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6月8日の日本民話 2

大師芋 弘法話

大師芋 弘法話
鹿児島県 加世田市の民話鹿児島県の情報

 南薩地方(なんさつちほう)には、「大師芋(たいしいも)」という芋があります。
 むかしはおいしい芋だったのですが、今ではいくら煮ても煮えない、苦い芋なのだそうです。
 これはその、大師芋にまつわるお話しです。

 むかしむかし、弘法大師という偉いお坊さんが、仏教を広めるために、南薩地方にやって来ました。
 長い旅を続けてきたので、大師はお腹がペコペコです。
 ある農家に立ち寄ると、そこの家でおいしそうな芋をぐらぐら煮ていたので、大師は農家の主人にお願いしました。
「すまんが、その芋を少し恵んで下さらんだろうか」
 ところが家の主人は、長旅で身なりがボロボロの大師を見るなり、眉をひそめて言いました。
「こじき坊主め。お前なんぞにやる芋はひとつもなか」
「そこを何とか。小さなかけらでもいいのです」
「駄目じゃ、駄目じゃ! それにな、こん芋はまだ煮えとらん。食っても苦くて固いだけじゃ」
「・・・そうですか」
 本当は、ちょうどいい具合に煮えた、おいしい芋だったのですが、主人はそう言って大師を追い返したのです。
 さて、しばらくしてから、主人と家の人たちは、芋を食べようと鍋を火からおろしました。
 そして芋を取り出してみると、不思議な事に、ちょうどいい煮え具合のはずの芋が、鍋の中でまっ黒に焦げ付いているのです。
「変だな。ちょうどいい煮え具合のはずじゃが」
 主人は仕方なく、まっ黒に焦げ付いた芋を裏山に捨てました。
 やがてその芋から芽が出て、立派な芋が出来ました。
 しかしその芋は、いくら煮ても煮えない、苦い芋だったのです。
 それからというもの、村の人々はその芋のことを、「大師芋」と呼ぶようになったそうです。

おしまい

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