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1月3日の日本の昔話
百姓じいさんとテング
老阿伯摎天狗
・日本語 ・すぺいんご(espanol) ・客家語
・日本語&客家語 ・にほんご(japones) ・ すぺいんご(espanol)
客家語 : 鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、百姓(ひゃくしょう)のおじいさんが、ウマを連れて歌いながら山道を歩いていました。
頭擺頭擺,有一個耕種个老阿伯牽等一條馬,一片唱歌仔一片順山路緊行。
♪ 心楽しや
♪ 快樂
♪ 山坂行けば
♪ 若係去山排
♪ ウマの鈴までこだまする
♪ 連馬鈴聲都會應聲
♪ エーイソラ ホイホイ
♪ e~isora hoi hoi
すると向こうの方から、ズシンズシンと大きな足音を立てながら、大テングがやって来ました。
緊行緊行,怱然間有一種當大个脚步聲zushin zushin在對面傳過來,大天狗來了。
その大テングの鼻ときたら、おじいさんの腕ほど長くて大きく、顔ときたら、塗り立ての神社の鳥居
より、まっ赤です。
講著大天狗个鼻空,就像老阿伯个手脾恁長恁大,講著大天狗面,比神社个鳥居塗个紅色還較紅个大色。
大テングとおじいさんは、細い山道でぶつかりました。
大天狗摎老阿伯在細細條个山路項相堵頭。
「こら、じいさま。道をよけろっ!」
「噯!老貨仔!借過!」
大きな声の大テングに、おじいさんは負けじと、
雖然天狗恁大聲講,老阿伯也無半滴驚佢,應講:
「よけろと言うたって、ここはおらが道じゃ。おまけに、おらこの通り、ウマと二人連れじゃ。お
がよけろ」と、大テングを睨みつけます。
「喊𠊎分你先過?!這條路毋單淨係𠊎,還摎馬共下行。你愛讓路正著。」,目盯盯看等大天狗。
「ヒヒ、ヒヒーン!」
「hi hi、hi hi~n!」
ウマもないて、おじいさんの応援です。
馬也大聲噦,摎老阿伯𢯭手。
「このじじいめ。つべこべぬかすと、つまんで食うてしまうぞー!」
「這個老貨仔,還愛硬詏,等下捉來食食忒佢!」
「そうかい。おらもこの年、食われて死ぬのは怖くないが、お前に食われる前に、一つ見たいんじゃ」
「係無?𠊎食到恁多歲咧,分你食忒也不會驚,毋過分你食忒以前想愛看一隻東西。」
「何じゃい、それは」
「麽个,哪隻東西?」
「テングは、誰でも術という物を使うそうじゃが、本当かいのう」
「大家都傳說天狗會法術,毋知有影無?」
「ワハハハハッ。わしはこれでも、テングの頭じゃ。術ぐらい使えんでなんとする」
「哇哈哈哈!𠊎係天狗王呢!連法術又毋曉還愛做麽个天狗王!」
「そうかい。テングいう物は、どこのテングでも天まで大きゅうなれるというが、お前さまは、な
るかね」
「係哦,聽講天狗這東西,無論那隻天狗都會變到堵天恁大,毋知你會無?」
「天まで大きゅうなる? そんな事が出来んで、どうなる」
「大到堵天?連這又做毋到還愛做麽个正好!」
「そうかのう。じゃあ、おらが食われる前に、ちょっくら見せてもらおうか。あの世への話の種と
うもんじゃ」
「有影無?!該恁仰好啦,𠊎分你食忒以前變分𠊎看做得無?流傳萬世。」
「よし。よう見とれっ」
「好!看較真兜!」
そこで大テングは鼻を上に向けて、ゴォーーッと息を吸い込みました。
大天狗頭那臥起來鼻孔向往上,go~聲吸一口大大个氣。
すると、グングングングン、大テングの背が伸びて、とうとう雲を突き抜けてしまいました。
過後gun gun gun gun,大天狗變大,緊來緊高續等穿過雲。
そこでおじいさんはニヤリと笑い、いかにも感心した様に言いました。
所以老阿伯笑微微,非常佩服樣,講:
「テング様、テング様。ようわかったから、元に戻って下され」
「天狗先生,天狗先生,了解咧,變轉原來恁大。」
すると大テングは、シューッと息を吐いて、元の大きさに戻りました。
過後,大天狗斯jiu~聲,摎氣敨出來,變轉原旦恁大仔。
「どうじゃ、じいさま。ビックリしたろう。さあ、食うてやるか」
該介條天狗對老阿伯講:
「仰般!老貨仔,嚇著了呵?好咧!做得摎你食忒吂?」
と、手を伸ばす大テングに、おじいさんはカラカラと笑って、
老阿伯對該條手伸長長个大天狗哈哈大笑講:
「そんな事言うても、テング様が天まで大きゅうなるのは、どこのテング様でもやる事でねえか。
「該隻事情係恁樣無毋著,你會變堵天恁大,毋過滿哪仔个天狗乜會變,敢毋係?
前様は、さっきテングの頭と言うたが、いくら頭でも小そうなるこたぁ出来まい」
你頭先講過你係天狗王,可能無辦法摎頭那變細。」
「なにっ。わしは日本一のテングじゃ。大きゅうばかりなれて、小そうはなれん、そんなケチなテングじゃないわい。見とれ。今見せてやるわ」
「麼个啊!𠊎係日本第一等个天狗,毋係單淨會變大毋會變細个毋壁天狗。看好,𠊎變分你看哪仔!」
大テングはそう言うて、フーッと息を吐き出しました。
天狗講阿煞、fu聲敨下氣,
するとドンドン小さくなっていって、おじいさんの小指ほどになってしまいました。
斯慢慢仔緊變緊細,像老阿伯个手指尾恁大仔定定。
そこでおじいさんは、ヒョイと大テングを手の平に乗せて、
過後,老阿伯忽然間摎大天狗捉起來放到手巴掌。
「よう。もっと小さく、もっと小さく。そうそう」
「哦!再過較細!再過較細!係恁樣,就係恁樣。」
ついに大テングは、豆粒の様に小さくなってしまいました。
包尾大天狗變到像一粒豆仔恁大仔。
「かかったな」
「好勢咧。」
おじいさんは大テングをつまむと、ポイと口の中ヘ放り込んで、ゴクンと飲み込んでしまいました。
老阿伯摎大天狗捉起來,輕輕仔放落嘴肚gud lud聲吞落肚屎肚去。
そして、
過後,
♪ そよら そよらと ♪ たてがみなでて ♪ 吹くや春風 里までも ♪ エーソラ ホイホイ
♪ 青青个天下背 ♪ 緊挲馬个鬃毛 ♪ 柔柔个春風 送到村莊 ♪ e~sora hoi hoi
歌いながらウマを引いて、家の方へ帰って行きました。
包尾佢就一片唱歌一片牽等馬,行轉屋下去。
おしまい
煞咧
註:
お百姓(ひゃくしょう)ともよばれる人たちで、畑や田んぼで農作物を育てて暮らしていました。
百姓:耕田、耕園種農作物過日仔个人。
江戸時代の人々のほとんどが農民で、ほとんどの農民が貧しい暮らしをしていました。
江户時代个人,大部份係耕種人,佢兜大部份日仔過著盡苦。
貧しいながらもたくましい性格で、農民が主人公の昔話も数多くあります。
雖然苦,毋過性格硬頸、身體紮磳, 所以用耕種人做主角个故事盡多。
鳥居: とりいとは、神社の参道入口に立てて神域を示す一種の門で、左右2本の柱の上に笠木(かさぎ)をわたし、その下に柱を連結する貫ぬきを入れたものです。
鳥居:在神社參拜个路口,表示神社个地界个一種門,左片、正片二支楯仔頂高架兩支橫木連接下背二支楯仔。
伊勢神宮や鹿島神宮の神明鳥居を基本として、明神鳥居・山王鳥居・三輪鳥居・両部鳥居などがあります。
伊勢神宮摎鹿島神宮个神明鳥居為基本,後來正做明神鳥居、山王鳥居、三輪鳥居、兩部鳥居。
昔は、お金持ちが祈願達成のお礼に、神社へとりいを寄進(きしん)したという話があります。
頭過、為著願望達成包紅包答謝神明,捐錢起鳥居个故事盡多。
天狗: 天狗(てんぐ)とは、深山に棲息するという想像上の怪物で、人のかたちをし、顔赤く、鼻高く、翼があって神通力をもち、飛行自在で大風を起こすうちわをもっています。
天狗:人類想像戴在深山肚个怪物、人个樣相、紅面、鼻孔高高、有生翼又有法術,做得手拿 扇仔,滿天飛來飛去撥出大風來。
天狗のなかまには、カラスの顔をした、カラス天狗もいます。
天狗个朋友裡肚也有烏鴉面个烏鴉天狗。
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