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2008年 9月19日の新作昔話

たきつぼの女神

たきつぼの女神
島根県の民話島根県情報

 むかしむかし、あるところに、働き者の木こりのおじいさんがいました。
 ある日の事、いつものように木を切っていると、あやまってオノを滝つぼの中に落としてしまいました。
「困ったなあ。大切なオノが・・・」
 おじいさんは溜息をついて、滝つぼをのぞきこみました。
 ザザザーッ! 
と、勢いよく落ちてくる滝なので、とても潜って探せるような場所ではありません。
 オノがなくては暮らしに困るおじいさんは、どうしたらいいのかと泣きたい気持ちで座り込みました。
 そのとき、
 ザプーン!
と、音がして滝つぼからしぶきがあがり、それは美しい女の人がオノを抱いて姿を現しました。
 女の人はおじいさんに、頭を下げてこう言いました。
「私は、安長姫(やすながひめ)でございます。ここの滝つぼのふちには悪い大きなカニが来て、私はいつも苦しめられておりました。それが今、投げてくださったオノで悪い大きなカニの片腕を切り落とす事が出来ました。ありがとうございました」
 そして安長姫は、オノを渡してたのみました。
「もう一回オノを投げてくださいませ。そうして、もう片方の腕も切り落としていただきたいのです」
 おじいさんはオノを受けとると、大きくうなずきました。
 そしてもう一度オノを、滝つぼに投げ込みました。
 安長姫は滝つぼに潜り、しばらくするとうれしそうな顔を見せました。
「ありがとうございました。これでもう安心です」
 安長姫は、おじいさんにオノを返しました。
 おじいさんも、
「よかった。よかった」
と、オノを受け取り、家へ帰って行きました。
 それから何日かして、川下ではさみのない大きなカニが見つかりました。
 おじいさんは村の人たちに、滝つぼでの出来事と安長姫の事を話して聞かせました。
 村の人たちは、そのときから川を安長川と呼ぶようになりました。
 そして不思議な事に安長川は、どんな日照りの年でも水がかれる事のない川となり、村の人たちにそれは喜ばれたという事です。

おしまい

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