし、下へもぐりこむと、縁の下には大きなガマガエルがいて、男を見るなり、フッと息を吹きかけたのです。
 とたんに胸が苦しくなり、男はもう少しでたおれそうになりました。
「だ、だれか!」
 男の叫び声を聞いて、老人が起きてかけつけると、男が青くなって縁の下からとびだしてきました。
「どうした?」
「ガ、ガ、ガマ、・・ガマが」
 いったきり、男が気を失いました。
 老人はビックリして、近所の人たちを呼んできました。
「かまわないから、その縁側をこわして、下を見てくれ」
と、いうので、近所の人が、つぎつぎと縁側の板をめくると、どうでしょう。
 大きな海ガメほどもあるガマが、ゆっくりとはいだしてきたのです。
 ガマは老人をジロリとながめ、そのまま庭を横ぎり、うらの竹やぶに消えました。
 その無気味な姿に、だれも声がでません。
 しばらくしてハッと気がつき、縁の下を調べてみると、食べ残したネコの骨やらスズメの羽がちらばっていました。
「さては、いままでのふしぎな出来事は、すべてガマのしわざであったか。・・・もしかして、自分の病気もガマのせいでは」
と、思い、物知りにたずねてみると、
「ガマは、ときに妖怪となって、人間の精気(せいき→元気)まで吸う。病気になっても不思議ではない。ガマがいなくなったのだ、病気もなおるだろう」
と、教えてくれました。
「やれやれ、あぶないところであった」
 老人は、ホッとして胸をなでおろしました。
 物知りのいうように、老人の病気はうそみたいによくなり、やがて、もとの元気なからだになったといいます。

おしまい

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