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2月12日の日本の昔話
金の持ち主
錢个主人
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福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
ある日、庄屋(しょうや)さんが道を歩いていると、大きな袋が落ちていました。
有一日,村長在路上行个時節,看著毋知麽人跌忒个大袋仔,
中を見ると、小銭がザクザクと入っています。
看一下袋肚,裝盡多銀角仔,
ざっと見ただけでも、二千枚はありそうです。
大約有二千個樣。
「これは、えらい落とし物だ。落とし主は泣いとるじゃろう」
「這係貴重東西,跌忒个人這下怕當當在該噭敢?」
と、庄屋さんは家に持って帰り、村に知らせの者をやりました。
村長拿轉屋下去,通知各村民。
するとさっそく現れたのが、吾助(ごすけ)と兵六(ひょうろく)です。
過無幾久黏時就有二儕出現,係吾助摎兵六。
二人とも
二儕都講:
「おらのだ」
「係𠊎个。」
「いや、おらのだ」
と、言うのです。
「毋係,係𠊎个。」
袋を隠して、二人の前に出た庄屋さんは、
村長摎袋仔囥起來,行到二儕面前講:
「落としたお金の事を、詳しく話しておくれ」
と、言いました。
「請摎跌忒錢个事情詳細講分𠊎聽。」
するとまずは、吾助が、
吾助先講:
「へえ、あのお金は、おらが貧しい中から一文、二文と、つぼにコツコツ貯めた物だ。だども、おっかあが病気になったで、町へ医者さ呼びに行くのに袋に入れて持って行く途中だったべ」
「he~,該兜錢係自𠊎窮苦該量時到這下辛辛苦苦,一錢一錢存在錢笐肚,堵好,𠊎姆人毋好,去街路請先生來看,歸袋錢在半路跌忒。」
これを聞いていた兵六が、
聽到恁樣,兵六就講:
「うそをつけ! この盗っ人(ぬすっと→泥棒)が。あれはおらがつぼに貯めた金だ。一生懸命に貯めたが、今日、つぼを見ると空っぽになってた。きっとこいつが盗んで袋に入れて行こうとしたに違いねえ、庄屋さん、こいつはとんでもねえ奴でごぜえます。第一、こんな貧乏人に金が貯められるわけねえ」
「講耗漦!這个賊仔,該係𠊎存在錢笐个錢。拚死命煞猛牯賺个,今晡日看到錢笐空空,定着係分佢偷去用袋仔背走無毋著。村長大人,這个小人講个非常無合理,第一、像佢恁窮苦个人仰可能存恁多錢哪?」
二人の話を聞いた庄屋さんは、
村長聽過兩儕个話以後就講:
「そうか。ところで吾助に兵六。なくしたお金は、何枚ぐらいじゃった?」
「係無?毋過吾助、兵六你二儕毋見忒个錢大約有幾多隻?」
「それが、数えた事がねえから・・・。だども、つぼの首まではあっただ」
「因為無詳細去算過...,毋過、錢笐頸恁淰。」
「おらもはっきりとは。だども、きっちりつぼの首のところまで貯まっただ」
「𠊎 乜無麼个清楚,毋過、堵堵貯到錢笐頸恁淰。」
二人とも、ちゃんとは答えられません。
二儕都無講出確實个數目。
そこで庄屋さんは、
所以村長又講:
「わしが見たところ、千枚はあったが。そんじゃ一つ、お前さん方のつぼに入れてきっちり首まで入った方が本当の持ち主という事になるな。よし、二人とも、つぼを取りに帰っておいで」
「𠊎看有一千個,無恁樣好啦!你二儕轉去摎錢笐拿來,錢放落去堵堵好裝淰到頸根个人就係佢个。好,兩儕都轉摎錢笐拿來。」
二人はさっそく家に帰り、めいめい、つぼをかかえて戻って来ました
兩儕遽遽轉去屋下,各儕揇等錢笐倒轉來。
ところが吾助のつぼは、何とも大きなつぼです。
毋過吾助个錢笐特別大。
「庄屋どん、吾助の奴は欲深じゃて。あんなにでっけえ、つぼさ持って来て」
「村長,吾助該個人還貪心哦!拿隻恁大个錢笐來。」
と、得意そうに差し出した兵六のつぼへ、庄屋さんはお金をザラザラッと入れますと、たちまちお金はあふれてザクザクと畳の上へ落ちました。
兵六講:
續等就沙鼻摝天拿出錢笐,村長摎錢嘩啦倒落去,一下仔就湓出來,錢叮叮噹噹跌到榻榻米頂。
青くなる兵六に庄屋さんは、
村長摎面青忒个兵六講:
「兵六、金は首のところまで貯まっていたのでは、なかったかのう?」
「兵六你毋係講存个錢有到錢笐頸根恁多,毋係嘎?」
「・・・・・・」
「......」
続いて吾助のつぼに入れかえると、ピッタリ首のところまで入りました。
續等換張在吾助个錢笐,堵堵好裝到頸根該位。
「このお金は吾助の物じゃ。
「這兜錢係吾助个,
お金は本当は二千枚あったんじゃが、千枚と言うたら、うそをついておる者が千枚くらい入るつぼを探して持ってくるじゃろうと思うたんじゃ。
錢實在有二千個,𠊎詐意講一千個,𠊎心肝肚想該講耗漦儕,會拿裝一千個落个錢笐來。
こら、兵六!
噯,兵六!
悪い事は、もう二度とするでないぞ。
下二擺毋好再過做壞事!
それから吾助、こんな大事な物、もう落とさんように気をつけるのじゃぞ」
吾助,從今以後恁重要个東西,愛注意毋好再過跌忒。」
こうしてお金は無事に、持ち主の吾助のところに戻りました。
恁樣,錢總下物歸原主,轉到吾助手上去。
おしまい
煞了
註:庄屋(しょうや)とは、昔話によく出てくる役柄で、江戸時代、領主が村民の名望家中から命じて、一村または数村の納税その他の事務を統轄させた村落の長で、簡単に言えば村長です。
畿内西国方面では庄屋、東国方面では名主(なぬし)と呼ぶことが多いようです。
註:庄屋:傳說故事中常出現之職務,江户時代,各領主會指定村民裡肚較有名望人管理一村也係幾村个稅務摎其他事務,這個人簡單講就係村長。
畿內西國係村長(庄屋) ,東國方面係里正(名主) 。
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