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        福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 5月の日本昔話 > ゆうれいのしかえし 
         
      5月24日の日本の昔話 
        
        
       
ゆうれいのしかえし 
      
       むかしむかし、ある村に、みすぼらしいたびの坊さんがやってきました。 
 日もくれてきたので、どこかにとめてもらわなくてはなりません。 
 坊さんは、庄屋(しょうや→詳細)さんの門をたたきました。 
「どうか、ひとばん、とめてください」 
 すると、庄屋さんは、 
「きのどくだが、とめられん。じつは、このあいだ、たびの男をとめて、だいじなものをとられてしまった。たとえ坊さんでも、たびのものはとめないことにした。さあ、はやく立ち去れ」 
と、門をしめてしまいました。 
「それでは、しかたがない」 
 坊さんがトボトボあるいていくと、はかばがありました。 
 はかばには、あたらしい土まんじゅうができています。 
「もうしわけないが、ひとばん、ここでごやっかいになりましょう」 
 坊さんは土まんじゅうをおがんでから、それをまくらによこになりました。 
 むかしは人がなくなると、おはかにかんおけをうずめ、そのうえに、こんもりと土をかけて、おはかにしたのです。 
 そのかたちが、まんじゅうににているところから、『土まんじゅう』といったのです。 
「どんな人がなくなったのかなあ?」 
 坊さんが、そんなことをおもいながらねむりにつくと、真夜中(まよなか)になって、白いきものをきた男のゆうれいがあらわれました。 
「もしもし、お坊さん」 
 坊さんは、そのこえにハッと目をさましました。 
「あなたは、ゆうれいですか?」 
「はい。くやしいことがあって、あの世へゆけないでいます」 
「さしつかえなければ、わけをうかがいましょう」 
「はい、ぜひとも。わたしは、この村の庄屋さんのやしきにはたらいていたものです。ついこのあいだ、やしきにどろぼうが入りました。庄屋さんは、どろぼうがつかまらないはらいせに、『おまえがどろぼうをやしきにひきいれたのだろう。そんなやつはゆるせん』と、わたしにつみをかぶせて、刀できり殺したのです」 
「そりゃあ、ひどい!」 
「わたしは、なんとかしてしかえしをしようと、まいばんゆうれいになって、やしきにいくのですが、やしきのほうぼうに、まじないふだがはってあるため、中に入ることができません。なにとぞ、まじないふだを、一まい、はぎとっていただけないでしょうか」 
 ゆうれいは、なみだを流しながら手をあわせました。 
 坊さんも、ながいことたびをかさねてきましたが、ゆうれいにたのみごとをされるのは、はじめてです。 
「よし、おやすいことだ。つみもないあんたをころすなんて、とんでもないやつ。すぐにいって、まじないふだをはがしてやろう」 
 坊さんは庄屋さんのやしきへとってかえすと、入り口にはってあるまじないふだを一枚、ペッとはがしてやりました。 
「ありがとうございます」 
 ゆうれいが、そこから入っていったので、坊さんがかくれてようすをみていると、 
「たすけてくれえ! ゆうれいだー!」 
 庄屋さんのさけひごえがしたかとおもうと、 
「たいへんだー! だんなさまがゆうれいにおどろいて、いのちをおとされたぞ!」 
 やしきの中は、えらいさわぎになりました。 
「これでゆうれいも、まよわず、あの世へゆけよう」 
 坊さんは、しずかにたちさっていきました。 
      おしまい 
         
         
         
        
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