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7月16日の世界の昔話

お茶のポット

お茶のポット
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※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 「あーる」  【眠れる朗読】

♪音声配信(html5)
音声 まちゃりんの読んだり〜の♪

「こんにちわ。
 私はお茶のポットです。
 私は陶器(とうき)で出来ていますのよ。
 注ぎ口は、細くて長くてすてきでしょう。
 いつでしたか、どなたかがバレリーナのうでのようと、ほめてくださいましたわ。
 とってのはばの広さは、どう思いまして?
 何と申しましても、陶器は私のように上品(じょうひん)で、しかもおしゃれでなくては。
 何しろ私は、一流(いちりゅう)の職人(しょくにん)さんが、それはそれはていねいに作ってくださいましたのよ」
 お屋敷の台所で、お茶のポットはいつもじまんしていました。
 でも聞かされるクリーム入れやさとう入れは、ほめるよりも、もっと別の事をよく言いました。
「ところで、ポットさんのフタはどうされました?」
 その事を言われると、ポットはだまってしまいます。
 フタは前に一度こわされてつぎはぎにされ、つぎ目があるのです。
「そうね。
 誰でも悪いところに、目が行くものよね。
 でも何と言われても、私はテーブルの上の女王よ。
 だって、のどがかわいている人間を、助けてあげることが出来るんですもの。
 この注ぎ口が、女王のしょうこよ。
 クリーム入れもさとう入れも、言ってみれば家来じゃないの」

 そんな、ある日の事。
 食事の時に誰かがポットを持ちあげたひょうしに、床に落としてしまったのです。
 ポットは床で音をたてて、コナゴナになってしまいました。

「それから私は、貧しい家の人にもらわれて行きましたの。
 そこで土を入れられ、球根(きゅうこん)をうめられましたわ。
 私は、うれしく思いました。
 なぜって、球根は私の体の中でグングンと元気に育ち、芽(め)を出したのです。
 そして朝をむかえるたびに大きくなり、ある朝、見事な花が咲きましたの。
 花は、娘のようなもの。
 まあ、お礼はもうしてくれませんでしたが、私は幸福でしたわ。
 家の人たちは花を見て、その美しさをほめてくれました。
 誰かを生かすために自分の命を使うって、うれしいことです。
 そのとき初めて、そう思いました。
 でも、家の人たちは『こんなきれいな花は、もっとすてきな植木ばちに植えた方がいいね』と、花を連れて行き、私を庭のすみに放り投げましたの。
 でも、私をかわいそうなどと思わないでくださいね。
 ええ、私には思い出が、たくさんあるのですから。
 これだけは誰にもこわしたり、放り投げたり出来ませんのよ」

おしまい

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