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福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 9月の世界昔話 > カエルのおきさき 
      9月19日の世界の昔話 
          
          
         
  カエルのおきさき 
  ロシアの昔話 → ロシアの国情報 
      
       むかしむかし、ある国に、王さまと三人の王子がいました。 
   ある日、王さまは王子をよんでいいました。 
  「王子たちよ。野原へいって、そこで矢をいるがいい。矢のおちたところにいた娘をおきさきにするのじゃ」 
   三人の王子は野原へ行くと、自分の好きなほうに矢をはなちました。 
   一番上の王子の矢は、貴族(きぞく)のやしきの庭におちて、貴族の娘にひろわれました。 
   二番目の王子の矢は、金持ちの商人のやしきの庭におちて、商人の娘にひろわれました。 
   すえっ子のイワン王子は、矢をおいかけてドンドン走っていくと沼(ぬま)に出ました。 
   見ると、カエルが矢をくわえています。 
  「カエルよ。ぼくの矢をかえしておくれ」 
   すると、カエルがこたえました。 
  「わたしをおきさきにしてくださいな。おねがいです。きっと、いいおきさきになりますから」 
   カエルがあまりにたのむので、しかたなく、イワン王子はカエルをつれてお城へかえりました。 
   ある日、王さまは三人の王子をよんでいいました。 
  「おまえたちのおきさきのうちで、だれが一番さいほうが上手だろう。あすの朝までに、わしの上着をぬってもってきなさい」 
   イワン王子は、こまってしまいました。 
   カエルのおきさきに、王さまの上着なんてぬえるはずがないと思ったからです。 
  「イワン王子さま、なにをそんなに考えこんでいるのですか?」 
   カエルのおきさきが、たずねました。 
   イワン王子が王さまの上着のことをはなしますと、カエルのおきさきは、やさしい声でいいました。 
  「ご心配なさらないで、王子さま。あすの朝までに、かならずぬっておきますから」 
   イワン王子が朝おきてみると、テーブルの上に金や銀のかざりのついた、みごとな上着ができあがっていました。 
   イワン王子は大よろこびで、上着をもってお城へでかけていきました。 
   二人のにいさんの王子たちも、それぞれみごとな上着をもってやってきました。 
   王さまはイワン王子のおきさきがぬった上着を手にとると、いいました。 
  「これはなんとすばらしい上着じゃ。わしはまえから、金や銀のかざりのついた、こんな赤い上着がほしかったのじゃ。さっそく、こんどのおまつりに着るとしよう。イワンのおきさきは、カエルだと思ってバカにしていたが、一番さいほうが上手じゃわい」 
   そしてこんどは、あすの朝までにパンをやいてくるように、王子たちにいいつけました。 
   あくる朝、イワン王子は、みごとにやきあがっているパンをもって、お城へでかけていきました。 
   王さまは、そのパンを食べると、まんぞくそうにいいました。 
  「ああ、わしははじめて、こんなにおいしいパンをたべた。イワンのおきさきのつくったパンが一番うまい。さて、王子たちよ、あすのパーティーには、おきさきをつれてくるがいい」 
   イワン王子は、こまってしまいました。 
   カエルのおきさきをつれていったら、みんなにわらわれるにきまっています。 
   ところがカエルのおきさきは、またやさしくいいました。 
  「ご心配いりません。王子さまは先に行っていてください。わたしはあとから、きっとまいりますから」 
   つぎの日、上の二人の王子は、うつくしく着かざったおきさきをつれて、とくいそうにやってきました。 
   そして、イワン王子が一人できたのを見ると、こういってからかいました。 
  「なぜおまえは、おきさきをつれてこなかったんだい。ハンカチにでもくるんで、つれてくればよかったのに」 
   そのとき、ひづめの音をひびかせて、六頭だての馬車(ばしゃ)がお城につきました。 
  「イワン王子の、おきさきさまのおつきーっ!」 
   馬車からおりてきたのは、目もさめるようなうつくしいおきさきです。 
   みんなは、ビックリ。 
   まさか、カエルがこんなにうつくしい女の人になれるとは、思わなかったからです。 
   イワン王子とおきさきは、たのしくダンスをおどりました。 
   パーティーからかえると、げんかんにカエルの皮がぬぎすててありました。 
   イワン王子は、いそいでそれを火のなかにくべてしまいました。 
   カエルの皮がなくなれば、おきさきはもう、カエルにもどれないと思ったのです。 
   でも、それを見たおきさきは、 
  「なにをなさるの!」 
  と、いって、なきだしてしまいました。 
   そして、なきながら、みのうえをはなしはじめました。 
  「わたしは、ある国の王女だったのですが、わるい魔法使いのために、カエルにされてしまいました。王さまの上着をぬうとき、パンをやくとき、そしてパーディーにいくとき、わたしがこまっていたら、召使いたちがきてたすけてくれたのです。でも、カエルの皮がなくなってしまったら、わたしはこわい魔法使いのところへいかなくてはなりません。あと三日で、魔法がとけるはずでしたのに」 
   おきさきは、なきながらどこかへいってしまいました。 
   イワン王子は、どんなにかなしんだでしょう。 
   でも、かなしんでばかりはいられません。 
   勇気をだして、魔法使いたいじにでかけました。 
   あてもなく、ドンドンあるいていくうちに、クツも洋服もボロボロにやぶれてしまいました。 
   それでも、元気よく旅をつづけました。 
   森をあるいていくと、おじいさんにあいました。 
   おじいさんは、イワン王子がおきさきをさがしているのを知ると、こういいました。 
  「このマリをさしあげよう。マリのころがっていくところに、きっとおきさきがおいでじゃ。三十の国をこえた遠いところじゃが、けっしてへこたれてはなりませんぞ」 
   イワン王子はマリをころがしながら、長い旅をつづけて、やっと魔法使いの家につきました。 
  「魔法使いめ、でてこい!」 
   こしの短剣をひきぬいて、イワン王子はさけびました。 
  「とうとうやってきたな。ようし、わしの魔法でこらしめてやる」 
   でてきた魔法使いの手には、カエルがつかまえられています。 
   でもイワン王子は、魔法使いが呪文(じゅもん)をとなえるより早く、短剣を心臓(しんぞう)めがけてつきさしました。 
  「ウギャーー!」 
   すると、あたりがきゅうにかがやいて、カエルはうつくしいおきさきにもどったのです。 
   イワン王子とおきさきはお城へかえって、たいへんしあわせにくらしました。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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