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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 西郷隆盛と馬
2010年 6月2日の新作昔話

西郷隆盛と馬
鹿児島県鹿児島市の民話 → 鹿児島県の情報
近代日本を作った偉人の一人に、誰でも名前を知っている西郷隆盛がいますが、このお話しは、その西郷隆盛の一面を知ることが出来る、西郷隆盛の笑い話です。
ある日の事、吉野(よしの)へ出かけた西郷隆盛(さいごうたかもり)は、帰りに百姓の家でサツマイモをごちそうになりました。
そのサツマイモが大変おいしかったらしく、西郷さんは、ざるのひと山を全部たいらげた上に、お土産としてサツマイモを一俵も、もらったのです。
ですが、いくら力持ちの西郷さんでも、一俵のサツマイモ(約50s)もある俵をかついで帰るのは大変です。
そこで百姓に馬を貸してもらうと、上機嫌でポックリポックリと、吉野を下って行きました。
ところが坂の途中まできたとき、道のくぼみに足をとられた馬がよろけたひょうしに背中のイモ俵が落としてしまい、せっかくのサツマイモが坂道を転がって行ってしまいました。
「しもうた。イモが逃げおるわい」
ところが西郷さんは、転がって行くサツマイモを拾おうとはしません。
それどころか馬に向かって、
「イモが逃げたのは、お前の不注意だ。待っていてやるから、お前が始末せい」
と、言って、のんびりとタバコをふかし始めたのです。
そんな事を言われても、馬がイモを拾えるはずがありません。
困った馬は、気持ちよさそうにタバコをふかす西郷さんを見つめるばかりです。
やがてそばを通りかかった百姓が、道いっぱいに散らばったサツマイモ見て西郷さんに尋ねました。
「あれー。こりゃあ、どうしたんですか?」
すると西郷さんは、大きくタバコをふかしながら、
「なあに、馬がイモをこぼしたで、『自分がした事は自分で始末せい』と、教えとるところで」
と、言うのです。
(この西郷さん。なんとも変わったお人だ)
あきれた百姓は、だまってサツマイモを拾い集めると、元の様に馬の背中に乗せてやりました。
それからしばらくして、ようやくタバコを吸い終えた西郷さんは、大きなあくびをひとつして馬の方に向き直ると、
「よし、自分で始末できたな。やれば出来るじゃないか」
と、言って手綱を取ると、何事もなかったかのように、ポックリポックリと帰って行ったそうです。
おしまい

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