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5月22日の世界の昔話
空飛ぶじゅうたん
千夜一夜物語 → アラビアンナイトの詳細
むかしむかし、インドのある王さまには、三人の王子がいました。
王子たちの名まえは、「フーセイン」、「アリ」、「アーメッド」です。
また王さまは、なくなった兄の娘の「ヌーロニハル」もかわいがって、いっしょにお城にすまわせていました。
さてある時、とてもこまったことがおこりました。
「ヌーロニハルと結婚したいのです」
と、王子たちが三人ともいい出したのです。
でも、三人と結婚するわけにはいきません。
王さまは、考えたすえにいいました。
「では、この世で一番めずらしいものを見つけてきた者に、姫との結婚をゆるすとしよう」
そこで王子たちは、めずらしいものを探すためにべつべつに旅に出て、帰りに宿屋でおちあいました。
「ほら、ぼくのめずらしいものはこれだぞ」
三人はとくいになって、手に入れたものを見せあいました。
フーセインは、自由に空をとべるじゅうたん。
アリは、どんな遠いところでも見えるぼうえんきょう。
アーメッドは、においをかぐと病気がなおるリンゴでした。
そして三人でぼうえんきょうをのぞくと、ヌーロニハルが病気で苦しんでいるのが見えたのです。
「大変だ! すぐに帰らないと」
三人は空とぶじゅうたんにとびのって、お城ヘかけつけました。
そして魔法のリンゴのおかげで、ヌーロニハルはたちまち元気をとりもどしました。
王さまは大よろこびのあと、大よわりです。
三人の持ってきた三つの品はどれもめずらしいもので、どれもヌーロニハルを助けるのに役だったからです。
考えなおした王さまは、いいました。
「矢を一番遠くまで飛ばしたものを、姫のむこにきめるとしよう」
そこで王子たちはならんで、矢をはなちました。
アーメッドの矢が一番飛んだのですが、飛びすぎてどこかへいって見つからないので、王さまは二番目に遠くまでとばしたアリをむこにきめました。
「見つからないからだめだなんて、こんなくやしいことがあるもんか!」
アーメッドはがまんできずに、矢をさがしてどんどん歩いていきました。
矢は、山のふもとの岩の上におちていました。
「おやっ? 岩にとびらがあるぞ」
アーメッドがとびらをあけると、そこには美しい姫がたっていました。
「ようこそ、アーメッドさま。わたしはぺリパヌー姫ともうします」
アーメッドは、ひと目でぺリパヌー姫に心をひかれました。
やがて二人は結婚し、幸せな月日がすぎました。
「いちど、父上にあいにいってこよう」
ひさしぶりにお城へかえったアーメッドを見て、王さまはたいそうよろこびました。
「元気か? おまえがいなくなったあと、フーセインも空とぶじゅうたんで旅に出てしまい、さみしいかぎりだ。今はどこでくらしているのだ?」
「それはいえません。そのかわり、わたしは月に一度、お城へ帰ってまいります」
これを聞きつけて、大臣がいいました。
「王さま、アーメッドさまはヌーロニハル姫と結婚できなかったのをうらんで、今にせめてくるかもしれません」
「そんな、ばかな」
王さまは、気にもとめませんでした。
でもある日、そっと魔法使いにアーメッドをさがさせますと、魔法使いが言いました。
「王さまたいへんです! 王子さまはわたしよりずっと魔法の力がある姫と結婚して、宝石のかがやくお城にすんでいます」
王さまは、あわてました。
「そんなにすごい魔法を使えるなら、この国をのっとることなどかんたんであろう。しかし、アーメッドがそんなことをするはずが・・・」
そこへ、大臣と魔法使いがいいました。
「いいえ、王さま。アーメッドさまは必ずせめてきます。かわいそうですが、アーメッドさまに何かを失敗させて、それを理由に処刑(しょけい→死刑)しましょう」
つぎの月になり、アーメッドがきた時、王さまは大臣と魔法使いに教えられた、とんでもない注文を出しました。
「わしの軍隊がぜんぶすっぽり入ってしまい、たためば手のひらにのるような、そんなテントをもってきてくれないか」
アーメッドはおどろいて自分の城ヘ帰り、それをぺリパヌー姫にはなしました。
「お気のどくに。王さまはきっと、だれかにおどかされていらっしゃるのですね。・・・はい、これがそのテントです」
さすがは、力がある魔法使い。
姫はかんたんに、注文のテントをアーメッドにわたしたのです。
アーメッドはそれをもって、王さまのところヘいきました。
本当にテントの中に軍隊が入るのを見て、王さまのおどろいたことといったらありません。
王さまはまた、大臣と魔法使いに教えられた、むちゃなことをいいました。
「ライオンの泉の水をくんできておくれ。あれを飲むと、長生きできるそうだから」
アーメッドは、ため息をつきました。
その泉にはおそろしいライオンがいて、近づく人間を食い殺すのです。
でも話を聞いたぺリパヌー姫は、アーメッドにいいました。
「だいじょうぶですよ、アーメッド。ライオンにヒツジの肉をなげればいいのです」
アーメッドは、ライオンがヒツジの肉を食ベているあいだに、水をくむことができました。
「アーメッドは、まったくふしぎな力をもっている。・・・だが、まさか、これはだめだろう」
王さまは大臣と魔法使いに教えられた、三回目の注文を出しました。
「身長が一メートル、ひげの長さが十メートルあって、とても力持ちのじいさんをつれてきてくれ」
「今度ばかりは、もうだめだ」
まえよりふかいため息をついたアーメッドに、ぺリパヌー姫はいいました。
「ご心配なく、アーメッド」
そういったかと思うと、王さまののぞみどおりの人があらわれました。
おどろいたことに、それは姫のお兄さんのシャイパルだったのです。
アーメッド王子とシャイパルは、王さまのところへ急ぎました。
そして、
「大臣に魔法使い! 王さまをそそのかしてアーメッドを殺そうとした罪は重いぞ!」
シャイパルは鉄の棒をビュンビュンふりまわして、その風で大臣と魔法使いをまどの外にふきとばしました。
王さまは、ハッと顔をあげていいました。
「悪かったアーメッド。ゆるしておくれ」
王さまが心からあやまると、アリもヌーロニハル姫もかけよってきて、心からアーメッドをむかえました。
「それにしても、フーセインもはやくもどってくればいいのに。今ごろ空とぶじゅうたんで、どこをとんでいるんだろう?」
みんなはそういって、空を見あげました。
おしまい
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