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6月9日の日本の昔話
天人女房(てんにんにょうぼう)
仙女餔娘
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、あるところに、一人の若い木こりが住んでいました。
頭擺頭擺,一隻位所戴一個後生樵夫。
ある日の事、木こりは仕事に出かける途中で、一匹のチョウがクモの巣にかかって苦しんでいるのを見つけました。
有一日,樵夫在去做事个路項,看著蝲䗁網頂網著一隻蝶仔,非常痛苦。
「おや?これは可哀想に」
「唉哦?這還衰過。」
木こりはクモの巣を払って、チョウを逃がしてやりました。
樵夫舞開蝲䗁網,放蝶仔走。
それから少し行くと、一匹のキツネが罠(わな)にかかっていたので、
行無幾步腳,又看著一隻狐狸分捕獸夾困著。
「おや?これは可哀想に」
「唉哦?這還衰過。」
と、木こりは罠からキツネを助けてやりました。
樵夫幫忙狐狸脫離捕獸夾。
またしばらく行くと、今度は一羽のキジが藤かずらにからまってもがいていました。
行無幾步腳後,又看著一隻雉雞分藤仔纏著。
「おや?これは可哀想に」
「唉哦?這還衰過。」
木こりはナタで藤かずらを切り払い、キジを逃がしてやりました。
樵夫用刀嫲摎藤仔剁斷,放雉雞走。
さて、その日の昼近くです。
該日个臨晝仔。
木こりが泉へ水をくみに行くと、三人の天女が水浴びをしていました。
樵夫去泉水窟取水時節,三個仙女在該洗身仔。
天女の美しさに心奪われた木こりは、泉のほとりに天女が脱ぎ捨ててある羽衣(はごろも)の一枚を盗みとって木の間に隠れました。
樵夫分仙女迷著,偷走一領仙女脫忒、放在泉水窟脣个仙女衫以後,囥在樹林肚。
やがて三人の天女は水から出てきましたが、そのうちの一人だけは天に舞い上がるための羽衣が見つかりません。
無幾久,三個仙女在水竇肚䟘起來,其中有一個尋毋著愛飛上天該領仙女衫。
二人の天女は仕方なく、一人を残して天に帰って行きました。
兩個仙女無法度飛倒轉天頂,留佢一儕在泉水窟脣。
残された天女は、しくしくと泣き出してしまいました。
留下來个仙女噭襤濕褸。
これを見た木こりは天女の前に出て行って、天女をなぐさめて家へ連れて帰りました。
樵夫看著這恁樣,行到仙女面頭前,安慰佢、渡佢轉去屋下。
そして盗んだ羽衣は、誰にも見つからないように天井裏へしまい込みました。
偷著个仙女衫囥在天篷頂背,無人尋得著。
そして何年かが過ぎて二人は夫婦になったのですが、ある日木こりが山から戻ってみると、天女の姿がありません。
幾下年後,佢兩儕結公婆了,一日,樵夫去山頂倒轉來个時節,仙女嗄毋見忒了。
「まさか!」
「敢係恁樣!」
男が天井裏へ登ってみると、隠していた羽衣も消えています。
樵夫蹶到天篷肚,發現囥在裡背个仙女衫毋見忒了。
「あいつは天に、帰ってしまったのか」
「佢轉天頂去了係無?」
がっかりした男がふと見ると、部屋のまん中に手紙と豆が二粒置いてありました。
非常失望个樵夫忽然間在房間肚看著一封信仔摎兩個豆仔放在該。
その手紙には、こう書いてありました。
信仔寫講:
《天の父が、あたしを連れ戻しに来ました。あたしに会いたいのなら、この豆を庭にまいてください》
《天父來渡𠊎轉去,若係愛見𠊎,這豆仔拿去花園裡背點》
木こりがその豆を庭にまいてみると、豆のつるがぐんぐんのびて、ひと月もすると天まで届いたのです。
樵夫在花園裡肚點豆子後,豆子生藤緊递緊長,一個月之內递到天頂。
「待っていろ、今行くからな」
「等𠊎一下,這下就來去囉。」
木こりは天女に会いたくて、高い高い豆のつるをどんどん登って行きました。
樵夫想見天頂个仙女,慢慢蹶上递到頂个个藤仔。
何とか無事に天に着いたのですが、しかし天は広くて木こりは道に迷ってしまいました。
雖然佢安全蹶到天頂,毋過天頂恁闊,樵夫嗄撞走。
すると以前助けてやったキジが飛んで来て、木こりを天女の家に案内してくれたのです。
頭過識分佢救過个雉雞飛過來,渡佢去仙女屋下。
しかし天女に会う前に、家から父親が出て来て
毋過見著仙女前,厥爸在屋肚行出來。
「娘に会いたいのなら、この一升の金の胡麻(ごま)を明日までに全部拾ってこい」
「若係你想見吾妹仔,請你在天光日以前摎這所有个金麻仔拈揫起來。」
と、言って、天から地上へ金の胡麻をばらまいたのです。
講忒就摎金麻仔對天頂捨到地泥下去。
天から落とした胡麻を全て拾うなんて、出来るはずがありません。
天頂捨下來个金麻仔全部拈揫起來,無可能个。
とりあえず金の胡麻探しに出かけた木こりが、どうしたらよいかわからずに困っていると、以前助けてやったキツネがやって来て、森中の動物たちに命令して天からばらまいた金の胡麻を一つ残らず集めてくれたのです。
緊觸觸出去拈金麻仔个樵夫,毋知仰結煞時節,又堵著頭過識幫忙過个狐狸走過來,並命令森林裡肚个動物摎天頂捨下來个金麻仔拈揫起來,拈到淨淨一隻都無伸。
木こりが持ってきた金の胡麻の数を数えた天女の父親は、仕方なく三人の娘の天女を連れてくると、
仙女个爺仔算一下樵夫帶來个金麻仔,無法度高不將渡等三個仙女妹仔過來,講:
「お前が地上で暮していた娘を選べ。間違えたら、お前を天から突き落としてやる」
と、言うのです。
「選看哪個係摎你在地上共下生活个妹仔。若係你選毋著,你會分人𢱤出天頂。」
ところが三人の顔が全く同じなので、どの娘が木こりの探している妻かわかりません。
但係因為這三個仙女妹仔面貌完全共樣,所以毋知道哪個正係樵夫个餔娘。
すると、以前助けてやったチョウがひらひらと飛んで来て、まん中の娘の肩にとまりました。
頭過分佢救著該隻蝶仔飛等過來,停在中央該個妹仔个肩頭頂。
「わかりました。わたしの妻は、まん中の娘です」
「知了,吾餔娘係中央該個妹仔。」
見事に自分の妻を言い当てた木こりは、妻と一緒に地上へ戻って幸せに暮らしたということです。
樵夫順利尋出自家个餔娘,摎餔娘共下轉到地上,過著幸福个生活。
おしまい
煞咧
朗読者情報 台湾居住者 Judy
日本で20年の生活を経た後、本国の台湾に戻ったジュディーは日本と台湾の架け橋となり、通訳、翻訳、日本語教師を経験後、現在は日本語を使い、様々な分野の録音に携わっています。
台湾日文配音者です。
朗読に関するご意見ご要望はjudy.yen1204@gmail.comまでお願いいたします。
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