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7月7日の日本民話 2



七夕女房 ( たなばたにょうぼう )
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投稿者　眠れる森のくま

　むかしむかし、 猟師 ( りょうし ) に 追 ( お ) われたキツネが、 炭焼 ( すみや ) きをしている 小五郎 ( こごろう ) の 炭焼き小屋 ( すみやきごや ) に 飛び込 ( とびこ ) んで 来 ( き ) ました。
　キツネは、びっくりしている 小五郎 ( こごろう ) に 手 ( て ) を 合 ( あ ) わせて 言 ( い ) いました。
「 小五郎 ( こごろう ) さん、どうか 今日 ( きょう ) の 所 ( ところ ) は 見逃 ( みのが ) して 下 ( くだ ) さい。 必 ( かなら ) ず、このお 礼 ( れい ) はしますから」
　そこで 小五郎 ( こごろう ) は、キツネを 裏口 ( うらぐち ) から 逃 ( に ) がしてやったのです。

　それから 数日後 ( すうにちご ) 、あの 時 ( とき ) のキツネが 小五郎 ( こごろう ) の 所 ( ところ ) へやって 来 ( き ) て 言 ( い ) いました。
「あの 時 ( とき ) は、お 世話 ( せわ ) になりました。さて、 約束 ( やくそく ) のお 礼 ( れい ) ですが、あなたにお 嫁 ( よめ ) さんをお 世話 ( せわ ) したいと 思 ( おも ) います」
「 嫁 ( よめ ) さんを？」
「はい。この 頃 ( ごろ ) 、この 近 ( ちか ) くの 谷川 ( たにがわ ) へ、 天 ( てん ) から 天女 ( てんにょ ) が 水浴 ( みずあ ) びにやって 来 ( く ) るのです。
　 天女 ( てんにょ ) は 水浴 ( みずあ ) びをする 時 ( とき ) に、 着 ( き ) ていた 羽衣 ( はごろも ) を 脱 ( ぬ ) いで 木 ( き ) に 引 ( ひ ) っかけますから、それをあなたが 隠 ( かく ) してしまうのです。
　 天女 ( てんにょ ) は 羽衣 ( はごろも ) がないと 天 ( てん ) に 帰 ( かえ ) れませんから、 行 ( い ) く 当 ( あ ) てのない 天女 ( てんにょ ) はあなたのお 嫁 ( よめ ) さんになってくれるでしょう」

　 次 ( つぎ ) の 日 ( ひ ) 、 小五郎 ( こごろう ) がキツネに 教 ( おし ) えてもらった 谷川 ( たにがわ ) に 行 ( い ) ってみると、 一人 ( ひとり ) の 美 ( うつく ) しい 天女 ( てんにょ ) が 谷川 ( たにがわ ) で 楽 ( たの ) しそうに 水浴 ( みずあ ) びをしていました。
　 小五郎 ( こごろう ) は 近 ( ちか ) くの 木 ( き ) の 枝 ( えだ ) にきれいな 羽衣 ( はごろも ) がかけてあるのを 見 ( み ) つけると、それを 炭焼き小屋 ( すみやきごや ) の 柱 ( はしら ) の 穴 ( あな ) の 中 ( なか ) へと 隠 ( かく ) したのです。
　そして 再 ( ふたた ) び 谷川 ( たにがわ ) へ 行 ( い ) くと、 裸 ( はだか ) の 天女 ( てんにょ ) が 天 ( てん ) を 見 ( み ) つめながら 途方 ( とほう ) に 暮 ( く ) れていました。
「あの、そこで 何 ( なに ) をしているのですか？」
　 小五郎 ( こごろう ) が 声 ( こえ ) をかけると、 天女 ( てんにょ ) は 目 ( め ) に 涙 ( なみだ ) を 浮 ( う ) かべて 言 ( い ) いました。
「わたしは 天女 ( てんにょ ) なのですが、 天 ( てん ) へ 帰 ( かえ ) る 為 ( ため ) の 羽衣 ( はごろも ) を 無 ( な ) くしてしまい、どうする 事 ( こと ) も 出来 ( でき ) ないのです」
　すると 小五郎 ( こごろう ) が、 天女 ( てんにょ ) に 言 ( い ) いました。
「よければ、わしの 家 ( いえ ) で 暮 ( く ) らさないか？」
「・・・はい、お 世話 ( せわ ) になります」
　こうして 天女 ( てんにょ ) は 小五郎 ( こごろう ) の 家 ( いえ ) に 住 ( す ) む 事 ( こと ) となり、そのまま 小五郎 ( こごろう ) の 女房 ( にょうぼう ) になったのです。

　やがて 小五郎 ( こごろう ) と 天女 ( てんにょ ) の 間 ( あいだ ) には 男の子 ( おとこのこ ) が 生 ( う ) まれて、その 子 ( こ ) が 三歳 ( ３さい ) になりました。
　 女房 ( にょうぼう ) は 美 ( うつく ) しいし、 子 ( こ ) どもは 可愛 ( かわい ) いし、 小五郎 ( こごろう ) は 毎日 ( まいにち ) が 楽 ( たの ) しくてなりません。
　そんなある 日 ( ひ ) の 事 ( こと ) 、 子 ( こ ) どもが 小五郎 ( こごろう ) の 隠 ( かく ) していた 天女 ( てんにょ ) の 羽衣 ( はごろも ) を 見 ( み ) つけたのです。
「 母 ( かあ ) ちゃん、こんなきれいな 着物 ( きもの ) が、 炭焼き小屋 ( すみやきごや ) に 隠 ( かく ) してあったよ」
「・・・・・・！」
　 子 ( こ ) どもからそれを 聞 ( き ) いた 天女 ( てんにょ ) は、しばらく 言葉 ( ことば ) も 出 ( だ ) せずに 立 ( た ) ちつくしていましたが、やがてその 羽衣 ( はごろも ) を 身 ( み ) にまとうと 子 ( こ ) どもを 抱 ( だ ) いて 天 ( てん ) へと 登 ( のぼ ) っていったのです。

　その 日 ( ひ ) の 夕方 ( ゆうがた ) 、 仕事 ( しごと ) から 帰 ( かえ ) ってきた 小五郎 ( こごろう ) は、 家 ( いえ ) に 天女 ( てんにょ ) も 子 ( こ ) どももいないのでびっくりしました。
「こんな 時間 ( じかん ) に、どこへ 行 ( い ) ったのだろう？　・・・はっ！　もしや」
　 小五郎 ( こごろう ) があわてて 羽衣 ( はごろも ) を 隠 ( かく ) した 柱 ( はしら ) の 穴 ( あな ) を 見 ( み ) ると、やっぱり 羽衣 ( はごろも ) がありませんでした。
　 一人 ( ひとり ) ぼっちになった 小五郎 ( こごろう ) は、 天女 ( てんにょ ) と 子 ( こ ) ども 名前 ( なまえ ) を 呼 ( よ ) んで 毎日 ( まいにち ) 泣き暮 ( なきく ) らしました。

　そんなある 日 ( ひ ) の 事 ( こと ) 、 前 ( まえ ) に 小五郎 ( こごろう ) が 助 ( たす ) けたキツネが 再 ( ふたた ) びやって 来 ( き ) たのです。
「 小五郎 ( こごろう ) さん。 再 ( ふたた ) び 天女 ( てんにょ ) や 子 ( こ ) どもに 会 ( あ ) いたいのなら、 鳥 ( とり ) の 羽 ( はね ) で 傘 ( かさ ) を 作 ( つく ) るといいでしょう。わたしがそれを、 天 ( てん ) まで 吹 ( ふ ) き 飛 ( と ) ばしてあげます」
　そこで 小五郎 ( こごろう ) が 鳥 ( とり ) の 羽 ( はね ) で 大 ( おお ) きな 傘 ( かさ ) を 作 ( つく ) ると、 仲間 ( なかま ) を 引き連 ( ひきつ ) れたキツネがその 傘 ( かさ ) へ 一斉 ( いっせい ) に 息 ( いき ) を 吹 ( ふ ) きかけて、 小五郎 ( こごろう ) を 空高 ( そらたか ) くに 吹 ( ふ ) き 飛 ( と ) ばしてくれたのです。

　 空高 ( そらたか ) くに 舞い上 ( まいあ ) がった 小五郎 ( こごろう ) は、そのまま 風 ( かぜ ) に 乗 ( の ) って 天界 ( てんかい ) へとたどり 着 ( つ ) きました。
　しかし 天界 ( てんかい ) は 広 ( ひろ ) すぎて、どこへ 行 ( い ) ったらいいのかわかりません。
「ああ、これからどうしたら 良 ( よ ) いのだろう？」
　 小五郎 ( こごろう ) が 途方 ( とほう ) に 暮 ( く ) れていると、 急 ( きゅう ) に 後 ( うし ) ろから 子 ( こ ) どもの 声 ( こえ ) がしました。
「あっ、 父 ( とう ) ちゃんだ！　 母 ( かあ ) ちゃん、 父 ( とう ) ちゃんが 来 ( き ) ているよ！」
　すると、その 声 ( こえ ) をききつけた 天女 ( てんにょ ) が 走 ( はし ) って 来 ( き ) ました。
　こうして 三人 ( ３にん ) の 親子 ( おやこ ) は、 再 ( ふたた ) び 出会 ( であ ) う 事 ( こと ) が 出来 ( でき ) たのです。
　 天女 ( てんにょ ) が、 小五郎 ( こごろう ) に 言 ( い ) いました。
「あなたが 羽衣 ( はごろも ) を 隠 ( かく ) したと 知 ( し ) った 時 ( とき ) 、つい 腹 ( はら ) が 立 ( た ) って 子 ( こ ) どもと 一緒 ( いっしょ ) に 天界 ( てんかい ) へ 帰 ( かえ ) って 来 ( き ) ましたが、あれからあなたを 忘 ( わす ) れた 事 ( こと ) はありません。
　あなたに、 会 ( あ ) いとうございました。
　これから、この 天界 ( てんかい ) で 親子三人 ( おやこ３にん ) 暮 ( く ) らしましょう。
　しかし、わたしの 母 ( はは ) は、あなたを 良 ( よ ) くは 思 ( おも ) ってはおりません。
　あなたに 色々 ( いろいろ ) と 難 ( むずか ) しい 仕事 ( しごと ) を 言 ( い ) いつけるでしょうが、わたしが 助 ( たす ) けますから、どうか 何 ( なに ) を 言 ( い ) いつけられても 怒 ( おこ ) らないで 下 ( くだ ) さい」
「ああ、 三人 ( ３にん ) で 暮 ( く ) らせるのなら、 何 ( なに ) を 言 ( い ) われても 文句 ( もんく ) は 言 ( い ) わない」

　 次 ( つぎ ) の 朝 ( あさ ) 、 天女 ( てんにょ ) の 母親 ( ははおや ) が 小五郎 ( こごろう ) に 言 ( い ) いつけました。
「 山奥 ( やまおく ) にある 大岩 ( おおいわ ) を、お 前 ( まえ ) 一人 ( ひとり ) の 力 ( ちから ) でかついで 来 ( き ) なさい」
「 大岩 ( おおいわ ) をですか？」
　 小五郎 ( こごろう ) が 困 ( こま ) っていると、 天女 ( てんにょ ) がやって 来 ( き ) て 言 ( い ) いました。
「あなた、わたしが 大岩 ( おおいわ ) を 張り子 ( はりこ ) の 岩 ( いわ ) と 取り替 ( とりか ) えておきますから、あなたは 母 ( はは ) の 前 ( まえ ) だけ 重 ( おも ) そうな 身振 ( みぶ ) りで 持 ( も ) って 来 ( き ) て 下 ( くだ ) さい」
　そこで 小五郎 ( こごろう ) は 天女 ( てんにょ ) が 用意 ( ようい ) した 張り子 ( はりこ ) の 大岩 ( おおいわ ) を、いかにも 重 ( おも ) そうにかついで 戻 ( もど ) りました。
　すると、 天女 ( てんにょ ) の 母親 ( ははおや ) は、
「ふん。 人間 ( にんげん ) にしては、 力 ( ちから ) があるようね。では 山奥 ( やまおく ) に 大 ( おお ) きな 林 ( はやし ) があるから、その 林 ( はやし ) の 木 ( き ) をみんな 切り倒 ( きりたお ) して、 牛 ( うし ) につけて 引 ( ひ ) いて 来 ( き ) なさい」
と、また 仕事 ( しごと ) を 言 ( い ) いつけたのです。
「 林 ( はやし ) の 木 ( き ) を、 一人 ( ひとり ) で 切り倒 ( きりたお ) すなんて・・・」
　 小五郎 ( こごろう ) が 困 ( こま ) っていると、 天女 ( てんにょ ) がやって 来 ( き ) て 言 ( い ) いました。
「ひと 振 ( ふ ) りで 千本 ( せんぼん ) の 木 ( き ) を 切り倒 ( きりたお ) せる 宝 ( たから ) の 斧 ( おの ) があります。 持 ( も ) って 行 ( い ) きますから、あなたは 先 ( さき ) に 林 ( はやし ) へ 行 ( い ) って 下 ( くだ ) さい」
　そこで 先 ( さき ) に 林 ( はやし ) へ 行 ( い ) った 小五郎 ( こごろう ) が 木 ( き ) の 切り株 ( きりかぶ ) で 休 ( やす ) んでいると、 天女 ( てんにょ ) が 宝 ( たから ) の 斧 ( おの ) を 持 ( も ) って 来 ( き ) てくれました。
　 小五郎 ( こごろう ) がその 斧 ( おの ) を 軽 ( かる ) く 振り回 ( ふりまわ ) すと、 林 ( はやし ) の 木 ( き ) はたちまち 切り倒 ( きりたお ) されてしまいました。
　それを 小五郎 ( こごろう ) が 牛 ( うし ) に 引 ( ひ ) かせて 家 ( いえ ) に 戻 ( もど ) ると、 母親 ( ははおや ) はまた、
「では 次 ( つぎ ) に、 粟 ( あわ ) (あわ)を 二俵 ( ２ひょう ) 半 ( はん ) 、 牛 ( うし ) につけて 山 ( やま ) の 畑 ( はたけ ) へ 持 ( も ) って 行 ( い ) って、それを 一面 ( いちめん ) にまきなさい」
と、 仕事 ( しごと ) を 言 ( い ) いつけたのです。
　 今度 ( こんど ) は 簡単 ( かんたん ) な 仕事 ( しごと ) だと 思 ( おも ) って 小五郎 ( こごろう ) が 喜 ( よろこ ) んでいると、 天女 ( てんにょ ) がやって 来 ( き ) て 言 ( い ) いました。
「 母 ( はは ) が、この 次 ( つぎ ) に 言 ( い ) いつける 仕事 ( しごと ) は 分 ( わ ) かっています。あなたは 畑 ( はたけ ) へ 持 ( も ) って 行 ( い ) った 粟 ( あわ ) をまかずに、 畑 ( はたけ ) の 隅 ( すみ ) にでも 置 ( お ) いておいてください」
　そこで 小五郎 ( こごろう ) は 山 ( やま ) の 畑 ( はたけ ) へ 二俵 ( ２ひょう ) 半 ( はん ) の 粟 ( あわ ) を 運 ( はこ ) ぶと、そのまま 畑 ( はたけ ) の 隅 ( すみ ) に 置 ( お ) いて 帰 ( かえ ) りました。
　すると 母親 ( ははおや ) は、 次 ( つぎ ) にこう 言 ( い ) いました。
「では 次 ( つぎ ) に、さっきまいた 粟 ( あわ ) を 一粒 ( ひとつぶ ) 残 ( のこ ) らず、 持って帰 ( もってかえ ) って 来 ( く ) るのです」
　さっきは 粟 ( あわ ) をまかずに 置 ( お ) いてきたので、 小五郎 ( こごろう ) はその 仕事 ( しごと ) も 簡単 ( かんたん ) にやり 遂 ( と ) げる 事 ( こと ) が 出来 ( でき ) ました。
　それを 見 ( み ) た 母親 ( ははおや ) は、 目 ( め ) を 丸 ( まる ) くして 言 ( い ) いました。
「まあ、お 前 ( まえ ) ほど 仕事 ( しごと ) の 出来 ( でき ) る 婿 ( むこ ) は、この 天界 ( てんかい ) にもそう 多 ( おお ) くはいないでしょう。
　 正直 ( しょうじき ) 、 見直 ( みなお ) しましたよ。
　では、 最後 ( さいご ) の 仕事 ( しごと ) です。
　カラスがウリ 畑 ( ばたけ ) のウリにイタズラをするので 困 ( こま ) っています。
　 明日 ( あした ) の 朝 ( あさ ) から 晩 ( ばん ) まで、ウリ 畑 ( ばたけ ) の 番 ( ばん ) をしていなさい」
　するとそれを 聞 ( き ) いた 天女 ( てんにょ ) が、うれしそうに 言 ( い ) いました。
「この 仕事 ( しごと ) が 終 ( お ) われば、わたしたちは 平和 ( へいわ ) に 暮 ( く ) らす 事 ( こと ) が 出来 ( でき ) るでしょう。
　 頑張 ( がんば ) って 下 ( くだ ) さいね。
　でも、わたしがお 昼 ( ひる ) にお 弁当 ( べんとう ) を 持 ( も ) って 行 ( い ) くまでは、どんな 事 ( こと ) があってもウリに 手 ( て ) をつけないで 下 ( くだ ) さいね」

　 次 ( つぎ ) の 日 ( ひ ) 、 小五郎 ( こごろう ) はウリ 畑 ( ばたけ ) でウリの 番 ( ばん ) をしていたのですが、なぜか 喉 ( のど ) が 渇 ( かわ ) いて 仕方 ( しかた ) ありません。
　そこで 小五郎 ( こごろう ) は 天女 ( てんにょ ) があれほど 言 ( い ) っていたのを 忘 ( わす ) れてウリを 一 ( ひと ) つ 取 ( と ) ると、それを 二 ( ふた ) つに 割 ( わ ) って 食 ( た ) べようとしたのです。
　するとそのウリから、 水 ( みず ) が 津波 ( つなみ ) のようにわき 出 ( で ) てきました。
　 実 ( じつ ) は 天界 ( てんかい ) のウリは 食 ( た ) べるためのウリではなく、 地上 ( ちじょう ) へ 降 ( ふ ) らす 雨 ( あめ ) が 詰 ( つ ) まった 雨壺 ( あまつぼ ) だったのです。
　 天女 ( てんにょ ) がお 弁当 ( べんとう ) を 持 ( も ) って 来 ( き ) た 時 ( とき ) には、 小五郎 ( こごろう ) はウリからあふれ 出 ( で ) た 水 ( みず ) に 流 ( なが ) されて 行 ( い ) くところでした。
「あなたー！　もう 少 ( すこ ) しの 間 ( あいだ ) 、 頑張 ( がんば ) って 下 ( くだ ) さい！」
　 天女 ( てんにょ ) は 急 ( いそ ) いで 家 ( いえ ) に 帰 ( かえ ) ると、 竹 ( たけ ) と 短冊 ( たんざく ) を 持 ( も ) って 戻 ( もど ) って 来 ( き ) ました。
　そして、
《 伸 ( の ) びなさい》
と、 願い事 ( ねがいごと ) を 書 ( か ) いた 短冊 ( たんざく ) を 竹 ( たけ ) に 結 ( むす ) びつけると、 天女 ( てんにょ ) は 竹 ( たけ ) を 小五郎 ( こごろう ) に 差し出 ( さしだ ) しました。
　 天女 ( てんにょ ) が 差し出 ( さしだ ) した 竹 ( たけ ) は 短冊 ( たんざく ) に 書 ( か ) いた 願い事 ( ねがいごと ) 通 ( どお ) りに、 小五郎 ( こごろう ) めがけてどんどん 伸 ( の ) びていきますが、 後一歩 ( あといっぽ ) の 所 ( ところ ) で 力尽 ( ちからつ ) きた 小五郎 ( こごろう ) は、そのまま 流 ( なが ) れに 流 ( なが ) されてしまいました。
　そこで 天女 ( てんにょ ) が、 声 ( こえ ) をかぎりに 叫 ( さけ ) びました。
「あなたー！　 母 ( はは ) に 頼 ( たの ) んで、 月 ( つき ) の 七日 ( なのか ) に 水 ( みず ) の 流 ( なが ) れを 止 ( と ) めてもらいます。その 時 ( とき ) に 会 ( あ ) いましょう！」
　ところが 小五郎 ( こごろう ) は、それを 七月 ( しちがつ ) 七日 ( なのか ) と 聞 ( き ) き 間違 ( まちが ) えてしまったのです。
「わかった、 七月 ( しちがつ ) 七日 ( なのか ) だな！」
　こうして 二人 ( ふたり ) は、 一年 ( いちねん ) のうちで 七月 ( しちがつ ) 七日 ( なのか ) だけにしか 会 ( あ ) えなくなったのです。

おしまい