福娘童話集 > 日本の民話 2 福娘童話集 きょうの日本民話 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集


福娘童話集 > 日本の民話 その2 > 7月の日本民話

7月7日の日本民話 2

七夕女房

七夕女房 ( たなばたにょうぼう )
高知県の民話 → 高知県の情報

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 眠れる森のくま

♪音声配信(html5)
朗読者 : スタヂオせんむ

 むかしむかし、 猟師 ( りょうし ) ( ) われたキツネが、 炭焼 ( すみや ) きをしている 小五郎 ( こごろう ) 炭焼き小屋 ( すみやきごや ) 飛び込 ( とびこ ) んで ( ) ました。
 キツネは、びっくりしている 小五郎 ( こごろう ) ( ) ( ) わせて ( ) いました。
小五郎 ( こごろう ) さん、どうか 今日 ( きょう ) ( ところ ) 見逃 ( みのが ) して ( くだ ) さい。 ( かなら ) ず、このお ( れい ) はしますから」
 そこで 小五郎 ( こごろう ) は、キツネを 裏口 ( うらぐち ) から ( ) がしてやったのです。

 それから 数日後 ( すうにちご ) 、あの ( とき ) のキツネが 小五郎 ( こごろう ) ( ところ ) へやって ( ) ( ) いました。
「あの ( とき ) は、お 世話 ( せわ ) になりました。さて、 約束 ( やくそく ) のお ( れい ) ですが、あなたにお ( よめ ) さんをお 世話 ( せわ ) したいと ( おも ) います」
( よめ ) さんを?」
「はい。この ( ごろ ) 、この ( ちか ) くの 谷川 ( たにがわ ) へ、 ( てん ) から 天女 ( てんにょ ) 水浴 ( みずあ ) びにやって ( ) るのです。
  天女 ( てんにょ ) 水浴 ( みずあ ) びをする ( とき ) に、 ( ) ていた 羽衣 ( はごろも ) ( ) いで ( ) ( ) っかけますから、それをあなたが ( かく ) してしまうのです。
  天女 ( てんにょ ) 羽衣 ( はごろも ) がないと ( てん ) ( かえ ) れませんから、 ( ) ( ) てのない 天女 ( てんにょ ) はあなたのお ( よめ ) さんになってくれるでしょう」

  ( つぎ ) ( ) 小五郎 ( こごろう ) がキツネに ( おし ) えてもらった 谷川 ( たにがわ ) ( ) ってみると、 一人 ( ひとり ) ( うつく ) しい 天女 ( てんにょ ) 谷川 ( たにがわ ) ( たの ) しそうに 水浴 ( みずあ ) びをしていました。
  小五郎 ( こごろう ) ( ちか ) くの ( ) ( えだ ) にきれいな 羽衣 ( はごろも ) がかけてあるのを ( ) つけると、それを 炭焼き小屋 ( すみやきごや ) ( はしら ) ( あな ) ( なか ) へと ( かく ) したのです。
 そして ( ふたた ) 谷川 ( たにがわ ) ( ) くと、 ( はだか ) 天女 ( てんにょ ) ( てん ) ( ) つめながら 途方 ( とほう ) ( ) れていました。
「あの、そこで ( なに ) をしているのですか?」
  小五郎 ( こごろう ) ( こえ ) をかけると、 天女 ( てんにょ ) ( ) ( なみだ ) ( ) かべて ( ) いました。
「わたしは 天女 ( てんにょ ) なのですが、 ( てん ) ( かえ ) ( ため ) 羽衣 ( はごろも ) ( ) くしてしまい、どうする ( こと ) 出来 ( でき ) ないのです」
 すると 小五郎 ( こごろう ) が、 天女 ( てんにょ ) ( ) いました。
「よければ、わしの ( いえ ) ( ) らさないか?」
「・・・はい、お 世話 ( せわ ) になります」
 こうして 天女 ( てんにょ ) 小五郎 ( こごろう ) ( いえ ) ( ) ( こと ) となり、そのまま 小五郎 ( こごろう ) 女房 ( にょうぼう ) になったのです。

 やがて 小五郎 ( こごろう ) 天女 ( てんにょ ) ( あいだ ) には 男の子 ( おとこのこ ) ( ) まれて、その ( ) 三歳 ( 3さい ) になりました。
  女房 ( にょうぼう ) ( うつく ) しいし、 ( ) どもは 可愛 ( かわい ) いし、 小五郎 ( こごろう ) 毎日 ( まいにち ) ( たの ) しくてなりません。
 そんなある ( ) ( こと ) ( ) どもが 小五郎 ( こごろう ) ( かく ) していた 天女 ( てんにょ ) 羽衣 ( はごろも ) ( ) つけたのです。
( かあ ) ちゃん、こんなきれいな 着物 ( きもの ) が、 炭焼き小屋 ( すみやきごや ) ( かく ) してあったよ」
「・・・・・・!」
  ( ) どもからそれを ( ) いた 天女 ( てんにょ ) は、しばらく 言葉 ( ことば ) ( ) せずに ( ) ちつくしていましたが、やがてその 羽衣 ( はごろも ) ( ) にまとうと ( ) どもを ( ) いて ( てん ) へと ( のぼ ) っていったのです。

 その ( ) 夕方 ( ゆうがた ) 仕事 ( しごと ) から ( かえ ) ってきた 小五郎 ( こごろう ) は、 ( いえ ) 天女 ( てんにょ ) ( ) どももいないのでびっくりしました。
「こんな 時間 ( じかん ) に、どこへ ( ) ったのだろう? ・・・はっ! もしや」
  小五郎 ( こごろう ) があわてて 羽衣 ( はごろも ) ( かく ) した ( はしら ) ( あな ) ( ) ると、やっぱり 羽衣 ( はごろも ) がありませんでした。
  一人 ( ひとり ) ぼっちになった 小五郎 ( こごろう ) は、 天女 ( てんにょ ) ( ) ども 名前 ( なまえ ) ( ) んで 毎日 ( まいにち ) 泣き暮 ( なきく ) らしました。

 そんなある ( ) ( こと ) ( まえ ) 小五郎 ( こごろう ) ( たす ) けたキツネが ( ふたた ) びやって ( ) たのです。
小五郎 ( こごろう ) さん。 ( ふたた ) 天女 ( てんにょ ) ( ) どもに ( ) いたいのなら、 ( とり ) ( はね ) ( かさ ) ( つく ) るといいでしょう。わたしがそれを、 ( てん ) まで ( ) ( ) ばしてあげます」
 そこで 小五郎 ( こごろう ) ( とり ) ( はね ) ( おお ) きな ( かさ ) ( つく ) ると、 仲間 ( なかま ) 引き連 ( ひきつ ) れたキツネがその ( かさ ) 一斉 ( いっせい ) ( いき ) ( ) きかけて、 小五郎 ( こごろう ) 空高 ( そらたか ) くに ( ) ( ) ばしてくれたのです。

  空高 ( そらたか ) くに 舞い上 ( まいあ ) がった 小五郎 ( こごろう ) は、そのまま ( かぜ ) ( ) って 天界 ( てんかい ) へとたどり ( ) きました。
 しかし 天界 ( てんかい ) ( ひろ ) すぎて、どこへ ( ) ったらいいのかわかりません。
「ああ、これからどうしたら ( ) いのだろう?」
  小五郎 ( こごろう ) 途方 ( とほう ) ( ) れていると、 ( きゅう ) ( うし ) ろから ( ) どもの ( こえ ) がしました。
「あっ、 ( とう ) ちゃんだ!  ( かあ ) ちゃん、 ( とう ) ちゃんが ( ) ているよ!」
 すると、その ( こえ ) をききつけた 天女 ( てんにょ ) ( はし ) って ( ) ました。
 こうして 三人 ( 3にん ) 親子 ( おやこ ) は、 ( ふたた ) 出会 ( であ ) ( こと ) 出来 ( でき ) たのです。
  天女 ( てんにょ ) が、 小五郎 ( こごろう ) ( ) いました。
「あなたが 羽衣 ( はごろも ) ( かく ) したと ( ) った ( とき ) 、つい ( はら ) ( ) って ( ) どもと 一緒 ( いっしょ ) 天界 ( てんかい ) ( かえ ) って ( ) ましたが、あれからあなたを ( わす ) れた ( こと ) はありません。
 あなたに、 ( ) いとうございました。
 これから、この 天界 ( てんかい ) 親子三人 ( おやこ3にん ) ( ) らしましょう。
 しかし、わたしの ( はは ) は、あなたを ( ) くは ( おも ) ってはおりません。
 あなたに 色々 ( いろいろ ) ( むずか ) しい 仕事 ( しごと ) ( ) いつけるでしょうが、わたしが ( たす ) けますから、どうか ( なに ) ( ) いつけられても ( おこ ) らないで ( くだ ) さい」
「ああ、 三人 ( 3にん ) ( ) らせるのなら、 ( なに ) ( ) われても 文句 ( もんく ) ( ) わない」

  ( つぎ ) ( あさ ) 天女 ( てんにょ ) 母親 ( ははおや ) 小五郎 ( こごろう ) ( ) いつけました。
山奥 ( やまおく ) にある 大岩 ( おおいわ ) を、お ( まえ ) 一人 ( ひとり ) ( ちから ) でかついで ( ) なさい」
大岩 ( おおいわ ) をですか?」
  小五郎 ( こごろう ) ( こま ) っていると、 天女 ( てんにょ ) がやって ( ) ( ) いました。
「あなた、わたしが 大岩 ( おおいわ ) 張り子 ( はりこ ) ( いわ ) 取り替 ( とりか ) えておきますから、あなたは ( はは ) ( まえ ) だけ ( おも ) そうな 身振 ( みぶ ) りで ( ) って ( ) ( くだ ) さい」
 そこで 小五郎 ( こごろう ) 天女 ( てんにょ ) 用意 ( ようい ) した 張り子 ( はりこ ) 大岩 ( おおいわ ) を、いかにも ( おも ) そうにかついで ( もど ) りました。
 すると、 天女 ( てんにょ ) 母親 ( ははおや ) は、
「ふん。 人間 ( にんげん ) にしては、 ( ちから ) があるようね。では 山奥 ( やまおく ) ( おお ) きな ( はやし ) があるから、その ( はやし ) ( ) をみんな 切り倒 ( きりたお ) して、 ( うし ) につけて ( ) いて ( ) なさい」
と、また 仕事 ( しごと ) ( ) いつけたのです。
( はやし ) ( ) を、 一人 ( ひとり ) 切り倒 ( きりたお ) すなんて・・・」
  小五郎 ( こごろう ) ( こま ) っていると、 天女 ( てんにょ ) がやって ( ) ( ) いました。
「ひと ( ) りで 千本 ( せんぼん ) ( ) 切り倒 ( きりたお ) せる ( たから ) ( おの ) があります。 ( ) って ( ) きますから、あなたは ( さき ) ( はやし ) ( ) って ( くだ ) さい」
 そこで ( さき ) ( はやし ) ( ) った 小五郎 ( こごろう ) ( ) 切り株 ( きりかぶ ) ( やす ) んでいると、 天女 ( てんにょ ) ( たから ) ( おの ) ( ) って ( ) てくれました。
  小五郎 ( こごろう ) がその ( おの ) ( かる ) 振り回 ( ふりまわ ) すと、 ( はやし ) ( ) はたちまち 切り倒 ( きりたお ) されてしまいました。
 それを 小五郎 ( こごろう ) ( うし ) ( ) かせて ( いえ ) ( もど ) ると、 母親 ( ははおや ) はまた、
「では ( つぎ ) に、 ( あわ ) (あわ)を 二俵 ( 2ひょう ) ( はん ) ( うし ) につけて ( やま ) ( はたけ ) ( ) って ( ) って、それを 一面 ( いちめん ) にまきなさい」
と、 仕事 ( しごと ) ( ) いつけたのです。
  今度 ( こんど ) 簡単 ( かんたん ) 仕事 ( しごと ) だと ( おも ) って 小五郎 ( こごろう ) ( よろこ ) んでいると、 天女 ( てんにょ ) がやって ( ) ( ) いました。
( はは ) が、この ( つぎ ) ( ) いつける 仕事 ( しごと ) ( ) かっています。あなたは ( はたけ ) ( ) って ( ) った ( あわ ) をまかずに、 ( はたけ ) ( すみ ) にでも ( ) いておいてください」
 そこで 小五郎 ( こごろう ) ( やま ) ( はたけ ) 二俵 ( 2ひょう ) ( はん ) ( あわ ) ( はこ ) ぶと、そのまま ( はたけ ) ( すみ ) ( ) いて ( かえ ) りました。
 すると 母親 ( ははおや ) は、 ( つぎ ) にこう ( ) いました。
「では ( つぎ ) に、さっきまいた ( あわ ) 一粒 ( ひとつぶ ) ( のこ ) らず、 持って帰 ( もってかえ ) って ( ) るのです」
 さっきは ( あわ ) をまかずに ( ) いてきたので、 小五郎 ( こごろう ) はその 仕事 ( しごと ) 簡単 ( かんたん ) にやり ( ) げる ( こと ) 出来 ( でき ) ました。
 それを ( ) 母親 ( ははおや ) は、 ( ) ( まる ) くして ( ) いました。
「まあ、お ( まえ ) ほど 仕事 ( しごと ) 出来 ( でき ) 婿 ( むこ ) は、この 天界 ( てんかい ) にもそう ( おお ) くはいないでしょう。
  正直 ( しょうじき ) 見直 ( みなお ) しましたよ。
 では、 最後 ( さいご ) 仕事 ( しごと ) です。
 カラスがウリ ( ばたけ ) のウリにイタズラをするので ( こま ) っています。
  明日 ( あした ) ( あさ ) から ( ばん ) まで、ウリ ( ばたけ ) ( ばん ) をしていなさい」
 するとそれを ( ) いた 天女 ( てんにょ ) が、うれしそうに ( ) いました。
「この 仕事 ( しごと ) ( ) われば、わたしたちは 平和 ( へいわ ) ( ) らす ( こと ) 出来 ( でき ) るでしょう。
  頑張 ( がんば ) って ( くだ ) さいね。
 でも、わたしがお ( ひる ) にお 弁当 ( べんとう ) ( ) って ( ) くまでは、どんな ( こと ) があってもウリに ( ) をつけないで ( くだ ) さいね」

  ( つぎ ) ( ) 小五郎 ( こごろう ) はウリ ( ばたけ ) でウリの ( ばん ) をしていたのですが、なぜか ( のど ) ( かわ ) いて 仕方 ( しかた ) ありません。
 そこで 小五郎 ( こごろう ) 天女 ( てんにょ ) があれほど ( ) っていたのを ( わす ) れてウリを ( ひと ) ( ) ると、それを ( ふた ) つに ( ) って ( ) べようとしたのです。
 するとそのウリから、 ( みず ) 津波 ( つなみ ) のようにわき ( ) てきました。
  ( じつ ) 天界 ( てんかい ) のウリは ( ) べるためのウリではなく、 地上 ( ちじょう ) ( ) らす ( あめ ) ( ) まった 雨壺 ( あまつぼ ) だったのです。
  天女 ( てんにょ ) がお 弁当 ( べんとう ) ( ) って ( ) ( とき ) には、 小五郎 ( こごろう ) はウリからあふれ ( ) ( みず ) ( なが ) されて ( ) くところでした。
「あなたー! もう ( すこ ) しの ( あいだ ) 頑張 ( がんば ) って ( くだ ) さい!」
  天女 ( てんにょ ) ( いそ ) いで ( いえ ) ( かえ ) ると、 ( たけ ) 短冊 ( たんざく ) ( ) って ( もど ) って ( ) ました。
 そして、
( ) びなさい》
と、 願い事 ( ねがいごと ) ( ) いた 短冊 ( たんざく ) ( たけ ) ( むす ) びつけると、 天女 ( てんにょ ) ( たけ ) 小五郎 ( こごろう ) 差し出 ( さしだ ) しました。
  天女 ( てんにょ ) 差し出 ( さしだ ) した ( たけ ) 短冊 ( たんざく ) ( ) いた 願い事 ( ねがいごと ) ( どお ) りに、 小五郎 ( こごろう ) めがけてどんどん ( ) びていきますが、 後一歩 ( あといっぽ ) ( ところ ) 力尽 ( ちからつ ) きた 小五郎 ( こごろう ) は、そのまま ( なが ) れに ( なが ) されてしまいました。
 そこで 天女 ( てんにょ ) が、 ( こえ ) をかぎりに ( さけ ) びました。
「あなたー!  ( はは ) ( たの ) んで、 ( つき ) 七日 ( なのか ) ( みず ) ( なが ) れを ( ) めてもらいます。その ( とき ) ( ) いましょう!」
 ところが 小五郎 ( こごろう ) は、それを 七月 ( しちがつ ) 七日 ( なのか ) ( ) 間違 ( まちが ) えてしまったのです。
「わかった、 七月 ( しちがつ ) 七日 ( なのか ) だな!」
 こうして 二人 ( ふたり ) は、 一年 ( いちねん ) のうちで 七月 ( しちがつ ) 七日 ( なのか ) だけにしか ( ) えなくなったのです。

おしまい

前のページへ戻る

福娘の姉妹サイト

http://hukumusume.com

366日への旅
毎日の記念日などを紹介
福娘童話集
日本最大の童話・昔話集
さくら SAKURA
女の子向け職業紹介など
なぞなぞ小学校
小学生向けなぞなぞ