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福娘童話集 > きょうの百物語 > 2月の百物語 > 二人の幽霊 
      2月20日の百物語 
          
          
         
二人の幽霊 
       
      ・日本語 ・日本語&中国語 
       
      ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
      
       
      投稿者 ふわふわスリープ 
      
      
       むかしむかし、ある町に、色白で気の弱い、新兵衛という侍がいました。 
 弓も刀も駄目で、仲間からは腰抜け呼ばわりされていました。 
 
 さて、この町に、元は町一番の長者屋敷だったのですが、今は荒れ果てて幽霊が出るとの噂の屋敷がありました。 
 ある日、仲間の侍たちから、 
「どんなに強い侍でも、一晩とおれんというぞ。お主なんか、門をくぐる事さえも出来まい。あはははははっ」 
と、馬鹿にされた新兵衛は、 
「そこまで言われては、何が何でも泊まってやるわ!」 
と、家に帰って腹ごしらえをすると、おっかなびっくり幽霊屋敷へ出かけて行きました。 
 
 草がぼうぼうの庭に入って行くと、さっそく人魂が西と東から一つずつ、すすーっと飛んで来ました。 
「うひゃーっ、人魂が二つも!」 
 新兵衛は逃げ出したいのを我慢して、恐る恐る屋敷に入りました。 
 やがて、ろうそくの火がひとゆれしたかと思うと、 
「うらめしやあ・・・」 
と、髪の長い女の幽霊が、銀のお金の入った箱を抱いて現れました。 
「でっ、出たー!」 
 新兵衛が震え上がりながらも何とかこらえていると、カギを手にした男の幽霊も現れました。 
 男女の幽霊が一緒に出て来るなんて、よほどの訳があるのでしょう。 
 新兵衛が思い切って、訳を聞いてみると、 
「わたしたち二人は、この屋敷で働いていた者同士です。結婚の約束をしたのですが、主人がそれを許してくれません」 
と、男の幽霊が語り始めました。 
「そこで屋敷のお金を持ち出して、よその町へ逃げて暮らそうとしたのですが、主人に見つかってしまい、二人とも斬り殺されてしまいました。 
 そして別々のところに埋められ、今もそのままなのです。 
 わたしたちはそのうらみから屋敷の主人にたたってやりましたが、未だに成仏出来ません。 
 どうかこのお金でお坊さんを呼んで、成仏させてください」 
「・・・そうだったのか。わかった」 
 新兵衛が引き受けると、男女の幽霊は人魂になって、すーっと出て行きました。 
 座敷には銀のお金がずっしり入った箱と、その箱のカギが残されています。 
 
 あくる朝、新兵衛は幽霊屋敷の出来事を寺の和尚さんに伝えて、二人の供養をしてもらいました。 
 この話しを聞いた、この国の殿さまは、 
「腰抜けどころか、新兵衛の働きは侍の鏡であるぞ。ほめてとらす」 
と、褒美として、その屋敷を与えたそうです。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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