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6月28日の日本民話 2

天狗がつくった山と池

天狗がつくった山と池
鹿児島県 北薩地方の民話鹿児島県の情報

 むかしむかし、入来(いりき)の東の愛宕(あたご)の山には、とても乱暴な天狗(てんぐ)が住んでいました。
 毎晩、山を相手に乱暴な事ばかりしているので、山のてっぺんはくだけた岩が散らばっています。
 また、入来の南の八重(えや)の山にも、天狗が住んでいました。
 こちらの天狗は、とてもやさしい天狗で、毎晩山をなでては、山をきれいな形にしていたのです。
 当然の事ながら、この二人の天狗は、あまり仲良しではありません。
 さて、ある晩の事、愛宕の山の天狗が、八重の山の天狗に言いました。
「おーい、八重の山の天狗よ。どうだ、ひとつ力比べでもせんか」
 すると、八重の天狗も答えて、
「わかった。だが、どうするのだ?」
「そっちの八重の山は、のっぺりした山ばかりでどうにもならん。こっちの愛宕の山で勝負じゃ。ごつごつしていて、力比べにはもってこいじゃ」
 そこで八重の山の天狗は、愛宕の山へやって来ました。
 八重の山の天狗は、愛宕の山を見てびっくりです。
「なんともひどい。これじゃあ、山がかわいそうじゃ」
 八重の山の天狗は、愛宕の山の隣の藺牟田(いむた)の山のてっぺんをけずって、そばに小山を作りました。
 ご飯をおわんに盛ったような、とても形の良い山だったので、あとになって飯盛山(いいもりやま)と名づけられました。
 そして藺牟田の山もきれいにけずりとられたので、形のきれいな山になりました。
「どうだ。きれいな山は、気持ちいいだろう。それに、おれの力は大した物だろう」
 先を越された愛宕の山の天狗は、ムッとなって、
「なんのそれくらいの事」
と、言うが早いか、藺牟田の山を、
「えいっ!」
と、持ち上げると、そのままどんどん歩き出して、入来(いりき)を抜けて樋脇(ひわき)の弁天原(べんてんはら)まで行ったのです。
 ちょうど、夜が明けかかったので、
「ここらでいいか。どっこいしょ!」
と、そこに山をおろしました。
 これが、今の丸山弁天(まるやまべんてん)なのです。
 そして藺牟田の山のあった場所は、大きな穴になったので、やがてそこに水がたまって池になりました。
 これが、今の藺牟田の池です。
 ほかにも丸山弁天のすぐそばに小さな丘がありますが、あれは天狗が山をおろした時に、手についたドロを落として出来たもので、『天狗のもっこ丘』と、呼ばれています。
 さらに弁天原のあちこちには、へっこんだ所がありますが、それは天狗の足跡だと言われています。

おしまい

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