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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 小槌(こづち)の柄(え) 
      2008年 12月30日の新作昔話 
          
          
         
  小槌(こづち)の柄(え) 
  大分県の民話 → 大分県情報 
      
       むかしむかし、大分のある田舎に、仕事もしないで遊んでばかりいる男がいました。 
         ある日の事、男が木陰で寝ていると、働き者のアリがやってきて言いました。 
        「お前、そうして寝ていても、食べる物は集まらんじゃろう。早く起きて働け」 
         すると男は、 
        「ばか言え、こんなに暑いのに、働くなんてごめんじゃ」 
         男がそう言うと、アリはしばらく考えてから、こう言いました。 
        「そんなら、ええことを教えてやろう。この山奥のお宮さんに、大黒さんがいる。その大黒さんは、振れば何でも欲しい物が出る打出(うちで)の小槌(こづち)という物を持っておるから、それを借りて来たらどうじゃ。そうすれば、働かんで食えるぞ」 
        「おおっ、振るだけで何でもか! そいつはありがたい」 
         男は起き上がると、喜んで大黒さんのところへ行きました。 
         そして、 
        「大黒さん、大黒さん、打出の小槌とやらをわしに貸してくれんか。それで食い物を出そうと思うんじゃ」 
        と、頼みました。 
         すると大黒さんは、 
        「貸してやってもええが、あいにく小槌の柄が折れとってのう。その柄は普通の物では役に立たん。握るところがくぼんで黒光りするような、使い込んだクワの柄でなければならんのじゃ」 
        と、言うのです。 
         男はそれを聞くと、その日から毎日毎日クワを握って、 
        「まだ、くぼまんか。まだ、くぼまんか」 
        と、言いながら、畑仕事を始めたのです。 
         こうして一年たち、二年たちと、何年もまじめに働いているうちに、食べ物がだんだんと家にたまってきたのです。 
         ある日のこと、大黒さんが山からおりてきて、 
        「くぼんで黒光りする柄は、まだ出来んのか? 出来たらすぐに、打ち出の小槌を貸してやるぞ」 
        と、言いました。 
         すると男は、 
        「ああ、大黒さん。柄はまだ出来んが、まじめに働いたおかげで、家にはこんなに食べ物がたまった。それに、働くのが楽しくなった。だからもう、小槌はいらんようになった」 
        と、言いました。 
         するとそれを聞いた大黒さんは、にっこり笑って、 
        「そうか。それはめでたい。どうやらお前の心に、立派な打ち出の小槌が出来たようだな。これからもまじめにクワを振れば、欲しい物は何でも出てくるようになるぞ」 
      と、言って、山に帰って行ったそうです。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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