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2月25日の日本の昔話
縛られ地蔵
分人綑等个地藏菩薩
・日本語 ・日本語&中国語 ・日本語&客家語
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、室町の越後屋八郎右衛門の店に出入りしている人間に、弥五郎という荷担ぎがいました。
頭擺頭擺,室町个越後屋八郎右衛門个店出入个人裡肚有一個安到彌五郎个搬運工人。
ある暑い日の事、弥五郎は松戸郷から室町の越後屋まで、白木綿を運んでいました。
有一日盡熱,彌五郎在松户鄉搬運白木棉去室町个越後屋。
その途中、本所中の郷(→今の浅草)というところにさしかかると、あるお寺の大きな木の下に石のお地蔵さんあったので、弥五郎は、
行到半路在本所中之鄉(這下个淺草)个位,所有一座廟寺,有一叢大樹,樹下有一尊石地藏菩薩,彌五郎講:
「ああ、ちょうどいい木陰があるぞ。お地蔵さま、ちょいと休ませてもらいますよ」
「啊!堵好有樹影好遮哦。地藏菩薩,借𠊎歇睏一下。」
と、一休みしたのですが、あまりにも疲れていたので、そのまますっかり眠り込んでしまったのです。
本來想愛歇睏一下仔就好,毋過忒悿了,續睡到毋知醒。
さて、弥五郎がふと目を覚ますと、もうすっかり日が傾いていて、通りには人気がありませんでした。
等彌五郎一覺醒,日頭會落山了,路上乜無人行了。
「いけねえ! 寝過ごした!」
「壞蹄了!睡過䢍了!」
弥五郎はすぐに出発しようと、そばに置いたはずの荷物を探したのですが、どうした事か荷物がないのです。
彌五郎想黏時出發,尋該應該放在脣頭个東西,仰會毋見忒。
「しまった! 荷物を盗まれた!」
「還無結煞哪!東西分人偷走了!」
あわてた弥五郎は、近くのお寺に飛び込んで、
無結無煞个彌五郎,舂落寺廟肚。
「すみません! おれの荷物、白木綿の反物を持ち去った者を見ませんでしたか!?」
と、たずねましたが、
問:「失禮!有看到麼人摎𠊎个東面、白木棉紗布匹拿走無?!」
お坊さんは気の毒そうな顔をしながら、
和尚感覺盡遺憾,
「さあ、そういう者は見なかったねえ」と、言うのです
應講:「啊,無看著呢!」
弥五郎は仕方なく手ぶらのまま室町の越後屋へ帰ると、今までの訳を話しましたが、
彌五郎無法度高不將空手轉去室町个越後屋,報告經過情形。
「何だって? 昼寝をしていて、荷物を持っていかれただって!?
「麼个啊!睡下當畫東西斯分人拿走!
はん!そんなマヌケな話を、誰が信じるもんか。
han!該種戇話麼人會信?
おおかた、勝手に売り払って博打(ばくち)にでも使ったんだろう。
怕係你拿去儘採賣忒,錢拿去賭繳賭忒了。
まあ、どっちにしろ、無くなった荷物の代金はべんしょうしてもらうよ」
不管仰般東西毋見忒,看幾多錢賠錢斯好!」
と、言われて、弥五郎はすっかり困ってしまいました。
分人恁仰講,彌五郎嗄無結無煞。
べんしょうしようにも反物は五百反もあったので、そんなにたくさんの白木綿を弥五郎一人でべんしょう出来るはずがありません。
賠償該布至少五匹,恁多个白木棉,彌五郎一儕賠毋起。
荷担ぎの元締めにも相談してみましたが、元締めの生活も楽ではないので、代わりに弁償する事は出来ませんでした。
佢斯走去尋搬運工个經理參詳看愛仰般,經理个生活乜無幾好,無辦法𢯭手賠該賠償金。
「思えば、自分が油断して寝込んでしまったのがいけなかったな。この上は、死んでおわびをするしかないか」
「想真來係自家無小心睡忒,不應該。高不將去死好了。」
そこで弥五郎は、親しい友人に最後の別れを言いに行ったのです。
彌五郎斯去親朋好友該拜別。
するとその友人は、弥五郎にこう言いました。
該兜朋友摎彌五郎講:
「このマヌケ!お前が死んでも、残された元締めや家族や親類に迷惑がかかるだけだろう!
「你這個𤘅奓牯!準講你死忒,還係分留下來个經理,家族,親戚帶來麻煩係無!
それよりも死ぬ覚悟があるのなら、南町奉行所の大岡さまに訴えてみろ。
你既然有死个決心,仰毋先去尋南町奉行所个大岡大人講看仔!
いそがしいお方だから、ただの町人が行っても簡単には会ってくれないだろうが、一歩も動かず何日も死ぬ気で訴えりゃ、その内に大岡さまが直々にお取り調べとなって万事うまく治めてくださるさ」
盡無閒个關係普通个市民無恁簡單見得佢著,假使你投佢講你歸日無停動斯想愛死,無定著大岡大人會直接來調查,該麼个事辦著好勢好勢了。」
弥五郎はそれを聞くと大喜びで奉行所へ行き、大きな門の前で声を張り上げて言いました。
彌五郎聽佢恁仰講心肝當歡喜斯去奉行所,行到大門前大聲喊:
「わたしは室町の越後屋さんに出入りしている、荷担ぎの弥五郎と申す者でございます!
「𠊎係在室町越後屋出入个搬運工彌五郎!
本所中の郷の石地蔵の前で居眠りをしていたところ、大事な荷物を何者かに持ち去られてしまいました!
本所中之鄉(這下个淺草)个石地藏菩薩面前啄目睡時節,重要个擔頭毋知分麼儕拿走去!
越後屋さんは反物を弁償しろとおっしゃいましたが、五百反もの白木綿を弁償出来るあてもありません!
越後屋大人喊𠊎愛賠佢,五百匹个白木棉布𠊎賠毋起!
この上は入水しておわびをと決心しましたが、わたしが死ねば責任は荷担ぎの元締めにふりかかってしまいます!
𠊎識想愛跳水死,毋過死忒後該責任變搬運經理挑著!
おいそがしいとは思いますが、どうか大岡さまじきじきのお取り調べをお願い申しあげます!
お聞き届けいただけない時は、身を投げて死ぬ覚悟でございます!」
𠊎想你也盡無閒,拜託你大岡大人直接調查好無!你若係毋肯答應𠊎,𠊎決定愛去跳水死!」
友だちの言った通り、ただの町人の弥五郎が行っても、なかなか越前には取り次いでもらえませんでした。
摎厥朋友講个共樣,普通个市民彌五郎去拜託根本無人插佢。
しかし弥五郎が三日の間、物も食べずに座り込んで頑張っていると、役人がやっと弥五郎の事を越前の耳に入れたのです。
毋過彌五郎死死坐在該三日三夜無食,官員摎彌五郎个事情講分越前聽。
すると越前は、やっていた仕事を中断して、
越前停下所有个事講:
人の命を救う事より、重い仕事はあるまい」
「無麼个事比救人較要緊!」
と、さっそく弥五郎を呼んで、事の次第を詳しく聞いてくれたのです。
遽遽接見彌五郎,聽佢講事情个詳細經過。
越前は弥五郎の話を聞き終わると、少し考えてこう言いました。
越前聽彌五郎講煞後,想一下斯講:
「ふむ、なるほど、あいわかった。
「m11,有理,了解。
地蔵菩薩といえば、国土を守る仏である。
地藏菩薩係國土守護神,
その方は地蔵に預ければ安心と思い、荷を下ろして休んだのであろう。
該個人拿東西搭地藏菩薩係認為當安全,所以正會放下擔頭來歇睏係無?
その方の油断にも責任があるが、地蔵ともあろう者が目の前で盗みを働く者を見て見ぬふりをするとはけしからん。
該個人無細義當然有責任,地藏菩薩乜有敢,在佢面前偷東西詐無看著,忒耗漦啦!
さっそく縄をうち、引っ捕らえて取り調べをせねばならん。
遽遽打條索仔來,定著愛捉著賊仔來審間正做得,
あるいはこの地蔵こそ、盗人とつるんで悪事を働いているのかもしれぬぞ」
無地藏菩薩乜捉起來,無定佢有做麼个壞事。」
それを聞いた弥五郎は、
(地蔵さまが悪いとは。・・・このお奉行さま、大丈夫かな?)
と、思いましたが、ここまでくれば、全てを越前に任せるしかありません。
彌五郎聽到心肝肚想、(地藏菩薩做壞事...奉行大人有麼个問題無?)到這地步了只有聽越前大人个了。
やがて越前の命令により、お地蔵さんは縄でぐるぐる巻きにされ、大八車に乗せられて両国の方へとガラガラと引かれていきました。
無幾久,照越前个命令用索仔摎地藏菩薩綑起來,吊上車頂朗朗滾往兩國方向載等走。
この、越前がお地蔵さんをお取り調べになるという話はたちまち評判になり、江戸中から町民たちがぞろぞろと集まってきました。
越前審問地藏菩薩个事情,風聲黏時傳出去,江户中來个市民大家聚集過來。
やがてお地蔵さんは奉行所に到着し、ついてきた野次馬たちも大八車のあとについて奉行所に入っていきました。
地藏菩薩來到奉行所个時節,一大群鬥鬧熱个人跈等落去奉行所,
さて、お白州に引き出されたお地蔵さんに、越前は恐い顔をして言いました。
越前驚著會死个面色對該分人捉來法庭个地藏菩薩講:
「その方、人々から南無地蔵大菩薩と尊敬をうけ、人々を慈悲にて救わねばならぬ身でありながら、目の前で盗みを働く者を見過ごすとは不埒千万である。
「你係人人尊敬个南無地藏菩薩,用慈悲心救世人,面頭前有賊仔偷東西又詐無看著,還積惡喔!
盗みを知っていて止めぬは、盗人と同じであるぞ。
看等賊仔在該偷東西毋阻擋佢摎賊仔共樣哦。
さあ、今すぐ盗賊の事を白状いたせ。
這下遽遽講出偷東西个人,
さもなくば、入牢申しつけるぞ!」
無就摎你捉去坐管仔!」
「・・・・・・」
「......」
越前はお地蔵さんの返事を待ちましたが、むろん、石のお地蔵さんは返事をしません。
越前在該等地藏菩薩回答,毋使講乜知石頭刻个地藏菩薩當然毋會回答。
さて、事の次第を見物していた野次馬たちは、このおかしなやり取りにあきれてひそひそと話しはじめました。
看著事情經過个該兜看鬧熱个人分這種做法嚇著呆忒,開始偷偷講話。
「大岡さまは、いったい何のつもりだ?」
「大岡大人到底想愛做麼个?」
「まさか本当に、お地蔵さまを罰するつもりだろうか?」
「敢係正經想愛罰地藏菩薩?」
するとそのひそひそ話を聞いて、越前が言いました。
越前聽看鬧熱个人講話斯講:
「この者たちは何じゃ!お白州に勝手気ままに入り込み、吟味を見物するとは不届き千万。
前後の門を閉じよ!一人も逃すな!」
「這兜人做麼个!隨便落法庭肚,看人問案無王無法,前後个門關起來!一儕都做毋得走出去!」
さあ、野次馬たちはびっくりです。
看鬧熱个人嗄嚇著。
みんなは名前や住所を調べられると、いったんは家に帰してくれましたが、あとできついお仕置きがあるぞと、全員がきびしく言い渡されたのです。
向大家盡嚴肅个宣佈,經過調查姓名摎住所後暫時放佢轉去,另擺還有較嚴條个處理。
それから半月ほどたって、奉行所からお達しがありました。
半个月以後奉行所通知來了。
《奉行所に勝手に入り込むことは、不届きである。重罪を申し付けてもよいが、もとは白木綿の吟味から始まった事ゆえ、白木綿一反の罰金で許す事にする。三日のうちに、持参いたせ》
《隨便落奉行所係犯法个,做得判重罪毋過因為當初白木棉審判決定,罰白木棉一匹就好了,參日內交出來。》
野次馬たちは牢屋に入れられるのではないかと思っていたので、そんな事で済むのならばと、みんなほっと胸をなでおろしながら奉行所へ白木綿を持って行きました。
看鬧熱个人想毋會坐館仔,無事情了,大家敨下大氣,拿等白木棉去奉行所。
こうして三日のうちに、白木綿の反物が山と積みあげられたのです。
所以三日內白木棉布匹堆到像山恁高。
そこで越前は、弥五郎を呼んできて尋ねました。
越前去喊彌五郎來問:
「弥五郎よ。この中から、盗まれた反物を見分ける事が出来るか?」
「彌五郎啊,這裡肚你認得出那匹係你分人偷去个無?」
「はい。盗まれた反物は、しかと覚えています」
「做得,分人偷去个布匹𠊎記著清清楚楚。」
そこで弥五郎が反物を調べていくと、中に二反だけ、盗まれた反物が混じっていたのです。
彌五郎斯去調查該兜布匹,裡肚有二匹定定摎分人偷去个摻到。
すると越前は、その反物を持ってきた町人に、
越前問拿該布匹來个市民:
「これを、どこで買い求めたのだ?」
「這布匹你在哪位買个?」
と、尋ねて、さらに売り主を問い正したところ、本所表町に住む者が盗賊と判明したのです。
再過詳細問賣主係麼儕,原來係戴在本所前町个人偷个。
こうして盗まれた反物は、そっくりそのまま戻ってきました。
分人偷个布匹盡遽就尋轉來了。
越前は弥五郎に反物を渡して、こう言いました。
越前將布匹交還彌五郎个時節摎佢講:
「これはその方に返すゆえ、今後は油断して地蔵に苦労をかけてはならんぞ」
「東西尋轉來了,以後愛較小心兜仔毋好再過麻煩地藏菩薩」。
また野次馬たちから集めた反物も、持ってきた者たちに返しました。
又將看鬧熱个市民收集个布匹還拿來个市民。
「その方らの協力により、無事に盗賊を見つける事が出来た。
「因為你兜个協助正做得順利尋著賊仔。
これらの反物は、その方らに返そう。
這兜布匹還你大家。
また地蔵も赦免申しつけるゆえ、中の郷に持ち帰り安置するように。
向大家宣告赦免地藏菩薩,愛載轉中之鄉去安置。
・・・うむ。これにて、一件落着!」
...m11。到這下辦好一件事情!」
さて、この話はたちまち知れ渡り、このお地蔵さんに頼めばどんな事でも願いが叶うと評判になりました。
這故事一下仔傳出去,大家係講有事來求這地藏菩薩一定心想事成。
そして越前のお裁きにちなんで荒縄で地蔵をしばり、
因為越前个審判,用粗索仔綑地藏菩薩,許願个時節愛講:
『願いが叶ったら、縄を解きます』
『若係願望達成𠊎斯摎你个索仔解忒。』
と、願を掛けるようになったということです。
聽講就會如願。
おしまい
煞了
→ 物語の舞台の「天台宗 南蔵院」
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