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10月1日の世界の昔話

旅の道づれ

旅の道連れ
アンデルセン童話 → アンデルセンについて

 むかしむかし、あるところに、ヨハネスという心優しい若者がいました。
 可愛そうな事にヨハネスのお父さんとお母さんはヨハネスを残して死んでしまった為、ヨハネスは一人ぼっちです。
 そこでヨハネスは、世界を旅する事にしました。
 野を越え山を越えるうちに、ヨハネスは小さな教会の前に出ました。
 ふと教会の庭を見ると、草のしげった中に一つだけお墓があります。
「誰のお墓か知らないけれど、きみも一人ぼっちなんだね。汚いままでは可愛そうだから、お掃除をしてあげるね」
 ヨハネスは一生懸命に、お墓の掃除をしてあげました。
 それからお墓にヒナギクの花を飾ると、ヨハネスはまた旅を続けて大きな森に入りました。

 ヨハネスが月明かりの下を歩いていると、後ろから呼び止める男の声がします。
「おーい! そこの旅の人! どこへ行くんだね?」
「やあ、こんばんは。ぼくは広い世界へ、大きな町へ行くのさ」
「ちょうどよかった。わたしも大きな町へ行くところなんだ。どうだい? 一緒に旅をしないか?」
「ええ、もちろん。道連れが出来てうれしいよ」
 こうしてヨハネスは、男と一緒に旅をする事になりました。

 次の朝、二人が大きな木の下で朝ご飯を食べていると、おばあさんが片足を引きずりながらやってきました。
「ああ、痛い、痛いよ。足が痛いんだ、助けておくれ」
「どれ、薬をつけてあげよう」
 旅の道連れは、おばあさんの足に薬を塗ってやりました。
「おや、楽になったよ。ありがとう。お礼に何かをあげたいが、何か欲しい物はあるかい?」
 すると旅の道連れは、おばあさんの持っていたかごに入っている、やなぎの枝を指さして言いました。
「それでは、その枝を三本もらうよ」
 そう言って枝を三本受け取る旅の道連れに、ヨハネスが不思議そうに尋ねました。
「そんな物をもらって、どうするの?」
「なあに、あとできっと、役に立つからさ」
 旅を続けていく間に、旅の道連れはおかしな物を二つひろいました。
 一つは長い刀で、もう一つは白鳥の羽です。
「そんな物を拾って、どうするの?」
 ヨハネスが聞くたびに、旅の道連れは、
「なあに、あとできっと、役に立つからさ」
と、答えました。

 さて、ヨハネスと旅の道連れはいくつもの村を過ぎて、とうとう大きな町へやってきました。
「わあ、高い塔が、お日さまにキラキラ光っているよ。あそこは、誰のお家だろう?」
「あれは、王さまのお城だよ」
「ねえ、早くお城へ行ってみようよ」
 ヨハネスが駆け出そうとすると、旅の道連れは首を振って言いました。
「今はだめだ。今夜は、町はずれの宿屋に泊まろう」
 そしてその宿屋でヨハネスたちは、宿屋の主人からこんな恐ろしい話を聞きました。
「お城のお姫さまは、この国で一番美しい人ですが、実は悪い魔女なんですよ。
 遠くの国から結婚を申し込みにきた若者に難しいなぞなぞを出しては、それに答えられないと首を切ってしまうんだ。
 今までに大勢の若者が挑戦したが、まだ一人もなぞなぞに答えた者はいないんだよ」
「あの、結婚を申し込めるのは、王子さまだけですか?」
 ヨハネスが尋ねると、宿屋の主人に答えました。
「いや、独身の若者なら、誰でもかまわないそうだ」
 ちょうどその時、窓の外をお姫さまの行列が通りかかりました。
 お姫さまはダイヤモンドとルビーでかざった白い馬に乗り、美しいかんむりをかぶってチョウチョの羽で作った七色の服を着ていました、
「はあ、なんて、きれいな人なんだろう」
 ヨハネスは一目で、お姫さまを好きになってしまいました。
「よし、ぼくも結婚を申し込むぞ!」
 そう言うヨハネスを、旅の道連れがあわてて引き止めました。
「だめだよ。さっきの話を思い出すんだ。あのお姫さまは、悪い魔女なんだよ。お城へ行ってはいけないよ」
 でも、ヨハネスは、
「いいや、ぼくはなぞなぞに全部答えて、お姫さまと結婚するんだ」
と、お城へ出かけてしまいました。

 さて、お城に着くと、年寄りの王さまがヨハネスに尋ねました。
「三つのなぞなぞを答えられたら姫と結婚できるが、もし間違えたらお前の命はないのだよ。それでもいいのかね?」
 ヨハネスは、胸を張って言いました。
「はい。大丈夫です。きっと答えてみせますから」
「よろしい。それでは明日の朝、もう一度、城へ来なさい」
 ヨハネスは宿屋へ帰ると、すぐにベッドに入って寝ました。
 ヨハネスが寝てしまうと、旅の道連れは荷物の中から白鳥の羽とやなぎの枝を取り出して、そっと宿屋を抜け出しました。
 旅の道連れはお城の高い塔の下まで来ると白鳥の羽を背中につけて、お城の大時計が夜中の十二時を打つのを待ちました。
♪ディン、ドン
♪ディン、ドン。
 大時計が、十二時を打ちました。
 すると塔の窓がぱっと開いて、白い服を着て大きな黒い翼をつけたお姫さまが飛び出しました。
 お姫さまは町を越えて、向こうにそびえる魔物の山を目指して飛んでいきます。
 旅の道連れも背中に付けた白鳥の羽をパタパタさせながら、お姫さまの後を追って飛び立ちました。
 そして持ってきたやなぎの枝で、お姫さまの体を打ちました。
「悪い魔法よ、お姫さまの体から出ていけ!」
 けれどもお姫さまは平気で飛び続けて、魔物の山へ着くと洞穴の中へと入っていきました。
 洞穴の中は毒ヘビや毒グモや毒キノコ、コウモリやネズミや緑色のハエたちでいっぱいでした。
、他にも不気味な小人の鬼たちがいて、まん中のイスにはみにくい魔物がお姫さまが来るのを待っていました。
 お姫さまは魔物に一礼すると、魔物に尋ねました。
「偉大なる魔物の王さま。また新しい若者が、わたしに結婚を申し込みに来ました。今度はどんななぞなぞを出したらよいでしょうか?」
「よしよし、ではこう言うのだ。『わたしが今、何を考えているか当ててごらん?』とな」
「はい。わかりました。それで、わたしは何を考えていたらいいのでしょうか?」
「なに、簡単な事。お前のはいている、銀のクツの事を考えるのだ」
 それを聞いた旅の道連れは急いで宿屋に帰ると、寝ているヨハネスの耳にささやきました。
「お姫さまは、銀のクツの事を考えているよ」

 次の朝、ヨハネスはお城の大広間へ出かけました。
 大広間には、大勢の人が集まっています。
 お姫さまが、ヨハネスに尋ねました。
「ヨハネス、わたしが今、何を考えているか当ててごらん?」
「はい、お姫さまは、銀のクツの事を考えていらっしゃいます」
 ヨハネスが言い当てたので、お姫さまは青くなって言いました。
「せっ、正解です。それでは明日の朝、またお城へ来るように」

 その夜、ヨハネスが寝てしまうと旅の道連れは昨日と同じように白鳥の羽をつけて、やなぎの枝を持ってお城へ向かいました。
♪ディン、ドン
♪ディン、ドン。
 十二時になるとお城の窓が開いて、魔女のお姫さまが飛び出していきました。
「悪い魔法よ、お姫さまの体から出ていけ!」
 旅の道連れは今日もやなぎの枝でお姫さまの体を打ちましたが、魔女のお姫さまは平気で飛び続けて、魔物の山へ着くと魔物に尋ねました。
「偉大なる魔物の王よ。二番目のなぞなぞを教えてください」
「よしよし、今度は、金の手袋の事を考えておいで」
 旅の道連れは急いで宿屋へ戻ると、寝ているヨハネスの耳にささやきました。
「お姫さまは、金の手袋の事を考えているよ」

 次の朝、ヨハネスはお城へ出かけていって、その通りに答えました。
「お姫さまは、金の手袋の事を考えていらっしゃいます」
 それを聞いたお姫さまは、昨日よりももっと青い顔をして、
「せっ、正解です。それでは明日の朝、またここへ来るように」
と、言いました。

 さて、三日目の夜になりました。
 ヨハネスが寝てしまうと、旅の道連れはやなぎの枝以外にも長い刀を持って出かけました。
♪ディン、ドン
♪ディン、ドン。
 お城の大時計が十二時を打ちはじめると、また魔女のお姫さまが飛び出しました。
「悪い魔法よ、お姫さまから出ていけ!」
 旅の道連れはやなぎの枝でお姫さまを打ちましたが、お姫さまはそのまま飛び続けていきました。
 そして魔物の山へ着くと、
「ヨハネスという若者が、二度ともなぞなぞを言い当ててしまいました。最後のなぞなぞは、どうしたらいいのでしょうか?」
と、魔物の王に言いました。
 すると魔物の王は、恐ろしい顔でイスから立ち上がると、
「まさか、二度まで当てるとは。だが今度こそは、ヨハネスの命をもらってやるぞ」
と、今度はお姫さまと一緒に、お城まで飛びました。
 そして飛びながらお姫さまになぞなぞの答えを教えたのですが、二人のすぐ後ろにいた旅の道連れは、その正しい答えを聞いていました。
 旅の道連れは長い刀で魔物の王をやっつけると、急いで宿屋へ帰りました。

 次の朝、旅の道連れは目を覚ましたヨハネスに、大きなハンカチの包みを渡して言いました。
「お姫さまがなぞなぞを出したら、これを開けて見せなさい」

 さて、お城の大広間は、大勢の見物人でいっぱいです。
 何しろ二つのなぞなぞを言い当てたのは、ヨハネスが初めてだったからです。
「ヨハネス、わたしの考えている事を、当ててごらん」
 お姫さまが言うと、ヨハネスは旅の道連れにもらったハンカチの包みを開きました。
「お姫さまは今、この事を考えていらっしゃいます」
 そしてハンカチの中身を見たお姫さまは、
「あっ!」
と、叫んで気を失ってしまいました。
 ハンカチの中には、あの魔物の首が入っていたのです。
「ヨハネスが、悪い魔物をやっつけたぞ!」
 集まった人々は、大喜びです。
 ヨハネスはお姫さまを抱き上げて、きれいな泉の水にひたしました。
 するとお姫さまの体から黒い鳥が現れて、魔物の山の方へ飛んでいきました。
 お姫さまにかけられていた悪い魔法が、今とけたのです。
 お姫さまは前よりも、もっともっときれいになって目を開きました。
 そしてヨハネスとお姫さまは、立派な結婚式をあげたのです。

 さて次の朝、旅の道連れがヨハネスのところへ来て言いました。
「わたしは長い旅に出るので、これでさようならです」
「そんな事を言わないで、ぼくたちと一緒に暮らしてください。ぼくが幸せになれたのは、みんなあなたのおかげなんです」
「いいえ、わたしは、あなたに恩返しをしただけです。草の伸びたお墓をきれいにして、花をかざってくれた事を覚えていますか? あれはわたしの、お墓なのです」
 旅の道連れはそう言うと、煙のように消えてしまいました。
 その後、ヨハネスとお姫さまは、いつまでも幸せに暮らしました。

おしまい

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