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6月9日の日本民話 2
蓮如上人(れんにょしょうにん)の御影(おみえ)
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むかしむかし、東尋坊(とうじんぼう)の近くに浮かぶ雄島(おじま)という小さな島のそばに、若い漁師が母親と二人で暮らしていました。
その漁師は名を甚兵衛(じんべえ)といい、とても気の荒い男で、神など一度も信じた事がないのが自慢です。
「はん。神や仏なんてものがいるものか!」
ところが甚兵衛がいつものように三国(みくに)の浜で漁をしていると、突然にまぶしい光が両目に差し込んだのです。
その不思議な光は翌日になっても消えようとはせず、むしろ前よりも一段とまぶしさを増してきたようです。
その光のために、もう何日も漁が出来ないでいた甚兵衛は、思い切って光のさす方角に歩いて行きました。
すると興行寺(こうぎょうじ)の中の蓮如上人(れんにょしょうにん)の御姿絵(おすがたえ)の前に出たのです。
この絵は蓮如上人の魂が宿っているといって、門徒(もんと)たちが大事にしている物でした。
そのむかし、布教を終えて京の本願寺に帰られた蓮如上人が病気になり、興行寺に嫁(か)した如空姫(にょくうひめ)を呼び戻すと、
「なつかしい越前の門徒たちに、わたしの形見として絵姿を持って帰ってほしい」
と、頼み、その場で自らふるえる手に筆を持って、己を書き写した物なのです。
そしてこの光は、 甚兵衛の不信心(ふしんじん)に心を痛めた母の願いが天に通じ、御姿絵の光となって甚兵衛をいさめたものでした。
でも、そうとは知らず甚兵衛は住職に、
「こう光がまぶしくては仕事が出来ません。どうか、絵姿をうす絹(きぬ)でおおってもらいたいのです」
と、願い出ました。
そこで絵姿にうす絹がはられたのですが、今度は絹の上に絵がくっきりと現れ、不信心だった甚兵衛をいさめたのでした。
おしまい
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