| 
      
       | 
      | 
     
        福娘童話集 >お月見・十五夜特集 >月の中のウサギ 
         
      お月見のお話 第 3 話 
       
        
      イラスト Smile STATION 
       
月の中のウサギ 
ジャータカ物語 → ジャータカ物語の詳細 
      
       
      
      
       むかしむかし、ウサギには三匹の友だちがいました。 
 サルと、山イヌと、カワウソです。 
 ある日の事、ウサギはふと、明日が精進日(しょうじんび)である事に気がつきました。 
 精進日というのは、仏さまの教えを守って身を清め、困っている人にほどこしをする日の事です。 
「明日、困っている人がきたら、せいいっぱい助けてあげよう」 
 みんなはウサギの意見に賛成して、家に帰りました。 
 次の日の朝、カワウソは食ベ物を探しに、ガンジス川の岸までおりていきました。 
 ちょうどその時、一人の漁師が七匹のコイをつかまえて草の中にかくし、もっと下の方へと出かけていったあとでした。 
「おや? この魚は、だれの物だい? 持っていくよ」 
 カワウソは三ベんよんでみましたが、返事がありません。 
 そこで、だまってもらってくる事にしました。 
 山イヌも、食ベ物を探しにいきました。 
 山道を進んでいると、畑の番人の小屋から、肉や牛乳のにおいが流れてきます。 
「おや? この食ベ物は、だれの物だい? 持っていくよ」 
 山イヌは三ベんよんでみましたが、だれも現れません。 
 そこでやっぱり、もらっていく事にしました。 
 サルも森へいって、マンゴーの実をたくさん集めてきました。 
 ところがウサギは、何も見つける事ができませんでした。 
 貧乏なので、家にはゴマも米も、何もありません。 
「どうしよう、せっかくの精進日なのに。・・・そうだ、もしだれかが食ベ物をもらいにきたら、わたしはその人に自分の肉をあげよう」 
 さて、このウサギたちの事を知った天上に住む神さまは、みんなの心をためしてやろうと思いました。 
 そこで神さまはお坊さんに姿を変えて、まずカワウソの家にやってきました。 
 するとカワウソは、 
「さあ、お坊さま。今日は精進日です。どんどんめしあがってください」 
と、コイ料理をすすめました。 
 次に訪ねた山イヌの家では、畑の番人のところからとってきた肉や牛乳を出されました。 
 そして次に訪ねたサルの家では、マンゴーと冷たい水を出されました。 
 そして最後にウサギの家に行くと、ウサギはお坊さんに言いました。 
「今日は精進日です。ほどこしをしたくて、あちこちかけ回ったのですが、ごちそうは手に入りませんでした。そこで今日は、わたしを召し上がってください。けれど、お坊さまであるあなたがわたしを殺してしまえば、いましめを破ることになります。そこですみませんが、火をおこしてください。そうしたら、わたしは自分で火の中に飛びこみましょう。焼けた頃に取り出して、召し上がってください」 
 神さまが火をおこすと、ウサギは火の中へ飛びこみました。 
 ところが火の中へ身を投げたというのに、ウサギはやけどひとつしません。 
「あれ? おかしいな」 
 ふしぎがるウサギに、神さまがいいました。 
「信仰心(しんこうしん)のあつい、かしこいウサギよ。おまえの徳(とく→よい行い)が、のちの世の人にかたりつがれるよう、記念をしておこう」 
 神さまはそういって、大きな山をつぶし、そのしぼった汁で、月の表面にウサギをえがきました。 
 その時から、月にはウサギの姿が浮かぶようになったという事です。 
 
※ 日本にも、同じようなお話しがあります。 → お月さまに行ったウサギ 
      おしまい 
         
         
        | 
      | 
    
       |