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11月1日の日本民話

親子地蔵

親子地蔵
長野県の民話長野県情報

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音声 ひかる

 むかしむかし、九州の筑前の国(ちくぜんのくに→福岡県)に、加藤重氏(かとうしげうじ)という人がいました。
 重氏(しげうじ)は大した権力者でしたが、ある日、人の心のみにくさを知って、妻も子も捨てて仏に仕える身となってしまったのです。
 重氏は名前を苅萱道心(かるかやのどうしん)と改め、高野山に登って修行にはげみました。
 そしていつしか、十三年の月日が流れていったのです。

 ある日の事、高野山に一人の男の子がやって来ました。
 名前を石童丸(いしどうまる)といい、道心が筑前に残してきた息子だったのです。
 石童丸は父親が高野山にいる事を知り、一目会いたいと長い旅を続けてきたのでした。
 身も心も疲れきった石童丸は、出会ったお坊さんにたずねました。
「もし、この山に、筑前から来たお坊さまはおられませぬか? 私の父で、名を加藤重氏と申します」
 するとそのお坊さんはとても驚いた様子で、石重丸をじっと見ると涙をこぼしながら言いました。
「そなたの父とは、長年の友人じゃった。それが昨年の夏、悲しい事に急な病でなくなられてしもうたのじゃ」
 実はこのお坊さんこそ、石童丸が夢にまで見た父の加藤重氏だったのです。
 そうとは知らない石童丸は、自分も父親と同じように出家しようと決心しました。
 そしてそのまま、道心の弟子となりました。

 親子そろっての修行生活が始まりましたが、父親の道心には、わが子を弟子として同じ寺に住むのはとてもつらいことでした。
 親子の情が日に日につのるので、修行に身が入らないのです。
「こんな事では、仏に仕える事は出来ん。それにいつかは、石童丸にも本当の事が分かってしまうであろう」
 道心は山を去って、信濃の善光寺(ぜんこうじ)へと旅立ちました。
 そしてそこで念仏三昧に明け暮れた末、八十三才で大往生をとげたのです。

 一方、高野山で修行を続けていた石童丸は、ある晩、不思議な夢を見ました。
 うす紫の雲がたなびく中、仏さまが現れて言いました。
「苅萱道心(かるかやのどうしん)こそは、そなたの父です。すぐに信濃におもむき、父の供養(くよう)をするがよい」
 こうしてすべてを知った石童丸は急いで善光寺を訪れると、父の霊をねんごろにとむらいました。
 そして父の作った地蔵のそばに、自分も一体の地蔵を残したのです。
 いつしかこの二体の地蔵さまは、親子地蔵と呼ばれるようになりました。

 長野市の往生寺(おうじょうじ)には、この親子地蔵と呼ばれる二体の地蔵さまが今でも残っているそうです。

 → 往生寺の親子地蔵尊について

おしまい

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