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6月16日の日本の昔話
のさんの賭け
『麻煩』个打賭
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、ある村に、とても意地悪で有名なお金持ちの親方がいました。
頭擺頭擺,某村莊有一個心腸非常壞出名个有錢師傅。
ある日の事、親方は家の前に大きな看板を出しました。
有一日,有錢師傅在屋面前插一隻大告示牌。
《三日の間、『のさん→難儀』と言わなければ、一日につき一両ずつ出す。ただし言えば、鼻を切る》
《連續三日,係毋講『麻煩』,一日分你一兩。但係,你若係講,愛割若鼻空》
すると一両につられて、一人の男が親方を訪ねました。
一個男仔人分一兩餳著走去尋有錢師傅。
親方に言われた通り昼飯も食べずに山で竹掘りをして、やっと掘った竹をかついで帰ると親方が、
照有錢師傅个交代,晝又無食就去山頂挖竹仔,㧡等挖起來个竹仔轉去,有錢師傅講:
「もう一本、掘ってこい。昼飯と夕飯は、その後で一緒に食わせてやる」
と、言ったのです。
「加一支,再過去挖。晝、夜做下食。」
これを聞いた男が思わず、
聽著恁樣講个男仔人無想著講出:
「のさん」
「『麻煩』」
と、言ってしまったので、男は親方に鼻を切られてしまいました。
這個男仔人个鼻空分有錢師傅割忒。
しばらくすると、また一人の男が親方を訪ねてきました。
無幾久以後,另外一個男仔人走去尋有錢師傅。
その男は、一日目は何とか無事に過ごしたのですが、二日目は夕飯も食べさせてもらえなかったので、思わず、
男仔人第一日平安無事,毋過,第二日無分佢食夜,無想著講出:
「のさん」
「『麻煩』」
と、言ってしまい、鼻を切られたのです。
鼻空斯分有錢師傅割忒。
またしばらくして、今度は利口そうな男が親方を訪ねてきました。
又過無幾久,這擺聽講係一個當有口才个男仔人,來到有錢師傅該位。
「看板を見てやって来た。『のさん』と言わねば一両をくれるとあるが、そうではなく、わしは親方と勝負がしたい」
「𠊎看著告示正來个。係無講『麻煩』,一日分一兩。但係,毋好恁樣,𠊎想摎有錢師傅賭輸贏。」
「ほう、勝負とは?」
「hou,賭輸贏麼个?」
「わしが『のさん』と言えば、鼻ではなく首を切られてもよい。だが親方が『のさん』と言えば、親方の鼻を切らせてもらう」
「若係𠊎講『麻煩』,毋係割鼻空,你做得剁吾頭那。但係,若係有錢師傅講『麻煩』,你个鼻空愛分𠊎割忒。」
それを聞いた親方は、笑いながら、「いいだろう。わしは大金持ちだ。何不自由なく暮らしておる。このわしが『のさん』と言うはずがない」と、言いました。
聽著恁樣講个有錢師傅緊笑緊講:「好哪。𠊎大有錢人。歸日閒亍亍安然自在,定著毋會講『麻煩』」
さて、親方はさっそく男に仕事を言いつけましたが、男は自分で弁当を持って行ったので、腹を空かさずに仕事を続けました。
有錢師傅黏時交代男仔人去做事,毋過男仔人自家帶等飯包去,做事个時節斯毋會枵。
二日目に、親方が言いました。
第二日,有錢師傅講:
「瓦(かわら)ふきが来るから、その瓦ふきのする通りにしろ」
「蓋瓦師傅來後,就照佢做方式來做。」
やがて瓦ふきが来て、古い小屋の屋根瓦をはがすのを見て、男は母屋(おもや)の屋根瓦をはがし始めました。
無幾久蓋瓦師傅來以後,男仔人看到蓋瓦師傅摎舊細屋屋頂个瓦拆下來,斯跈等開始拆正身屋頂个瓦。
そこに親方がやって来て、屋根がメチャクチャになっているのを見ると、
有錢師傅過來,看著屋頂舞到浪浪散,就講:
「ああっ、こっちのは、はがさんでもええんじゃ。のさんのことだ」
と、言ってしまったのです。
「啊,這片个,無拆乜無相干,『麻煩』个事情。」
これを聞いた男は、いきなり親方の頭を押さえつけると、
聽到講這種話男仔人忽然間撳等有錢師傅个頭那講:
「約束通り、親方の鼻を切らせてもらうぞ!」
と、言いました。
「照約定,有錢師傅个鼻空愛分𠊎割忒!」
親方は、まっ青になりながら、
有錢師傅面壢青,目汁雙流,會失禮。
「まっ、待て、わしが悪かった。財産の半分をくれてやるから、許してくれ」
と、泣いて謝りました。
「等,等下,係𠊎毋好。財產一半分你,請原諒。」
こうして親方から財産の半分をもらった男は、先に鼻を切られた二人にも財産を分けてやると、どこかへ旅立っていきました。
斯恁樣,在有錢師傅該位得著一半財富个男仔人,摎財富分兜以前鼻空分有錢師傅割忒該兩儕人,自家斯去遶山花。
おしまい
煞咧
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