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福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 8月の江戸小話 > 昼間の幽霊 
      8月4日の小話 
        
      昼間の幽霊 
      
       
      
      
        女房に死なれてから、ずっと一人暮らしの男がいました。 
   ある日の事、男が昼飯を食べていると、おぜんの向こうに白い着物を着た青白い顔の女の人が、 
  ♪ヒューッ、ドロドロドロー 
  と、現れました。 
  「ひゃー! 出たー! 幽霊だー! お助けをー! ・・・あれっ?」 
   よく見てみると、それはずっと前に死んだ、男の女房ではありませんか。 
  「かかあ・・・。おめえか? おめえだな! かかあよ、なんで今頃になって化けてきたんだ?」 
   男が言いますと、女房の幽霊は目に涙を浮かべて言いました。 
  「お前さん。・・・長い事、長い事、お前さんに会わないので、・・・会いたくて、会いたくて、つい、出てきました」 
  「そうか、そいつはうれしいねえ。しかし、それにしたってお前もせっかちな女だな。幽霊なんだから、夜まで待てばいいじゃないか」 
   すると女房の幽霊は、怖そうに身震いして言いました。 
  「よっ、夜にだって。・・・おお、おそろしい。お前さん、あたしが恐がりなのを知っているだろ。もし夜に来て幽霊にでも出会ったら、どうするんだい」 
      ♪ちゃんちゃん 
(おしまい) 
        
         
         
        
 
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