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10月3日の日本民話 2
正念塚
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むかしむかし、正念という修行僧が、初瀬街道(はせかいどう)の上田辺(かみたぬい)の茶屋(ちゃや:地名)にさしかかったところで、急に気を失って倒れてしまいました。
「もし、大丈夫ですか?」
見つけた村人が声をかけましたが、返事はありません。
「おーい、誰か手を貸してくれー!」
村人は倒れた正念を自分の家に連れて帰ると、手厚い看護をしました。
そのお陰で正念は、みるみる元気を取り戻したのです。
元気になった正念は村人に助けてくれたお礼をしようと思いましたが、貧乏な長旅だったので何のお礼も出来ません。
そこで正念は初瀬街道を往き来する旅人たちの安全を祈って、人柱に立とうと決心したのです。
人柱とは自分の命を犠牲に、お城や橋を守ったり、人の幸福を願い儀式の事です。
それを聞いた村人たちは、あわてて正念を止めました。
「なにも、人柱にならなくても」
「そうですよ。せっかく元気になられたのに」
「お坊さまは、このまま旅を続けて下さい」
しかし正念の決心は固くて、誰にも止める事が出来ませんでした。
正念は自ら地面に穴を掘って節を抜いた青竹をさし込み、地面の中で死ぬまでお経を唱え続ける事にしました。
心配した村人たちが竹筒から中の様子をうかがいますが、正念は休む事なく、ひたすらお経を唱え続けます。
そして数日が過ぎたある日、正念のお経は止まっていました。
村人たちは正念の気高い死を語り続けるため、その場所に塚を築いて正念の供養をしたという事です。
おしまい
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