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福娘童話集 > 百物語 > 二月
2月17日の百物語
(2月17日的日本鬼故事)
安義橋(あきのはし)の鬼
安義橋的鬼
・日本語 ・日本語&中国語
むかしむかし、近江の国(おうみのくに→滋賀県)の殿さまのお屋敷に、家来の若者たちが集まっておしゃべりをしていました。
到好久以前、近江國(現滋賀県)領主的屋子裡、圍到一群家臣。
そのうちに一人の若者が、こんな事を言いました。
其中有一個這麼港
「なあ、お前たち知っているか?
你們曉得吧?
安義橋(あきのはし)という橋は不思議な橋で、あの橋を渡った者は生きて帰れないと言われているそうだ。
安義橋過了就回不來、這個你們曉得吧?
うわさでは、鬼が出るらしい。
港是港哪裡有條鬼到
だから今では、人っ子一人通る者がないそうだ」
所以沒得人能回來過。
それを聞いて、腕自慢の一人が答えました。
有個聽了之後也是覺得自己有點本事。
「鬼が出るなんて、うそに決まっている。なんなら、おれがその橋を渡ってみせよう」
鬼出來、我是不太相信、我就幫橋過了試一哈就曉得了。
「なに! 本当に、渡れるのか?」
你真的要試是吧?
「もちろん、渡れるさ。
しかし、ひとつ条件がある」
去是要去、不過我要提一個條件。
「条件とは?」
怎麼港?
「このお屋敷にあるお馬を、お借りする事だ。
あのお馬は、日本一の名馬だ。
あれに乗って行けば、鬼が出ても何でもないさ」
我要借一匹馬
就是隔壁馬棚裡的那條
我覺得那條馬可以、是全國第一。
騎到它、鬼就算出來也不得慌。
この男は、馬を借りられるはずはないと計算して言ったのですが、ちょうどその時、殿さまが奥から入って来て、
男的就是賭到根本就不可能借這匹馬、逞個口舌之快、這個時候領主剛好從旁邊進來。
「話は聞いたぞ。それならあの馬を、すぐにでも貸してやろう」
と、言ったのです。
這就發話真的借馬跟這個男的過。
これには言い出した男も、すっかり困ってしまいました。
男的這一哈就慌啦。
「あの、その、今の話は、まったくの冗談でございますので、はい」
也是老實港自己根本不敢去、就是想耍個威風。
男は殿さまの前で何度も頭を下げましたが、ほかの若者たちが黙っていません。
男的就一直跟領主解釋、但是其他人就到戳爛藥。
「なんだ、なんだ。今さら何を言っているのだ」
你之前港過得話還可以反悔啊
「そうだ、そうだ」
港的對頭
「おい、はやくしろ。日がかたむいたぞ」
你現在就快點去、天都要黑了
「そうだ、そうだ」
港的對頭
「ここは男らしく、約束を守れ」
你既然是條男的、港話就要算數。
「そうだ、そうだ」
對頭對頭
そう言っているうちに、若者の何人かが馬屋から馬を引き出してきたのです。
這些人還幫馬從馬棚裡面幫忙牽出來。
そして馬の背中にくらを置くと、男に言いました。
幫鞍子都跟男的上好了、對男的港
「さあ、準備は出来たぞ。観念して行ってこい」
就快點要他去、準備等他笑話。
こうなっては、もう逃げ出すわけにはいきません。
這麼到也是米得辦法了。
(とほほ。・・・つまらない事を言ったものだ)
我自己要亂港條甚麼、唉。
男は後悔しましたが、仕方なく立ち上がると馬のそばに行き、馬の腹帯がゆるまない様に強く締め直したり、馬のお尻に油をたっぷりと塗ったりしました。
男的也是沮喪、這就站起來走到馬邊上、重新幫鞍子哪裡箍到緊緊的、又幫馬的屁股上面抹了好多油。
そして手にむちを一本持つと、馬にまたがって出発したのです。
手上提條鞭子、這就上馬出發了。
さて、安義橋(あきのばし)のたもとまでやって来ると、もう、日が暮れかかっていました。
人快到橋邊上、天也差不多黑了。
「薄気味悪いな。・・・何も、出なければよいが」
這地方真是不舒服、莫真的出來甚麼鬼就好。
男が馬を小走りに走らせて橋の中ほどまで進んだ時、薄暗い橋の上に誰かが一人で立っているのが見えました。
男的就騎馬慢慢過到橋中間、烏漆麻黑的橋上、好像有條人站到哪裡的。
「もしかして、鬼?」
真的有鬼啊?
しかしよく見ると、それは女の人でした。
好甚一看、其實是條女的
女の人は薄紫色の布を頭からかぶっており、着物は濃い紫色で、赤いはかまをはいています。
包到頭上的是淡紫的、穿到的是深紫色、下半的穿搭是紅色。
まるで、都の宮仕えの様な服装です。
完全就是宮裡面的搭配。
その女の人が口に手をあて、さびしそうな目で男を見つめました。
女的用手幫嘴巴捂到、看到男的、一副好孤單的樣子。
(若い女が、こんなところでどうしたのだろう? 誰かに、置き去りにされたのだろうか?)
為甚麼這個地方會有一個年輕的女的、是著那個甩到這裡的啊
女の人は男に近づくと、しずかに顔をあげて笑みを浮かべました。
女的就走到男的前面、幫頭抬起來輕輕的笑。
(なんて、美しいのだろう)
男的就覺得這女的好乖
男は一目で、女の人に心をひかれました。
一眼就幫男的魂過吸了。
(ここに置いていては、かわいそうだ。馬に乗せて、家まで送ってやろう)
就想女的一個人晚上到橋上好著孽、就想讓她上馬、被自己帶回去。
そう思いましたが、
動這個念頭的時候
(いや、待てよ。こんな時間に若い女の人が、たった一人でいるのは怪しいぞ)
但是為甚麼這個時候、會剛好又有一個女個到橋上啦?這也太怪了啊。
と、考え直すと、あわてて馬を走らせようとしました。
好甚考慮了一陣、準備馬上跑路了。
すると女の人は、ふいに声をかけてきました。
女的看男的這就準備要走了。
「もし、お願いでございます。どうか向こうの村まで、わたしを連れて行ってくださいませ。こんな所に置き去りにされて、困っております」
喊男的幫自己帶到對面村裡面去、莫幫自己一個人留到這個地方。
美しい声ですが、男はその声を聞くと、なぜか急に身震いをしました。
聲音好聽是好聽、但是男的聽到聲音、這全身就開始抖。
(これは、人ではない!)
因為男的發現這絕對不是人。
そして馬にむちを当てると、あわててその場を逃げ出しました。
快馬加鞭、馬上飛奔。
「まあ、ひどい人。お待ち! ・・・待たんか!」
你怎麼這麼殘忍啦、等我啊!不等我是吧!
後ろから、大きな叫び声がしました。
後面的聲音一哈就變了。
さっきの女の人の声とは思えない、まるで大地をゆるがすような声です。
聽到這個聲音地板都到搖、根本就不是一條女的可以發出的聲音。
「待てー! 待たぬかー!」
你等還是不等!
女の人は、ドタドタと恐ろしい足音で後ろから追いかけてきました。
女的就兩只踋達達達的後面追。
(鬼だ! やはり鬼だ!)
這還就真是條鬼!
男はそう思うと、夢中で叫びました。
男的一哈急了
「観音さま、どうか我をお助けください!」
馬上喊菩薩救命。
しかし後ろから追ってくる足音を、どうしても引き離す事が出来ません。
但是根本就沒得甚麼卵用、後面還是到達達達
それどころか何度も何度も馬のお尻に手をかけて、男を馬から引きずり落とそうとするのです。
而且還好多次都摸到馬屁股了、想幫男的從馬上拉落來。
幸い、馬のお尻には油がたっぷりと塗ってあるので、手が滑って捕まる事はありませんでした。
幸好這馬屁上面是抹了油、手老是滑就捉不到。
男は逃げながら、ちらりと後ろを振り向きました。
男的跑歸跑、還不忘渺後面一眼。
すると先ほどの美しい女は、世にも恐ろしい鬼に変わっていたのです。
剛剛那個好乖的女的、已經完全變成一條鬼了。
鬼の身長は九尺(きゅうしゃく→約二・七メートル)で、まっ赤な顔で金色の目がギラギラと光っています。
有差不多三米、臉非紅非紅、眼睛裡面都是金光。
手の指は三本で、爪は刀の様にとがっています。
三根手指頭、指甲尖到跟刀尖一樣。
「観音さま、どうか我をお助けください!」
菩薩保命 菩薩保命啊!
男は観音さまに祈りながら、なんとか村はずれまでやってきました。
男的就一直哭天喊地、求神拜佛、這跑到跑到就離村裡面米得太遠了。
人家の明かりが見えてくると、ようやく鬼は追うのをあきらめて、
這也是看到別個屋裡面點燈了、有些個光亮、鬼也是不追了。
「今日は逃がしてやるが、いつかきっと捕まえてやるぞ!」
今天捉不到你、不要緊、我遲早要幫你弄了的。
と、叫ぶと、どこかへ行ってしまいました。
放完話鬼也走了。不曉得去哪裡了。
男はやっとの事で、殿さまのお屋敷にたどりつきました。
男的終於是到了領主屋。
男の帰りを待っていた若者たちが、足音を聞きつけて出てきました。
聽到腳步聲、都出來看情況了。
「おい、どうだった?」
怎麼樣啊?
「鬼は、いたか?」
有鬼沒得啊?
若者たちが聞きましたが、男は真っ青な顔で震えながら、返事一つ出来ません。
別個全是問這問那、但是男的是一臉青、甚麼話都港不了。
そこで若者たちは男をかかえてお屋敷家の中に連れて行き、男を介抱(かいほう)してやりました。
這些人就都攙到男的、讓他到屋裡面港話。
殿さまも心配して、出てきました。
領主也是瞭解情況出來了。
殿さまの顔を見て男はようやく正気に戻り、さっきの恐ろしい出来事を話しました。
等男的看到領主腦殼也是清白了、這就開始港自己剛剛碰到的事。
それを聞いた殿さまは、
領主曉得這條
「それは災難だったな。だがこれにこりて、もうつまらない強がりを言うでないぞ」
那也是算你倒黴、你這也是曉得了吧、以後就不要亂逞威風了。
と、男をたしなめると、落ち込む男に乗っていた馬をほうびだと言ってやりました。
領主也是港了男的兩句、看到男的樣子也是幫馬就獎起男的了。
馬をもらった男は元気を取り戻すと、家に帰って家族に今日の話を聞かせました。
反正也是得了一匹馬、回去之後就港起親人聽。
さてそれから男の家に、色々と不思議な事が起こりました。
這之後開始、男的屋裡就經常發生怪事。
突然家が地震の様にゆれたり、天井や壁から奇妙な声が聞こえたりと。
不是突然屋裡到處搖、就是這裡哪裡有聲音。
怖くなった男が占い師に頼んで原因を占ってもらうと、占い師はこう言いました。
男的也是請了個風水師傅幫自己看哈是甚麼案。
「あなたは、何かのたたりを受けています。すぐに体を清めて、ものいみをする様に」
你是著甚麼東西記到了、快點幫身上搞乾淨去、先吃幾天齋。
ものいみ(→物忌み)とは、門を閉めて家の中に引きこもり、どんな人が来ても決して家の中に入れてはならない事です。
就一直到屋裡閉門不出、幫門打反鎖、那個來也不開門。
男は体を清めると、じっと家の中に引きこもっていました。
男的這就入浴更衣、幫自己反鎖到屋裡面。
ところがその日の夕方、ドンドンドンと門をたたく者がありました。
有天晚上就來人敲門了。
家の者がのぞいてみると、そこにいたのは男の弟です。
屋裡人偷偷看一哈、是男的他屋弟。
弟は、みちのく(→東北地方の北部)の殿さまの家来になって、奥州(おうしゅう)に住んでいます。
他屋弟弟是服侍北邊的另外一個領主的、住到奧州。
その弟が久しぶりに京都へ帰る事になったので、その途中、兄のところを訪ねてきたというのでした。
也是好不容易回次京都、這就順便過路看哈自己長兄。
(よりによって、悪い日に来たものだ。
甚麼時候不來、選這個時候。
しかし弟に会って、病気がちな母上の様子を聞きたい。
但是也是想問哈自己弟、老母親的病情是怎麼樣了。
・・・しかし今日は、ものいみの日だ。
但是今天不是甚麼好日子。
残念だが、会うのはよそう)
米辦法、也只有停止見面。
男はそう思って、家の者を呼ぶと、
男的這麼想、喊來屋裡人。
「今日は会えない。明日になったら会うから、今夜は他の人の家を借りて泊まるように」
就港明天才可以、今天先喊弟到其他人屋裡過一夜。
と、門の中から言わせました。
到門裡面就這麼交待
すると、弟は、
他弟就港
「何をなさけない事をおっしゃいます。
もう、日も暮れてしまいました。
你跟我港這條是甚麼意思
現在天都要黑了
わたし一人なら他の家を借りる事も出来ますが、しかし今日は家来も連れているし、馬もいます。
我一個人是可以住到其他人屋裡
但是我帶來的還有人和馬
他の人の家に、泊まるわけにはいきません。
それに、母上がなくなられたのですよ。
這些人要怎麼安排啦
而且我要跟你港媽死的事。
その事もぜひ、わたしの口から申し上げたいと思って、急いでまいりましたのに」
這些我一定要親口跟你港、所以才急到跑過來。
と、残念そうに言いました。
港到好遺憾的樣的
これを聞いた男の目に、涙が浮かびました。
男的聽到這些、也是流眼睛水。
(ああ、家で不思議な事が起こったのは、母上がなくなられたという知らせであったのか)
屋裡碰到的怪事、原來就是他媽過世的死信。
男は、ものいみの事をすっかり忘れて、家の者に言いつけました。
男的也忘記自己要不出門打反鎖了
「門をすぐに開けよ。弟をここに通せ」
就發話讓弟弟進來
そしてなつかしそうに、弟を家に迎え入れました。
這就好懷戀的接他屋弟啦
男と二人っきりになった弟は、泣きながら母の事を色々と話しました。
就單獨二個人、邊哭邊港媽的事。
男のお嫁さんは隣の部屋で二人が話し合っているのを聞いていたのですが、そのうちに、今まで仲の良かった二人が取っ組み合いを始めたのです。
男的堂客就守到旁邊屋偷偷聽、突然發現兩兄弟開始扯皮了。
「まあ、いったい、どうなすったのですか!」
你們這是到搞甚麼傢伙哦!
お嫁さんは思わず声をかけて、二人のところに走り寄りました。
他堂客就插到中間去了。
すると男は、弟を下に組ふせながら、
看到男的就幫自己弟壓倒地上。
「刀を取って来い! まくらもとにある刀を。はやく、はやく!」
這就好急、快點喊自己堂客幫自己枕頭底下的刀遞過來。
と、顔をまっ赤にして言うのです。
臉一哈變得非紅
「あなた、気でも狂ったのですか。せっかくいらした弟さんに」
他堂客以為他是癲了、還港他弟好不容易來一趟
「なにを、ぐずぐずしているのだ! おれに、死ねというのか!」
你是要害死我了、喊你去取你就快去了!
男が叫ぶと今まで下にいた弟が飛び起きて、今度は男を組みふせてしまいました。
男的一吼、被壓倒的弟弟就翻身了、這次換他壓制了。
「きゃあー!」
叫聲
お嫁さんは弟の顔を見て、思わず悲鳴を上げました。
堂客一看弟的臉馬上就懂了、也是叫得好急。
その弟の顔というのが、いつか橋の上で追いかけられたと話をしてくれた鬼の顔だったのです。
那就是自己男人港的被追的鬼臉、根本不是他弟。
そう気がついた時には、弟に化けていた鬼はどこかへ行ってしまいました。
等自己人緩過來、鬼都不曉得跑哪裡去了。
お嫁さんの悲鳴を聞きつけて家中の者が集まって来ましたが、すでに男は鬼にのどを食いちぎられていました。
聽到女主人叫、下人也都是跑過來、男的喉嚨早就被鬼咬爛啦。
「それでは、あの弟が連れて来た家来や馬は、どうなったのだ?」
然後鬼帶來的馬和隨從
みんなが外を調べてみると、動物の骨がいくつも庭に転がっていました。
全是些死人骨頭
人や馬に見えたのは、この骸骨だったのです。
剛剛看到到活人都是這些變得。
この話は、すぐに殿さまたちに知らされました。
これを聞いた殿さまは、
後面領主也是曉得這個事了
「つまらない冗談から、ついに命まで落としてしまったか」
扯個卵談也是幫自己命搞丟了
と、男の死を残念がり、男のためにお祈りをしました。
男的死了也是惋惜、自己是領主也是過了情分幫男的禱告。
その後、鬼は姿を見せなくなり、人々は安心して安義橋を渡れる様になったという事です。
安義橋在之後也是沒得甚麼鬼出現了、別個都是安心的過橋。
おしまい
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