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2月8日の日本民話
数字の手紙
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むかしむかし、夏になっても寒い日が続いて、作物が育たなくなりました。
このままでは、年貢を納めることが出来ません。
困った村人たちは相談をして、役所へ年貢を少なくしてもらえるように願い出ることにしました。
その役目に選ばれたのが、伝助ととん兵という名前の二人です。
「恐れながら、村の代表で参りました」
役所へやって来た二人はふところから書き付けを取り出すと、役人に差し出しました。
役人がそれを見てみると、
《一、二、三、四、五、六、七、八、九、十》
と、一から十までの数字しか書いていません。
「これは、何だ?」
役人は首をかしげると、伝助が言いました。
「恐れながら、おらが訳を話します。
一は、いちいち語るも。
二は、にがにがしい。
三は、さんざんな。
四と五は、仕事をして。
六は、ろくなことがない。
七と八は、質にばち置いても。
九は、食っていけません。
十は、十分に作物が実らん。
つまり、いちいち語るも、苦々しい。さんざん、仕事をしても、ろくなことがない。質にばちを置いても、食っていけません。それは、十分に作物が実らないからです。
と、言う、年貢をまけてもらうための願いです」
それを聞いた役人は、この面白い書き付けに感心しました。
(ほう、普通の内容では年貢をまけてもらえないので、皆で頭をしぼったな)
「うむ。お前たちの願いはわかった。ちょっと待っていろ」
役人は二人の目の前で、さらさらさらと書き付けると二人に渡しました。
「これを持っていけ」
受け取った二人が、その書き付けを見てみると、
《十、九、八、七、六、五、四、三、二、一》
と、さっきとは反対に、十から一までの数字を書いてあるだけです。
今度は二人が首をかしげて、役人に尋ねました。
「お役人様。これは、なんでしょうか?」
すると役人は、にやりと笑って言いました。
「いいか、よく聞け。
十は、十分に作物を収穫しておきながら。
九は、苦情を言う。
八は、いやな奴ら。
七は、質に置くようなものは。
六は、ろくでもない。
五は、言語道断にて。
四は、捕まえて縛ってやりたいが。
三は、三千世界(さんぜんせかい→この世との意味)の百姓は。
二は、にくいけれども。
一は、一度だけ許す。
つまり、十分に収穫しておきながら、苦情を言ういやな奴らめ。質に置くようなものはないのに、言語道断。捕まえて縛ってやりたいが、三千世界の百姓は、憎いけれども、一度だけ許す」
役人の説明を聞いて、伝助ととん兵は深々と頭を下げました。
「ありがとうございます」
こうして村の年貢は、今回一度だけまけてもらえるようになったと言うことです。
おしまい
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