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12月6日の日本の昔話

貧乏神

貧乏神のわらじ

日本語(日语)  ・中国語(中文) ・日本語(日语)&中国語(中文)

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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読

【大人も子供も眠れる睡眠朗読】★音質改善版★ ぐっすり眠れる日本昔話集 元NHKフリーアナ 読み聞かせ

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投稿者 「ちょこもち」  ちょこもち

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制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】

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投稿者 「癒しの森っ子

♪音声配信(html5)
音声 ZAN

♪音声配信(html5)
音声 ヤマネコギン

 むかしむかし、藤兵衛(とうべえ)というお百姓(ひゃくしょう)がいました。
 毎日毎日がんばって働くのですが、いくら働いても暮らしは楽になりません。
 そのうちに、子どもたちに食べさせる物もなくなっていました。
「ああ、腹がへったよう」
「おっかあ、何かないの?」
「腹がへって、眠れないよ」
 子どもたちにねだられても、家にはイモ一つありません。
「みんな、よく聞いてくれ」
 藤兵衛は子どもたちを集めると、悲しそうな顔で言いました。
「今まで一生懸命に働いてきたが、暮らしは悪くなる一方で、この冬をこせるかどうかもわからん。そこで、この土地をすててどこかよそで暮らそうと思うんだが」
「おっとう、それは夜逃げか?」
「まあ、そういう事じゃ。今出て行くと人目につくで、明日の朝早くに行こうと思う」

 その夜、藤兵衛が夜中に起きて便所に行こうとすると、納屋(なや→物置)からゴソゴソと音が聞こえてきました。
(何じゃ? ドロボウか? 今さら取られる物もないが)
 藤兵衛が見に行くと、納屋に見知らぬ老人がいました。
「誰じゃ、お前は?」
「おや、まだ起きとったか? わしは、貧乏神(びんぼうがみ)じゃ」
「び、貧乏神じゃと?」
「そうじゃあ、長い事この家にいさせてもろうた」
「そ、それで、その貧乏神が、こんなところで何をしている?」
「何って、お前ら、明日の朝早くにここから逃げ出すんだろう? だからわしもいっしょに出かけようと思って、こうしてわらじをあんどったんじゃあ」
 そう言って貧乏神は、あみかけのわらじを見せました。
「それじゃ、お前もついて来るつもりか?」
「そういう事じゃ」
「・・・・・・」
 藤兵衛は家に戻ると、おかみさんを起こしました。
「おい、起きろ! 大変じゃ!」
「うん? どうしたね」
「それがな、貧乏神が家の納屋におるんじゃ」
「貧乏神が? それで、いくら働いても暮らしが楽にならんかったんか」
「そうじゃ」
「でも、わたしたちはこの家を出て行くんだから、もうどうでもええよ」
「それが、違うんじゃ! 貧乏神のやつ、わしらについて来ると言うんだ!」
「えっー! それなら、夜逃げをしても同じじゃないの」
「ああ、そう言う事だ」
 二人はがっかりして、夜逃げをする元気もなくなってしまいました。

 次の日の朝、貧乏神は新しいわらじを用意して、藤兵衛一家が出発するのを待っていましたが、いつまでたってもみんな起きてきません。
「おそいなあ。もうすぐ日が登るのに、どないしたんだろう?
 確か、今朝夜逃げするはずだが、もしかすると明日だったかな?
 まあ、いい。
 それなら明日まで、わらじをあんでおこうか。
 どこに行くかは知らんが、わらじはよけいある方がええからな」
 貧乏神は納屋に戻ると、せっせとわらじをあみ出しました。

 しかし次の日も、その次の日も、藤兵衛一家は家を出て行く様子がありません。
 貧乏神は毎日わらじをあみ続けていましたが、そのうちにわらじ作りが楽しくなって、いつの間にか納屋の前にはわらじの山が出来ました。
 こうなるとそのうち、わらじをわけてほしいという村人がやって来ました。
 すると貧乏神は、気前良くわらじをわけてあげました。
「さあ、どれでも好きな物を持っていきなされ」
「すまんのう」
「ありがたいこっちゃあ」
 村人は次々とやってきて、大喜びでわらじを持って帰りました。
 それを見た藤兵衛は、良い事を思いつきました。
「そうじゃ。あのわらじを売ればいいんじゃ」
 さっそく藤兵衛は貧乏神のあんだわらじを持って、町へと売りに行きました。
「さあ、丈夫なわらじだよ。安くしておくよ」
 すると貧乏神のわらじは大人気で、飛ぶように売れました。
 けれどやっぱり、暮らしは楽になりません。
「やっぱり貧乏神がいては、貧乏から抜け出せんなあ。
 こうなったら何とかして、貧乏神に出て行ってもらおう」
 藤兵衛はわらじを売ったお金でお酒やごちそうを用意して、貧乏神をもてなしました。
「貧乏神さま、今日はえんりょのう食べて、飲んでくだされ」
「これはこれは、大変なごちそうじゃなあ」
「はい、貧乏神さまがわらじをあんでくださるおかげで、たいそう暮らしが楽になりました。ささっ、これも食べてくだされ。これも飲んでくだされ」
「そうかそうか。それじゃ、よろこんでいただくとしようか」
 貧乏神はすすめられるままに、飲んだり食べたりしました。
 そのうちに、すっかり酔っぱらった貧乏神は、藤兵衛にこう言いました。
「いや~、すっかりごちそうになってしもうた。・・・しかし、こんなに暮らしが良くなっては、わしはこの家におれんな。今まで世話になったが、もう出て行くわ」
 そして貧乏神は自分で作ったわらじをはいて、家から出て行ったのです。
 藤兵衛とおかみさんは、顔を見合わせて大喜びしました。
「出ていった。出ていったぞ! これでわしらも、やっと楽になれるぞ」
「よかった、よかった」
 藤兵衛一家は、安心してグッスリ眠りました。
 ところが次の朝、藤兵衛が納屋に行ってみると、出て行ったはずの貧乏神がいびきをかいて寝ているのです。
「ま、まだいたのか!」
 貧乏神は、藤兵衛を見てニッコリ笑いました。
「おはようさん。出て行こうと思ったが、やっぱりここが一番住みやすいからな。これからも、よろしく」
 藤兵衛はすっかり力をなくして、その場にへたりこんでしまいました。

 でも、それからも貧乏神はわらじを作り続けたので、藤兵衛はそのわらじを売って、貧乏ながらも食うにはこまらない生活を送ることが出来たそうです。

おしまい

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