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福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 12月の日本昔話 > 貧乏神のわらじ

貧乏神

貧乏神のわらじ
穷神的草鞋

翻訳者:中国広東外語外貿大学 陳怡彤

日本語(日语)  ・中国語(中文) ・日本語(日语)&中国語(中文)

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 「ちょこもち」  ちょこもち

♪音声配信(html5)
音声 ZAN

 むかしむかし、藤兵衛(とうべえ)というお百姓(ひゃくしょう)がいました。
 很久很久以前,有个叫藤兵卫的农民。

 毎日毎日がんばって働くのですが、いくら働いても暮らしは楽になりません。
 虽然每天都努力工作,但是无论怎么工作生活还是很艰辛。

 そのうちに、子どもたちに食べさせる物もなくなっていまいました。
 不久,连给孩子们吃的东西也没有了。

「ああ、腹がへったよう」
“啊啊,肚子饿了呀。”

「おっかあ、何かないの?」
“妈妈,有没有什么可以吃的呀?”

「腹がへって、眠れないよ」
“肚子饿了,睡不着啊”

 子どもたちにねだられても、家にはイモ一つありません。
 无论孩子们如何缠闹,家里连一个薯也没有。

「みんな、よく聞いてくれ」
 藤兵衛は子どもたちを集めると、悲しそうな顔で言いました。
“大家好好听我说”
 藤兵卫把孩子们聚集在一起,脸上浮现悲伤的表情说道。


「今まで一生懸命に働いてきたが、暮らしは悪くなる一方で、この冬をこせるかどうかもわからん。そこで、この土地をすててどこかよそで暮らそうと思うんだが」
“一直以来都拼命工作,但生活得越来越差,也不知道能不能度过这个冬天。因此,我想舍弃这一片土地,去别的地方生活”

「おっとう、それは夜逃げか?」
“孩子他爸,那我们要连夜逃走吗?”

「まあ、そういう事じゃ。今出て行くと人目につくで、明日の朝早くに行こうと思う」
“总之,是这么回事。现在出去的话会引人注目,想着明天早上早点出发”


 その夜、藤兵衛が夜中に起きて便所に行こうとすると、納屋(なや→物置)からゴソゴソと音が聞こえてきました。
 当天晚上,藤兵卫半夜起来正要去厕所的时候,听到从仓库里传来了“噶撒嘎撒”的声音。

(何じゃ? ドロボウか? 今さら取られる物もないが)
(这是怎么回事?是小偷吗?但我家现在也没什么值得被人偷的东西了)

 藤兵衛が見に行くと、納屋に見知らぬ老人がいました。
 藤兵卫去查看的时候,发现仓库里有一个陌生的老人。

「誰じゃ、お前は?」
“什么人、你是谁?”

「おや、まだ起きとったか? わしは、貧乏神(びんぼうがみ)じゃ」
“哎呀,你还醒着吗?我是穷神啊”

「び、貧乏神じゃと?」
“你说是你是穷、穷神吗?”

「そうじゃあ、長い事この家にいさせてもろうた」
“对啊,我待在这个家里都好长时间了”

「そ、それで、その貧乏神が、こんなところで何をしている?」
“那、那个,那穷神在这种地方做什么?”

「何って、お前ら、明日の朝早くにここから逃げ出すんだろう? だからわしもいっしょに出かけようと思って、こうしてわらじをあんどったんじゃあ」
“做什么?你们明天早早是要从这里逃出去吧?所以我也想一起出去,就这样编好了草鞋呀”

 そう言って貧乏神は、あみかけのわらじを見せました。
 穷神这样说着,露出了编好的草鞋。

「それじゃ、お前もついて来るつもりか?」
“这么说、你也打算跟着来吗?”

「そういう事じゃ」
“没错”

「・・・・・・」
“・・・”

 藤兵衛は家に戻ると、おかみさんを起こしました。
 藤兵卫回到家,把妻子叫了起来。

「おい、起きろ! 大変じゃ!」
“喂,快起来!不好了!”

「うん? どうしたね」
“嗯?怎么了?”

「それがな、貧乏神が家の納屋におるんじゃ」
“就是,穷神在我们家的仓库里啊。”

「貧乏神が? それで、いくら働いても暮らしが楽にならんかったんか」
“穷神?所以,我们家无论怎么工作生活都不会好过是吗”

「そうじゃ」
“是的”

「でも、わたしたちはこの家を出て行くんだから、もうどうでもええよ」
“但是,我们要离开这个家了,所以已经这都无所谓了吧”

「それが、違うんじゃ! 貧乏神のやつ、わしらについて来ると言うんだ!」
“不是这样子的!穷神那家伙,说要跟着我们走!”

「えっー! それなら、夜逃げをしても同じじゃないの」
“啊!那样的话,连夜逃走不也一样吗?”

「ああ、そう言う事だ」
“啊啊,正是如此”

 二人はがっかりして、夜逃げをする元気もなくなってしまいました。
 两个人很失望,连夜逃走的精神都没有了。


 次の日の朝、貧乏神は新しいわらじを用意して、藤兵衛一家が出発するのを待っていましたが、いつまでたってもみんな起きてきません。
 第二天早上,穷神准备好新的草鞋,等着藤兵卫一家出发,但是怎么等大家都一直没起来。

「おそいなあ。もうすぐ日が登るのに、どないしたんだろう?
 確か、今朝夜逃げするはずだが、もしかすると明日だったかな?
 まあ、いい。
 それなら明日まで、わらじをあんでおこうか。
 どこに行くかは知らんが、わらじはよけいある方がええからな」
“真慢啊。太阳马上就要升起了,怎么了?
 确实,明明应该今天早上连夜逃跑的,难道是换到明天了吗?
 也行,好吧。
 那样的话,到明天为止,要不继续编草鞋吧。
 虽然不知道要去哪里,但是草鞋肯定是越多越好啦”


 貧乏神は納屋に戻ると、せっせとわらじをあみ出しました。
 穷神回到仓库,拼命地编织草鞋。

 しかし次の日も、その次の日も、藤兵衛一家は家を出て行く様子がありません。
 但是第二天和第二天的第二天,藤兵卫一家都没有要出门的样子。

 貧乏神は毎日わらじをあみ続けていましたが、そのうちにわらじ作りが楽しくなって、いつの間にか納屋の前にはわらじの山が出来ました。
 穷神虽然每天都在编织草鞋的,但这几天做草鞋做得很开心,不知什么时候起仓库前面出现了像山一样高的草鞋堆。

 こうなるとそのうち、わらじをわけてほしいという村人がやって来ました。
 这样一来,不久,来了一个想要草鞋的村民。

 すると貧乏神は、気前良くわらじをわけてあげました。
 于是穷神就慷慨地给了草鞋。

「さあ、どれでも好きな物を持っていきなされ」
“来吧,喜欢哪双请随便拿”

「すまんのう」
“真是不好意思”

「ありがたいこっちゃあ」
“我才要说感谢呢”

 村人は次々とやってきて、大喜びでわらじを持って帰りました。
 村民们一个接一个地来,非常高兴地把草鞋带回家了。

 それを見た藤兵衛は、良い事を思いつきました。
 藤兵卫看到这一幕,想到了一条妙计。

「そうじゃ。あのわらじを売ればいいんじゃ」
“对了。把那些草鞋卖出去不就好了”

 さっそく藤兵衛は貧乏神のあんだわらじを持って、町へと売りに行きました。
 藤兵卫立刻拿着穷神编好的草鞋去镇上卖。

「さあ、丈夫なわらじだよ。安くしておくよ」
“都来看看呀,是很结实的草鞋啊。便宜卖啦”

 すると貧乏神のわらじは大人気で、飛ぶように売れました。
 于是因为穷神的草鞋大受欢迎,卖得飞快。

 けれどやっぱり、暮らしは楽になりません。
 但是,生活还是很艰难。

「やっぱり貧乏神がいては、貧乏から抜け出せんなあ。
 こうなったら何とかして、貧乏神に出て行ってもらおう」
“果然穷神在的话,我们是无法从贫穷中解脱出来的。
 这样的话,无论如何都要让穷神离开我们家”


 藤兵衛はわらじを売ったお金でお酒やごちそうを用意して、貧乏神をもてなしました。
 藤兵卫用卖草鞋的钱准备了酒和饭菜,招待穷神。

「貧乏神さま、今日はえんりょのう食べて、飲んでくだされ」
“穷神,今天不用客气,请您吃好喝好”

「これはこれは、大変なごちそうじゃなあ」
“这可真是一顿丰盛的佳肴啊。”

「はい、貧乏神さまがわらじをあんでくださるおかげで、たいそう暮らしが楽になりました。ささっ、これも食べてくだされ。これも飲んでくだされ」
“是的,多亏了穷神为我们做了草鞋,我们的生活地很好了。来来、这个请您多吃一些、那个也多喝一些吧」

「そうかそうか。それじゃ、よろこんでいただくとしようか」
“这样啊。那我就不客气了」

 貧乏神はすすめられるままに、飲んだり食べたりしました。
 穷神按照自己的建议,又喝又吃。

 そのうちに、すっかり酔っぱらった貧乏神は、藤兵衛にこう言いました。
 不久,喝得酩酊大醉的穷神对藤兵卫这样说道。

「いや~、すっかりごちそうになってしもうた。・・・しかし、こんなに暮らしが良くなっては、わしはこの家におれんな。今まで世話になったが、もう出て行くわ」
“不,我已经吃饱了。・・・但是,你家的生活变得这么好的话,我就不能待在这个家了。一直以来都受您照顾了,我要离开这个家了”

 そして貧乏神は自分で作ったわらじをはいて、家から出て行ったのです。
 然后穷神穿着自己做的草鞋从家里出去了。

 藤兵衛とおかみさんは、顔を見合わせて大喜びしました。
 藤兵卫和妻子看向彼此,都非常高兴。

「出ていった。出ていったぞ! これでわしらも、やっと楽になれるぞ」
“出去了。出去了!这样一来,我们的生活总能变好了吧」

「よかった、よかった」
“太好了,太好了。”

 藤兵衛一家は、安心してグッスリ眠りました。
 藤兵卫一家安心地沉沉睡下了。

 ところが次の朝、藤兵衛が納屋に行ってみると、出て行ったはずの貧乏神がいびきをかいて寝ているのです。
 但是第二天早上,藤兵卫去仓库一看,本应该已经离开的穷神却打着呼噜睡着了。

「ま、まだいたのか!」
“还,还在吗!”

 貧乏神は、藤兵衛を見てニッコリ笑いました。
 穷神看到藤兵卫就笑了。

「おはようさん。出て行こうと思ったが、やっぱりここが一番住みやすいからな。これからも、よろしく」
“早上好。我本想离开的,但果然还是这里最适合居住。今后也请多多关照”

 藤兵衛はすっかり力をなくして、その場にへたりこんでしまいました。
 藤兵卫整个人像被抽掉了精气神一样,瘫倒在地。


 でも、それからも貧乏神はわらじを作り続けたので、藤兵衛はそのわらじを売って、貧乏ながらも食うにはこまらない生活を送ることが出来たそうです。
 但是,在那之后,因为穷神还继续做草鞋,藤兵卫卖草鞋,过着贫穷却不愁吃的生活。

おしまい
完结

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