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5月6日の日本民話 2
奥方に化けたキツネ
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むかしむかし、今の道後温泉(どうごおんせん)のそばに、湯月城(ゆづきじょう)というお城があって、そこに河野伊予守道直(こうのいよのかみみちなお)という殿さまが住んでいました。
ある日の事、殿さまが狩りから帰ってみると、奥方(おくがた→奥さん)が二人もいるのです。
二人は、顔も声も同じです。
「あなた、わたしが本物よ」
「あなた、わたしが本物よ」
「あっちが、にせ者よ」
「あっちが、にせ者よ」
殿さまには、どっちが本物でどっちがにせ者か見分けがつきません。
それで医者を呼んできて、二人の奥方をみてもらいました。
すると医者は、
「これは離魂病(りこんびょう)と申しまして、魂(たましい)が二つに分かれる不思議な病でございます」
と、言うのです。
「離魂病? よくわからぬな」
次に殿さまは、お寺の和尚さんを呼んできて、二人の奥方をみてもらいました。
すると和尚さんは、
「片方は本物ですが、もう片方はキツネかタヌキが化けたものでしょう。よく化けてはいますが、そのうちに正体を現すでしょう」
と、言うのです。
この説明には殿さまもなっとくして、二人の奥方を座敷(ざしき)に閉じ込めてようすを見ることにしました。
その夜、二人の奥方がお腹が空いたのを見計らって、殿さまはごちそうを出させました。
すると一人の奥方が耳をビクビクと動かして、ごちそうをガツガツ食べ始めたのです。
本物の奥方なら、いくらお腹が空いていてもあんな食べ方はしません。
「あれが、にせ者じゃ!」
殿さまの言葉に家来(けらい)たちがその奥方をつかまえると、庭のスギの木にくくりつけて松葉の煙でいぶしました。
すると奥方がコンコンとせきをして、古ギツネの正体を現したのです。
「おのれ、キツネのぶんざいで、こともあろうに妻の姿に化けるとはかんべんならぬ。今すぐ、火あぶりにしてくれる!」
殿さまの命令に家来たちが火あぶりの準備をしていると、どこからともなく何百匹ものキツネが現れました。
そしてその中の一匹が、地面に頭を地面にこすりつけて言いました。
「お殿さま、どうかお許しください。このキツネは四国のキツネの中で一番とうといキツネです。もし殺したら、ご領内(りょうない)にきっと悪い事が起きるでしょう。二度とイタズラはさせませんので、どうかお許しください」
それを聞いた殿さまは、キツネを許(ゆる)してやりました。
「許してやるが、わび証文(しょうもん)を書け」
「はい、わかりました」
奥方に化けたとうといキツネは、殿さまと奥方に深々と頭を下げると、
「これからは、もう四国には住みません」
と、わび証文(しょうもん)を残して、みんなを連れて出て行ったそうです。
おしまい
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