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福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 4月の江戸小話 > ためしぎり
4月10日の小話
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ためしぎり
ある武士が、新しい刀を買いました。
「何とか、切れ味をためしてみたいが」
そこで友人に相談しますと、友人が言いました。
「そんな事なら、橋の上のこじきを切ってみれば、よかろうに」
「うむ、それは名案(めいあん)。さっそく、今夜にもためしてみよう」
そこで二人は暗くなるのを待って、橋へと出かけました。
やがて橋にさしかかると、中ほどに、うまいぐあいにこじきが寝ています。
「うらみはないが、命をもらうぞ」
武士は刀を抜くと、月の光をたよりに振り下ろしました。
「えいっ!」
そして二人は、一目散に逃げました。
さて、だいぶ走ってから、二人は足を止めました。
「おい、もう逃げなくともよかろう」
「そうだな。ところで切れ味は、どうだった?」
「おお、なかなかの切れ味でな。そのまま橋げたまで切ってしまったわ」
「それはすごい! それなら一度戻って、見届けてこよう」
二人は橋のところに引き返すと、切られたこじきのそばに寄りました。
するとこじきは起き上がって、二人に文句を言いました。
「やいっ! また棒で叩きに来たのか!」
武士の新しい刀は、とんでもない、なまくら(→切れ味の悪い刃物)のようでございます。
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
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