福娘童話集 > 百物語 > 四月 
          
          
        插画家 「愛ちん(夢宮愛)」  SNS 「夢見る小さな部屋」 
         
ネコ岳の化けネコ  
猫山的猫妖 
     
    翻訳者 ソウ キョウ 
     
    ・日本語(日语)  ・英語(英文) ・中国語(中文) 
     
    ・日本語(日语)&英語(英文)  ・日本語(日语)&中国語(中文) 
      
      
       むかしむかし、旅の商人の五助(ごすけ)が、仕事で九州の阿蘇山(あそざん)の奥へと出かけました。  
         很久很久以前,有一个旅行的商人叫五助,他要去九州的阿苏山里办点事。        
        
       五助は、いつの間にか道を間違えたらしく、岩だらけのところに出てしまいました。  
         五助不知什么时候走错了路,走到了一个净是乱石的地方。        
        
      「さあ、困ったぞ。本格的に、迷ってしまった」  
        “哎呀,这下糟糕了。真的是迷路了。”  
         
       五助が、どうしようかと考えていると、  
       正当五助在想办法的时候,  
       
      「ニャー」  
        “喵呜——”  
         
      と、どこからか、ネコの泣き声が聞こえてきました。  
       不知从什么地方传来了猫的哭声。        
        
      「はて?  
        “咦?  
         
       どうしてこんな山の中で、ネコの泣き声が?  
       在这样的大山里,怎么会有猫的哭声呢?        
        
       ・・・そういえば、確かこの辺りにネコ岳(だけ)という山があって、化けネコの親玉がいると聞いた事がある。  
         …这么说来,确实听说过这里有座山叫猫山,住着猫妖的老祖宗呢。        
        
       ・・・捕まったら、大変だ」  
         …要是被抓住了,可不得了了!“  
        
       五助はその場を離れようと、方向もわからないまま先を急ぎました。  
         五助想赶紧离开这个地方,但又不知道方向,只是一个劲儿地赶路。  
         
       すると山の奥に、家の明かりらしい物が見えました。  
       接着在大山深处看到了人家的灯火。        
        
      「ありがたい。あそこで泊めてもらうとしよう」  
        “谢天谢地。看看能不能在那里借住一晚吧。”  
         
       明かりに近づくと、そこには立派なお屋敷がありました。  
       走近那灯火一看,是一座气派的大宅子。        
        
      「すみません。旅の者ですが、今夜泊めてもらえないでしょうか?」  
        “打扰一下。我是路过的旅者,今晚能在您这里借住一晚吗?”  
         
       五助が声をかけると、中から美しい女が現れて、  
       五助话音刚落,从宅子里走出了一位漂亮的女子。        
        
      「どうぞ、おあがりなさい」  
        “请进来吧。”        
        
      と、座敷へ通してくれました。  
         随后把他引到了屋里。  
         
      「ふうっ、野宿をせずにすんだ。それにしても、立派な屋敷だな」  
      “哦哟,我只要随便有个地方住就很好了。话说,您这房子还真气派啊。”        
        
       五助が荷物をおろして一息つくと、さっきの美しい女が言いました。  
         五助放下行李歇了口气,对刚才的美女说。  
        
      「お風呂が、わいております。  
        “洗澡水已经烧好了。  
         
       お風呂は、廊下の突きあたりです。  
       浴室就在走廊的尽头。  
       
       お風呂に入っている間に、ご飯の支度をしておきますね」  
       您洗澡的时候,我会给您准备好餐点。“  
       
      「ああ、風呂とはありがたい」  
      “啊,能洗个澡真是再好不过了。”        
        
       そこで五助がお風呂に行こうとすると、廊下ですれ違った別の女が、ひどく驚いた顔で言いました。  
         五助正往浴室那边走着,在走廊与一名女子擦肩而过,那女子一脸惊讶地叫道——  
        
      「五助どん?」  
        “是五助吗?”  
         
       名前を言われて、五助もびっくりです。  
       被人叫出了名字,五助也很吃惊。  
       
      「確かに五助ですが、どこかでお会いしましたか?」  
        “我是五助,我在哪里见过您吗?”  
         
         すると女は、五助の耳元に口を近づけて言いました。  
         接着那女的在五助耳边悄悄说——  
       
      「ここは、人間の来るところではありません。はやく逃げないと、ネコの姿にされてしまいます」  
      “这里可不是人类该来的地方啊。赶紧逃跑吧,不然他们会把你变成猫的模样的!”  
       
      「はあ? あんたは、誰だね?」  
      “什么?那你是谁?”  
        
      「むかし、五助どんの家の近くにいた三毛ネコです。  
        “我就以前你家附近的三花猫啊。  
         
       五助どんには、とても可愛がってもらいました。  
       五郎你以前可喜欢我了。  
        
       わたしは年を取ったので、ネコ岳の化けネコのかしらに仕えています」  
         我这是因为上了年纪,才来这里归顺了猫妖的老祖。“  
         
       それを聞いて五助は、三毛ネコの事を思い出しました。  
       听了这些,五助想起了那只三花猫。  
       
      「そうか。お前さんは、あの三毛ネコか。急にいなくなったから、心配していたんだ」  
      “是呀是呀,你就是那只三花猫啊。你突然不见了,我们还都很担心你呢。”  
        
      「そんな事よりも、早くお逃げなさい」  
        “先别说这些了,赶紧逃命吧!”        
        
       五助は三毛ネコの女に裏口を教えてもらい、命からがら逃げ出しました。  
         五助从三花猫变成的女子那里得知了后门的位置,拼命地往外逃。  
         
       するとやがて、 
       没一会儿,        
        
      「まてぇー!」  
        “别跑——!”  
         
      と、お湯の入ったおけを手にした女たちが、五助を追いかけてきました。  
       那些女的端着盛满热水的盆子,追着五助跑过来了。        
        
       女たちは次々と、おけのお湯を五助にかけようとしました。  
         那些女的一个一个的都想往五助身上泼洗澡水。  
         
       バシャー!  
       哗——!  
        
       お湯が少し足にかかりましたが、五助は転げる様に山を下って、ようやく町へ逃げ帰りました。  
         虽然脚上沾上了些水,五助好歹连滚带爬下了山,逃到了村子里。        
        
       町の宿屋に入った五助が、お湯のかかった足を調べると、その部分だけネコの毛が生えていました。  
         在村子里的旅店里住下,五助赶紧检查了一下刚刚沾了水的脚,沾了水的地方已经长出了猫毛。        
        
      「あの時、もしも風呂に入っていたら、おれは今頃ネコに・・・」  
        “刚才要是进了那浴缸,我现在恐怕已经变成猫了吧…”        
        
       それからというもの、五助は二度とネコ岳には近づきませんでした。  
         从那以后,五助再也没有走近过猫山。        
      おしまい 
        完 
         
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