9月11日の世界の昔話
むかしむかし、カンチールというかしこくて小さなシカが、森で友だちと遊んでいました。 走り回った力ンチールは、のどがかわいたので、 「ちょうどいいや。あの上に乗っかれば、よく水が飲める」 もしもワニの背中だったら、乗っかったとたんにパクリと食ベられてしまいます。 「よし、棒かワニか、調ベてやろう」 「そこに浮かんでるのは、棒かな? ワニかな? 棒なら、今にひっくり返るぞ。ワニだったら、いつまでもジッとしてるけどなあ」 すると水に浮かんでいた太い物が、急に動き出しました。 そしてグラリとひっくり返って、ワニのお腹が出たのです。 「しまった。せっかく待ちぶせしていたのに、おしいことをした」 ワニはくやしがって、今度は林の中に穴をほってもぐりこみました。 「大きな穴だなあ。もしかすると、ブタさんの家かもしれないぞ」 「ウヒャァー。いつかのワニだ!」 トラはカンチールを食べようと、するどいキバをむき出して、こっちに近づいてきます。 「トラさん、いいことを教えてあげましょうか? 実はあっちの林に、ブタさんがいるんですよ」 「なに、ブタだって。それはありがたい。ブタはお前なんかより、ずっとおいしいからな。さあ、どこだ。連れて行ってくれ」 「ここです、トラさん。この穴ですよ」 でも穴はカラッポで、なにもいません。 「力ンチールめ、よくもおれをだましたな!」 するとカンチールは、近くの木を見上げていました。 するとカンチールは、木の上にぶら下がっている物を指さして言いました。 「ほら、あの木の枝にぶらさがっているでしょう。小さいけど、とってもいい音がするんですよ」 トラは背伸びをすると、木の枝にさがっている物を力いっぱいたたきました。 ところがそれは、ハチの巣だったのです。 チクリ、チクリ、チクチク。 転げ回るトラをしりめに、カンチールはどこかへ逃げてしまいました。 おしまい |
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