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4月10日の百物語

逆立ち幽霊

逆立ち幽霊
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♪音声配信(html5)
朗読者 ; 創作活動のサイト 『Web団 零点』

 むかしむかし、那覇(なは)の町に、みえ橋という橋があって、その橋のたもとに一軒のアメ屋がありました。
 ある夏の夕暮れ、その日は朝から、しとしとと雨が降り続いていました。
「ああ、こんな日に、アメを買いに来る人はいないだろう。少し早いが、店じまいをしよう」
 アメ屋のおじいさんは、久しぶりに早く店を閉めました。
 そして一人で、のんびりとお茶を飲んでいると、
 トントン、トントン
と、雨戸が鳴りました。
「おや、風がひどくなってきたかな?」
 おじいさんは、そう思いましたが、
 トントン、トントン。
 今度ははっきりと、戸を叩く音がしました。
「どなたじゃな? もう店じまいをしたから、また明日にしてくださらんか」
 トントン、トントン。
 何度も何度も戸を叩くので、おじいさんは仕方なく戸口を開けました。
 すると外には白い着物を着た女の人が、雨にぐっしょりと濡れて立っていました。
「すみません。アメを少し、分けてくださいな」
 女の人は、細い声で言いました。
「これはこれは。せっかく買いに来てくれたのに、すぐに出なくてごめんよ。ささ、どれでも持って行ってください」
 おじいさんは、アメを紙に包んで差し出しました。
「よかった。これで、家の子も喜びます。ありがとうございました」
 女の人はニッコリ笑うと、お金をおじいさんに渡しました。
「では、気をつけてお帰りよ」
「はい」
 女の人は深くおじぎをすると、雨の中へ消えて行きました。

 それからも時々、女の人はアメを買いに来るようになりました。
 でも、四回、五回と続くうちに、おじいさんはある事に気がつきました。
 それは、女の人がアメを買いに来るのは決まって夕暮れ時で、それも人目を避けてやって来るのです。
「もしかして・・・」
 おじいさんは大急ぎで、お金を入れた箱を持って来ました。
 そしてお金を調べていたおじいさんは、
「わーっ!」
と、腰を抜かしてしまいました。
 なんとお金の中から、半分やけた紙銭(かみぜに)が出てきたのです。

 紙銭というのは、死んだ人が死の旅の途中で使う様にと、紙で作ったお金の事です。

 おじいさんが紙銭を持って、ブルブルと震えていると、
 トントン、トントン
と、雨戸を叩く音がしました。
「来たな」
 おじいさんは、そーっと戸を開けました。
 するとやはり、外には白い着物の女の人が立っていました。
「おじいさん、アメをくださいな」
 女の人は、細い声で言いました。
「はい、ではこれを」
 おじいさんが震えながらアメを差し出すと、女の人はアメの包みを大切そうに胸にかかえて帰って行きました。
「・・・怖いが、後をつけてみるか」
 おじいさんは女の人の後を、つけて行く事にしました。

 女の人は山道を進んで行き、山の中にあるお墓にたどり着きました。
「やはり、あの女は幽霊だな」
 おじいさんが息を殺して見ていると、女の人はチラリとおじいさんの方を振り向いて、そのままお墓の中に消えていきました。
 おじいさんが、そのお墓の前まで行ってみると、
「オギャー! オギャー!」
と、お墓の中から、赤ん坊の泣き声が聞こえてきたのです。
「うわーっ!」
 びっくりしたおじいさんは、すぐに町へ帰ると、見て来た事をみんなに知らせました。
 そしてお墓の持ち主とお坊さんを連れて、お墓の前に集まりました。
 さっそくお墓の石を取り除き、中をのぞいて見てびっくり。
 何と赤ん坊が、アメをしゃぶりながら死んだお母さんのそばにいるのです。
 お母さんの顔は、確かにアメを買いに来た女の人でした。
 お墓の持ち主の話では、この女の人は赤ん坊を生む前に病気で死んだとの事です。
 きっと、葬式が終わってお墓の中へ入れられた後で、この赤ん坊を生んだのでしょう。
 お坊さんは念仏を唱えると、女の人の足をひもでゆわえました。
「もう、アメを買いに行かなくてもいいんだよ。
 赤ん坊は、我々が育てるからね。
 お前さんの両足を縛っておくから、もう出て来てはいけないよ」
 そしてみんなも、女の人の成仏を手を合わせて祈りました。

 さて、それからしばらくたった、ある夕暮れ時。
 アメ屋のおじいさんが、店を閉めて休んでいると。
 トントン、トントン。
 トントン、トントン。
と、戸を叩く音がしました。
「すみません、アメをくださいな」
「はいはい、ちょっとお待ちを」
 おじいさんが戸を開けて見ると、あの白い着物を来た女の人が逆立ちをして立っていました。
 お坊さんに両足をひもで縛られたので、逆立ちのままやって来たのです。
「ひぇーーっ!」
 おじいさんは腰を抜かして、言葉が出ません。
「すみません、アメをくださいな」
 逆立ちの女の人がもう一度言ったので、おじいさんは何とかアメを差し出すと、女の人はアメの包みを大切そうに胸に抱えて闇の中へ消えて行きました。

 アメ屋のおじいさんの知らせを受けて、お墓の持ち主とお坊さんは、それから何度も女の人の供養をしましたが、それから何年もの間、女の人はおじいさんの店にアメを買いに来たそうです。

おしまい

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