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9月21日の日本民話
鯛女房
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むかしむかし、あるところに、一人者の漁師(りょうし)がいました。
ある日の事、漁師はピカピカとうろこが光輝く大きな赤ダイを釣り上げました。
「これは大物だ」
漁師が新鮮なうちに手カギを入れて、血抜きをしようとすると、
(殺さないで!)
と、うったえるような声を感じました。
「うん? このタイが言ったのか? ・・・まさかな」
漁師がもう一度、手カギを振り上げると、
(殺さないで!)
と、また声が聞こえたように気がしたのです。
「うーん、仕方ない、逃がしてやるか」
漁師は赤ダイを、海に逃がしてやりました。
それからしばらくたったある日、漁師は人のすすめで、今まで見た事もないほど赤ら顔の女の人を女房(にょうぼう)にもらいました。
その女房は料理が大変上手で、特にみそ汁やおすましなどは天下一の味です。
あまりにもおいしいので、漁師は女房に、
「こんなにうまい料理、どうやって作るんだ?」
と、聞いたのですが、女房はそれには答えず、はずかしそうに顔を赤らめて、
「男の人が、そんな事を気にするもんでねえ」
と、笑うだけで答えてくれません。
「まあ、それもそうだな」
漁師はそう言いましたが、やっぱり料理の作り方が気になって、翌朝早起きすると、台所で料理を作る女房の姿をのぞき見ました。
「ほほう。今日はすましか。あれがなかなかにうまいんだ」
女房の作るところをジッと見ていましたが、別に変わったところはありません。
「さて、いよいよ味付けだが、いったいどうやって。・・・なっ、なんと!」
のぞいていた漁師は、ビックリです。
なんと女房は、すましを入れたナベの上にまたがって、味付け代わりにシャーシャーとおしっこをしていたのです。
漁師の声に見られた事を知った女房は、全てを話しました。
「実はわたしは、あなたに命を助けてもらった赤ダイなのです。恩返しをしようとこうしてやってきたのですが、正体を見られたからには、これ以上ここにいることは出来ません」
そして追いかける漁師を振りきって、女房は岬(みさき)から海に飛び込んだのです。
するとまもなく海面に大きな赤ダイが現れて、なごりおしそうに男の姿を振り返りながら波の中に消えていきました。
おしまい
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