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3月12日の日本民話
八人浦島物語
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むかしむかし、黒部谷(くろべだに)の山里に、碁(ご)の大好きな八人の男がいました。
八人の男はひまさえあれば、碁石(ごいし)を打って楽しんでいました。
ある日の事、いつもの様に八人が碁をしていると、どこからか一人の老人がやって来て、
「わしも碁が好きでな。すまないが、わしにも一つ打たせてはくださらないか?」
と、頼んだので、
「ああ、いいですよ」
「碁の好きな人は、大歓迎です」
と、老人を仲間に入れたのですが、これがなかなかの腕前で、八人の中で一番強いと男と互角の勝負をするのです。
それから老人は毎日来る様になり、みんなと碁を楽しんでいました。
さて、それから一年が過ぎた頃、老人が八人の男たちを自分の家に招待しました。
老人の案内で谷を進むと、大滝(おおだき)の前に出ました。
「家は、この滝の中にあるんだ。わしに続いて、滝をくぐってくだされ」
老人に続いて八人が滝をくぐると、そこには立派な黒門(くろもん)に囲まれたご殿(てん)がありました。
このご殿が老人の家で、男たちは奥座敷(おくざしき)に通されると、大変なごちそうのもてなしを受けました。
ご殿では一日中、絵の様に美しい娘たちが三味線(しゃみせん)、胡弓(こきゅう)、尺八(しゃくはち)を伴奏(ばんそう)にしており、まるで天国にいるようです。
そして二日後、八人は家に帰る事にしました。
老人は、八人との別れをとても惜しみ、
「せめて最後に、世にも珍しいごちそうを差し上げましょう。長生きすれば、また一緒に碁を打てるかもしれんでな」
と、頭と顔が人間で、胴が魚の鯛(たい)の姿をした人魚の料理を出したのです。
(うへっ、さすがにこれは・・・)
気味悪く思った八人は、人魚を食べるふりをして紙に包み、元来た道をたどって滝の外に出ると紙包みの人魚を川に捨てました。
さて村に帰ると、老人のご殿にはたった二日いただけのなに、なんと二年もの月日がたっていたのです。
そして八人の中で一人だけ、紙包みを持って帰った男がいました。
その家の娘がそれと知らずに紙包みの人魚を食べたところ、娘は何年たっても年を取ることがなく、若々しい姿のまま三百歳まで長生きしたという事です。
おしまい
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