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2月5日の日本民話

泣ヶ浜(なきがはま)

泣ヶ浜(なきがはま)
長崎県の民話長崎県情報

 むかしむかし、多良岳(たらだけ)という所には、鬼が住んでいました。
 鬼は時々、里に降りて来ては、村人たちの大切な家畜を盗んだり、作物を荒らしたりするのです。
 そこで困ってしまった村人たちは、多良岳の多良神社にお参りをして、
「神さま。鬼が悪さをして困っております。どうか、鬼をこらしめてください」
と、熱心にお願いしました。

 さて、これを聞いた神さまは、すぐに鬼を呼びつけると鬼を叱りつけました。
「こら! 村を荒らすとは何事だ! さっさと出て行け!」
 すると、叱られた鬼は目に涙を浮かべて、
「神さま。どうか、追い出すのだけは許して下さい。わしはこの山を追い出されたら、どこにも行く所がないのです」
と、あやまるので、神さまもつい可哀想になって、
「・・・そうか。まあ、長年住んでいる山だからな、すぐに出て行けというもの可哀想だ。それならひとつ、この神社に石の門を作ってみろ。もし今晩中に作り上げたら、今回だけは許してやろう」
と、言いました。
 それを聞いた鬼は、さっそく山を駆け下りると浜から大石を運び出して、門造りを始めました。
 それを見た神さまは、
(ほう。なかなか器用なものだ。しかしまあ、いくら何でも、一晩では出来ないだろう)
と、安心していましたが、鬼の仕事がとても早いので、神さまはだんだん心配になってきました。
(これはまずい。このままでは、本当に一晩で作り上げてしまうかもしれんぞ)
 そこで神さまは、ある作戦を思いつきました。
 神さまは二つの笠(かさ)を持って来て、それでバタバタと音をたてると、
「コケコッコー!」
と、ニワトリの鳴く真似をしたのです。
 するとそれにつられて、村中のニワトリが次々と、
「コケコッコー!」
と、鳴き出したのです
 これを聞いて、鬼はびっくり。
「ややっ、もう夜が明けたのか! もう少しで、石の門が完成すると言うのに」
 鬼はくやしくて、地面に座り込むと、
「オーイ、オイ、オーイ、オイ」
と、泣き出しました。
 そして鬼は約束通り山から姿を消して、村は平和になりました。
 けれど浜では、夜の明ける頃になると波の音にまじって、
「オーイ、オイ、オーイ、オイ」
と、鬼の泣き声が聞こえるのだそうです。
 それで里の人たちはこの浜を、『泣ヶ浜』と呼ぶようになったという事です。

おしまい

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