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9月21日の百物語

子守り娘のお伊勢参り

子守り娘のお伊勢参り
徳島県の民話徳島県情報

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 むかしむかし、ある村の油屋に、十三才になる子守り娘(こもりむすめ)がいました。

 ある日の事、この子守り娘は自分が子守りをしている油屋の三才の息子を背負って、こっそり伊勢神宮(いせじんぐう)へお参りに出ようとしたのです。
 けれど家の奥さんに見つかって、取り押さえられてしまいました。
「この子はまだ、わたしのお乳を飲んでいるんだよ。どうしてもお伊勢さんにお参りしたいというなら、お前一人で行っておいで!」
 奥さんは背負われていた息子を取り戻すと、子守り娘だけをお伊勢参りに行かせました。
 ところが子守り娘が出かけてすぐ、どうした事か元気だった油屋の息子が急に死んでしまったのです。
 油屋の主人と奥さんは、泣きながら死んだ息子の葬式を行いました。

 それからしばらくたった、ある日のお昼頃。
「ただいま、戻りました」
 元気な声がして、お伊勢参りに行っていた子守り娘が帰って来ました。
 家の中に入って来た子守り娘は、いつもの様に子どもを背負っています。
 家の主人が背中の子どもをのぞき込むと、なんとその子は、この前に亡くなった三才の息子ではありませんか。
「こ、こ、これは、どういう事じゃ?」
 家の者たちは、あまりの事に言葉もありません。
 そして騒ぎを聞いて、近所の人たちもやって来ました。
 この様子に子守り娘は不思議に思いながらも、背中の子どもをたたみの上におろして、手際よくおしめを取り替えました。
「さあ、気持ちよくなった。ここはあなたのお家よ。ゆっくりおねんねしなさいね」
 子守り娘が子どもをふとんに寝かしつけるのを呆然と見ていた主人は、これが夢や幻でない事に気づくと、村のお寺へと走って行きました。
 そして不思議な出来事を、和尚(おしょう)さんに話しました。
「そう言うわけで和尚さま、すぐに息子の墓を調べて欲しいのです!」
 でも和尚さんは、主人の話を信じようとはしません。
「息子さんが生きていてほしいと願う気持ちはわかりますが、息子さんはあの世へと旅立ったのですよ」
「いいえ、間違いありません。子守り娘が息子を連れて帰ったのです!」
「・・・わかりました。それでは、お望み通りに墓を調べてみましょう」
 そこで和尚さんと主人が息子のお墓を調べてみると、なんとお墓は空っぽで、中には伊勢神宮のおはらいのお札が一枚入っていたという事です。

おしまい

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