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1月9日の日本民話
龍王ばあさま (龍王から教えられた踊り)
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むかしむかし、中村という所に、赤ちゃんの取り上げが上手なおばあさんがいました。
どんなに難産(なんざん)でも、このおばあさんの手にかかればすぐに産まれるので、『中村の取り上げばあさま』と呼ばれていました。
ある日の真夜中、おばあさんが寝ていると家の戸を叩く者がいます。
ドンドン、ドンドンドン。
こんな時間に来るのは急産の取り上げに違いないと思い、おばあさんはすぐに支度(したく)をすると外へ飛び出しました。
外には、使いの男がいて、
「こんなに遅くにすまんが、一緒に来て下さい」
と、言いました。
「それは良いが、どこの家かいの?」
おばあさんが尋ねると男は、
「ずっと遠くです。案内しますから、足元に気をつけてください」
と、先に立ってどんどん歩いて行きました。
真暗闇(まっくらやみ)ですが、なぜか足元だけは明るいので、おばあさんは何とか転ばずに歩けました。
そのうち波の音が聞こえて来たので、
(これは、海の近くだな)
と、思ったとたん、おばあさんは気を失ってしまいました。
おばあさんが気がつくと、そこは金銀(きんぎん)がキラキラと光り輝く龍宮城(りゅうぐうじょう)だったのです。
おばあさんがびっくりしていると、龍宮城の主の龍王(りゅうおう)が現れました。
「夜中に、遠い所をごくろうであった。そちに、姫のお産のかいぞえを頼みたいのだ」
「お産?」
お産と聞いては、ジッとしていられません。
おばあさんがさっそく姫の部屋へ行くと、それはひどい難産(なんざん)で、姫の顔には血の気がありませんでした。
「よしよし、すぐに楽にしてやるからな」
おばあさんはさっそく仕度に取りかかり、それからすぐに玉の様な男の子が産まれました。
「おおっ、良くやってくれた。お礼に、何でもやろう」
龍王は大喜びで、おばあさんの前にお礼の金銀サンゴを山の様に積み上げました。
けれど、おばあさんはそれを受取ろうとしません。
「どうした? 気に入らんのか? ・・・そちは一体、何が欲しいのじゃ? 何なりと取らせるゆえ、申してみるがよい」
龍王がそう言うと、おばあさんは恐る恐る答えました。
「はい。実はわたくしの村にあまり雨が降らず、田んぼのイネが枯れようとしています。どうか龍王さまのお力で、雨を降らせてもらいたいのです」
この村人を思う気持ちに感心して、龍王はその願いを聞き入れました。
「それでは、今後はわしをまつって、豊年(ほうねん)踊りを踊るがよい。さすれば大雨を降らせよう」
さて、それからおばあさんが龍宮城を去って村に帰りつくと、いなくなったおばあさんを探して村中が大騒ぎでした。
おばあさんが訳を話して龍王との約束を伝えると、村人は大喜びです。
「これで、村は救われる!」
「取り上げばあさまは、ありがとう」
この時から村人たちは、このおばあさんの事を『龍王ばあさま』と呼ぶようになりました。
そしてこの踊りが山口県に今に伝えられる、楽踊り(がくおどり)の始まりだという事です。
おしまい
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