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10月13日の世界の昔話

ヘンゼルとグレーテル

ヘンゼルとグレーテル
グリム童話 →詳細
ヘンゼルとグレーテルのぬりえ

 むかしむかし、ある森のはずれに、貧乏(びんぼう)な木こりがおかみさんや二人の子どもたちと暮らしていました。
 子どもの一人は男の子で名前をヘンゼルといい、もう一人は女の子でグレーテルといいます。

 ある年の事、夏だというのにひどい寒さがやってきて、畑の作物がすっかりかれてしまいました。
 ただでさえ貧乏な木こりは、その日に食べるパンもろくにありません。
 お腹が空きすぎて眠れずにいると、おかみさんが小声で話しかけてきました。
「ねえ、あんた。このままでは親子四人、とも倒れですよ」
「そうだろうなあ。・・・でも、しかたがない」
「ねえ、ここは思いきって、子どもを手放してみてはどう? 子どもたちの運命は、天の神さまにまかせてさ」
「なんだって!」
「しっー。子どもたちが起きるよ」
 おかみさんはとなりのへやで寝ている子どもたちを気にしながら、耳元でささやくように言いました。
「だってさ、このままこうしていても、どうせみんなうえ死にするに決まっているでしょう。
 だから二人の子どもを遠い森に連れ出して、置いてきぼりにするんだよ。
 運がよければ、わたしたちも子どもたちも助かるでしょう」
「それは、そうかもしれないが。・・・しかし、子どもたちをすてるなんて、おれにはとても」
「じゃあ、このまま四人とも死ぬかい? あたしはいやだよ、このまま死ぬのを待つなんて」
「・・・・・・」
 かなしいお話しですが、この時代にはよくこんな事がありました。
 食べ物がないために子どもを殺したり、わずかなお金で子どもを人買いに売ったりする親もいましたから、この両親はまだましな方かもしれません。

 さて、この二人の話を、となりのへやの子どもたちがすっかり聞いていました。
 とっくに寝ている時間ですが、なにしろお腹がペコペコだったので寝るに寝られなかったのです。
 妹のグレーテルが、かなしくてシクシクと泣き出しました。
「あたしたち、すてられてしまうんだわ。今夜きりで、家なしっ子になってしまうんだわ」
「グレーテル、泣かなくてもいいよ。ぼくがついているからね」
 兄のヘンゼルはグレーテルをなぐさめると、元気づけるように言いました。
「ぼくはね、たとえすてられても家に帰ってこれる、良い方法を考えたんだ」
 ヘンゼルはそう言うと、まどから外へ抜け出して、道に落ちている白い小石を集めました。

 次の朝、まだ夜が明けきらないうちに、お母さんが子どもたちを起こしました。
「今日は、森へ行きますよ。はい、これはおべんとう」
 お母さんはそう言って、小さなパンを一つずつわたしました。
「食事はこれっきりなんだから、食べたくてもお昼になるまでがまんするのですよ」
 四人はそろって、森へ出かけました。
 そのとちゅう、ヘンゼルは時々立ち止まって、自分の家を振り返りました。
 そしていま来た道をたしかめると、目印に昨日ひろった白い小石を一つずつ、こっそり落としていったのです。
 あまりたびたび立ち止まるので、お父さんが不思議に思ってたずねました。
「どうして、そんなに立ち止まるんだい?」
「うん、うちの家の屋根に白いネコが上がって、ぼくにさようならしてるんだもの」
 するとお母さんが、横から口を出しました。
「バカだね。あれは屋根にお日さまがあたって、チカチカ光ってるんだよ」

 そのうちに、四人は目的の場所へやってきました。
 ここは、深い深い森の中です。
「さあお前たち、小えだをたくさん集めておいで」
 子どもたちが小えだを集めると、お父さんが火を付けて言いました。
「寒くないように、たき火にあたって待っていなさい。お父さんとお母さんは、この近くで木を切っているからね。仕事がすんだら、よんであげるよ」
 二人の子どもがたき火にあたっていると、やがて少しはなれた所から、コツン、コツンと、木を切る音がしてきました。
 二人にはその音が、
♪お父さんは、ここだよ
♪お母さんも、ここにいるよ
と、歌っているように聞こえたので、少し安心しました。

 二人はお昼になって、パンを食べました。
 小さなパンは、あっという間になくなりました。
 コツン、コツンと木を切る音は、お昼も休まずに続いていました。
 たいくつした子どもたちは横になると、いつの間にかぐっすり寝込んでしまいました。
 そのうちに火が消えて寒さにふるえながら目を覚ますと、あたりはすっかり暗くなっています。
 ですが木を切る音は、まだ続いています。
 さびしくなった二人は、音をたよりに行ってみました。
 するとそれは木を切る音ではなくて、えだにぶらさげた丸太が風にゆられてぶつかる音だったのです。
「お父さーん」
「お母さーん」
 二人はよんでみましたが、なんの返事もありません。
 グレーテルは、声をあげて泣き出しました。
「あーん、あたしたち、とうとうすてられたんだわ」
 ヘンゼルは、妹をなぐさめて言いました。
「泣かなくても大丈夫だよ。ちゃんと帰れるから。お月さまが出るまで、待っておいで」
 やがて月が出ると、足元が明るくなりました。
 すると、どうでしょう。
 ヘンゼルが落としてきた白い小石が、月の光にキラキラとかがやきはじめたのです。
 二人はそれをたどりながら道を歩き、朝になる頃には家へ帰りました。
 お父さんもお母さんも、二人が帰ってきたのでビックリです。
「お前たち、帰ってきたんだね!」
「大丈夫だったか!」
 お父さんとお母さんは、二人の子どもを抱きしめました。
 二人とも森の中においてきた子どもの事が心配で、一晩中泣いていたのです。

 でも、食べ物がない事には変わりありません。
 お父さんとお母さんは自分たちの食べ物も子どもたちにやりましたが、もうげんかいです。

 数日後、お父さんとお母さんは、また子どもたちを別の森に連れて行きました。
 それがあまり急だったので、ヘンゼルは白い小石をひろうひまがありませんでした。
(どうしよう。何か目印になる白い物を落とさないと)
 そこでヘンゼルはおべんとうのパンを細かくちぎって、それを目印に道のところどころへ落としておきました。
 ところがこれは、失敗でした。
 おいてきぼりにされた二人が帰ろうとすると、目印のパンがなくなっているのです。
 月は前の時よりも明るくてらしているのに、パンはひとかけらも見あたりません。
「どうして?」
 それもそのはずで、昼のうちに森の小鳥たちがパンを食べてしまったのです。
 二人の子どもは、ついにまい子になってしまいました。
「どこへ行けばいいんだろう?」
 二人はあっちの道、こっちの道と、ひと晩中歩きまわりました。

 次の日も歩き続けましたが、二人は森から出られるどころか、どんどん奥へとまよい込んでしまったのです。
「どうしよう、森から出られないよ」
 その時、どこからかきれいな白い小鳥が飛んできて、二人の前をピヨピヨ鳴きながら、おいでおいでと尾っぽをふりました。
 二人が近づくと、小鳥は少し先へ行って、またおいでおいでをします。
「もしかして、ぼくたちをよんでいるのかな?」
 小鳥にみちびかれてしばらく行くと、そこには小さな家がありました。
 小鳥はその小さな家の屋根にとまっていましたが、二人が近づくと姿を消してしまいました。
「あれ、小鳥が消えちゃった。・・・それにしても、この家はいいにおいがするな」
「ヘンゼル! みてみて! この家、おかしで出来ているよ!」
「えっ? ・・・ほんとうだ!」
 おどろいた事にその小さな家は、全部がおかしで出来たおかしの家だったのです。
 屋根のかわらが板チョコで、まわりのかべがカステラで、まどのガラスが氷ざとうで、入り口の戸はクッキーと、どこもかしこもおかしでした。
 二人のお腹はペコペコだったので、ヘンゼルはまどガラスをはずしてガリガリと、グレーテルは屋根のかわらをはぎとってムシャムシャと食べました。
 すると家の中から、だれかの声がしてきました。
「だれだい、わたしの家をかじるのは?」
 クッキーの戸が開いて、中から年を取ったおばあさんが出てきました。
「きゃー!」
「わあー!」
 二人はビックリして、逃げ出しました。
 そんな二人を、おばあさんが呼び止めます。
「これ、お待ち。逃げなくてもいいよ。おばあさんは、一人でたいくつしていたところなんだ。さあ、お家へお入り。中にはミルクでもココアでも、ミカンでもリンゴでも、何でもあるよ」
 それを聞いて、二人はほっとしました。
「なんだ、しかられるんじゃなかったのか」
「よかったわ」
 二人が家へ入ると、おばあさんは飲み物や果物をたくさん出してくれました。
 それに気持ちよさそうな子ども用のベッドも、二つならべてありました。
「さあ、どんどんお食べ。おかわりはたくさんあるからね」
 二人は飲むだけ飲んで食べるだけ食べると、ベッドへもぐって寝てしまいました。
 おばあさんは子どもたちの寝顔を見ると、ニヤリと笑いました。
「ヒッヒヒヒ、どっちの子から食べようかね。ひさしぶりに、おいしいごちそうにありつけるよ」
 なんとおばあさんは、人食いの魔女だったのです。
 白い小鳥で子どもたちをおびきよせ、おかしの家をおとりに待ちぶせていたのです。

 朝になると、おばあさんはヘンゼルを大きな鳥かごに放り込んで、戸にかぎをかけてしまいました。
 それから、グレーテルをたたきおこして、
「いつまで寝ているんだい! さっさと水をくんで、うまいごちそうをこしらえるんだよ! お前の兄さんに食べさせて、太らせるんだからね。こんなにやせてちゃ、まずくて食えないからね」
と、どなりつけました。
 かわいそうにグレーテルは、兄さんを太らせる料理を作らなければならないのです。

 しばらくたったある日、おばあさんはヘンゼルを入れた鳥かごにやってきて言いました。
「どうだいヘンゼル、少しは太ったかい? さあ、指を出してごらん」
 おばあさんは目が悪いので、あまりよく見えなかったのです。
 そこでヘンゼルは指の代わりに、スープのだしがらの鳥の骨を出しました。
 おばあさんは、その骨を指だと思って、
「やれやれ、まだそれっぽっちか。これじゃあ、もっともっと料理をふんぱつしなくちゃね」
と、言いました。
 しかしいくら料理をふんぱつしても、ちっともききめがありません。
 おばあさんは、とうとう待ちきれなくなりました。
「ああ、もうがまんが出来ないよ。やせっぽっちのガリガリだろうと、かまうもんか。今すぐ大なべにぶちこんで、食ってやるよ。さあグレーテル、急いで大なべに水を入れな。水を入れたら、火をたくんだよ」
 悲しい事に、グレーテルはお兄さんを料理するために、火をたかなければなりません。
 グレーテルは、しくしくと泣き出しました。
(こんな事なら、森の中でオオカミに食べられて死んだほうがましよ。それだったら、兄さんといっしょに死ねたのに)
「グレーテル! なにをぐずぐずしてるんだね。さっさと火をたきな!」

ヘンゼルとグレーテルと魔法使い

 おばあさんが包丁(ほうちょう)をとぎながらどなりますが、いくらどなられてもこんな事は悲しすぎて、てきぱきと出来ません。
 グレーテルがいつまでものろのろやっているので、おばあさんはすっかり腹を立てました。(召使いにしようと思ったけど、こんな役立たずじゃ使えないね。ついでに食べてしまおうか)
 ちょうどパン焼きがまの火が燃えていたので、おばあさんはグレーテルに言いつけました。
「ほかの事はいいから、パンが焼けるかどうか、かまどの中へ入って火かげんを見ておいで」
 おばあさんはグレーテルをかまどで丸焼きにして、頭からガリガリ食べるつもりだったのです。
 グレーテルは、すぐにそれに気がつきました。
 そこで、わざと首をかしげると、
「かまどには、どうやって入るのかわからないわ」
と、言いました。
「本当に、お前はバカだねえ。こうやってちょっと体をかがめりゃ、だれだって入れるじゃないか」
と、おばあさんは、かまどの入口へ頭をつっこんで見せました。
(今だわ!)
 するとグレーテルは、おばあさんを力まかせに後ろから突き飛ばしました。
「うぎゃぁぁぁーー!」
 かまどに転げおちたおばあさんは、カミナリが落ちてきたかと思うほどのさけび声をあげると、そのまま焼け死んでしまいました。
 グレーテルは、鳥かごに閉じ込められたヘンデルのところへかけよりました。
「兄さん! 魔女はやっつけたわ! あたしたち、助かったのよ!」
「ほんとうかい! ありがとう、グレーテル」
 やっと鳥かごから出る事が出来たヘンゼルは、妹を抱き寄せて泣いて喜びました。

 さて、持ち主のいなくなったおかしの家の中には、ダイヤモンドやしんじゅなど、たくさんの宝物がしまってありました。
 ヘンゼルとグレーテルは、それをポケットに詰め込めるだけ詰め込みました。
 そして二人は何日もかかって、ようやく自分たちの家へと帰ったのです。

「お父さーん! お母さーん! ただいまー!」
「ヘンゼル!」
「グレーテル!」
 ヘンゼルとグレーテルの姿を見て、お父さんとお母さんは涙を流して喜びました。
「ごめんよ、ほんとうにごめんよ。もう決して、お前たちをすてたりはしないからね」
 お父さんがあやまると、お母さんも泣きながら言いました。
「お前たち、悪いお母さんをゆるしてね。お前たちがいれば、食べ物がなくてもかまわないわ。うえて死ぬ時は、四人一緒だよ」
 見るとお父さんもお母さんも、すっかりやせこけていました。
 二人ともすててきた子どもたちの事が悲しくて、あれからひとかけらのパンものどを通らなかったのです。
「お父さんも、お母さんも、やせたねえ」
 ヘンゼルはそう言って、グレーテルに目で合図をしました。
 そして二人はポケットに入れていた物を取り出して、ニッコリほほえみました。
「でもだいじょうぶ。これで、すぐに太れるよ」
 お父さんもお母さんも、二人が取り出した宝物を見てびっくりです。

 それから四人は、おかしの家から持って帰ってきた宝物で幸せに暮らしました。

おしまい

→ おてがるバージョン ヘンゼルとグレーテル

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