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1月3日の日本民話 2


正月に餅をつかない町

正月に餅をつかない町
香川県に伝わる弘法大師話香川県の詳細

 香川県の三豊郡仁尾町(みとよぐんにおちょう)では、正月に餅をつかず、そのかわり団子を神棚にお供えするという習慣が残っているそうです。
 これは、それにまつわる弘法大師のお話しです。

 むかしむかし、ある寒い正月の事、一人の貧しい身なりのお坊さんが、この仁尾(にお)の村にやってきました。
 お坊さんは、村人たちの幸せを願いながら、一軒ずつ順番にお経を読み歩いていました。
 ところが、どの家もお正月気分にうかれて、お坊さんには見向きもしません。
 それでも、お坊さんは一軒一軒心を込めてお経を読み、家々を回ったのです。
 そして最後に、お坊さんは庄屋の大きな家へやってきました。
 そして、そこでも熱心にお経をあげたあと、その家の中へ声をかけました。
「あの、まことにすみません。どうか、一つだけ餅を分けてくださらんか」
 その声を聞いた庄屋は、お坊さんの前にやってくると、そのみすぼらしい身なりをジロリと見て、大声でどなりつけました。
「なんじゃい! お前みたいに小汚いこじき坊主に、やる餅などないわい! 早う、出て行け!」
 するとお坊さんは、深々と礼をして、静かに去って行きました。
 さて、正月もあけたある日の事、あの時のお坊さんのうわさが村人たちに広まりました。
「正月に回ってこられたお坊さんは、何でもあの有名な、お大師さまらしいぞ」
「なんと、そうとは知らず、わしらは何と薄情な事をしたんだ。あれだけ熱心にお経を読んでおられたのに、たった一つの餅もやらずに追い返したとは」
「お大師さまも、きっとお怒りになったに違いない。だが、文句の一つも言わずに立ち去るとは、なんと心の広いお方だ」
「全くだ。今後は、これを戒めとしよう」
 その様なわけで、この村では戒めのために正月に餅をつかず、団子のお供えをするようになったといわれています。

おしまい

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