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12月28日の日本民話

順庵先生とふたごのキツネ

順庵先生とふたごのキツネ
茨城県の民話

 むかしむかし、ある町に名医と評判の順庵(じゅんあん)というお医者さんがいました。
 ある夜ふけの事、ちょうちんをかざした三人の若い男がやってきて、
「こんな、ま夜中にすみません。町はずれのお宮(みや)の裏(うら)にすむ長左衛門(ちょうざえもん)の奥さんのおさよが、急に産気(さんけ)づいて、いまにも生まれそうなのです。おさよはもう四十をこえていますので、とても苦しんでいます。どうか、すぐにきてください」
と、いうのです。
 順庵先生はすぐに道具をそろえると、それを若者たちに持たせて家を出ました。
 長左衛門の家につくと、大きなおなかをした奥さんが苦しそうにうなっています。
「わしが来たからには安心せい。さあ、お前さんたち、お湯をたくさんわかすんじゃ。そして道具が入ったつつみは、ここへ置いておくれ」
 順庵先生が診察(しんさつ)をしようとすると、奥さんのおさよが、きゅうに大きな声をあげました。
 すると元気な泣き声がきこえて、ふたごの男の子が生まれたのです。
「なんと、ふたごとはな。母親はすこし年をとっておるが、無事に生まれてなによりじゃ。まあ、わしはなにもせんかったがな。あははははは」
 順庵先生は、笑いながらいいました。
「いやいや、ありがとうございました。さあ先生、どうぞこちらへ」
 となりの部屋に案内されると、ごちそうの用意ができていました。
 順庵先生は長左衛門や親戚(しんせき)の人たちにお酒をつがれて、おいしそうにのんでいましたが、いつのまにか寝てしまいました。
 そしてふと目をさますと、順庵先生はお宮の前の原っぱに寝ていたのです。
「なんじゃ? ここはどこだ? ・・・そうか、ばかされたか」
 順庵先生は、自分がキツネにだまされた事を知りました。
 それから、しばらくたったある日のこと。
 順庵先生は、町の人からこんな話をききました。
「お宮の裏にすみついているキツネの中で、もう毛がぬけかけておる一番年をとったメスギツネが、このあいだ二匹の子ギツネをうんだんですわ。母親は子どもが心配で、一日じゅうそばをはなれようとしません。人間でもキツネでも、やっぱり子どもはかわいいもんですな」
「そうか。それはよかった」
 話をきいた順庵先生は、次の日、さっそくそのキツネたちを見にいったという事です。

おしまい

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