|
|
福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 10月の江戸小話 > 物忘れの名人たち
10月9日の小話
物忘れの名人たち
いつも物忘れをするだんなたちが集まって、こんな事を相談しました。
「わしらは物忘れがひどいから、お互いに忘れた事を思い出す会を開かないか?」
「おおっ、それは良い考えだ」
「では最初の会を、あさっての二十一日に決めよう」
こうして思い出す会の会場を、金兵衛(きんべえ)さんの家に決めました。
「それではみなさん、くれぐれもお忘れなく」
さていよいよ、その思い出す会の日がきました。
金兵衛さんの家では座敷をきれいにして、ごちそうも並べ、みんなが来るのを待っていました。
ところが誰一人、やって来ません。
「おそいなあ、みんな、何をしているんだろう?」
金兵衛さんは、番頭に言いました。
「二十一日に思い出し会の約束をしているのに、誰も集まってこない。もしかすると約束を忘れているかもしれんから、みんなを呼んできてくれないか?」
すると番頭は、あきれ顔で言いました。
「だんなさま。今日は、二十二日でございます」
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
|
|
|