|  |  | 福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 9月の江戸小話 > 罪ほろぼし
 9月20日の小話 
 罪ほろぼし   ある日の事、村で一番貧乏な男が、泣きそうな顔で寺にやってきました。「和尚さんよ、おら、あんまり暮らしが苦しくて、つい隣の畑からイモとダイコンを盗んでしまっただ。このつぐないは、どうしたらよかんべえ」
 「ふむふむ、それなら一つ、わしが観音(かんのん)さまに聞いてやるから、しばらく待っておれよ」
 和尚さんはそう言うと、観音さまの前でぶつぶつとなえ始めました。
 そしてしばらくすると、男に言いました。
 「観音さまは、タイが食べたいと言うておられる。だからタイを、お供えするのじゃ。そうすればお前の罪は、きれいに許して下さるじゃろう」
 「なんと! それはむりな話だ。イモやダイコンすら盗まねばならねえおらに、タイが買えるわけがね」
 男がそう言うと、和尚さんは声をひそめて言いました。
 「なあに、心配せんでよい。イモやダイコンと同じ方法で、タイも手に入れればよいのじゃ。ウッシシシ」
 このような坊主を、くそ坊主といいます。
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
  
 
 |  |  |